研究課題/領域番号 |
63043032
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西條 八束 名古屋大学, 名誉教授 (70022506)
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研究分担者 |
福原 晴夫 西潟大学, 教育学部, 助教授 (50108007)
三田村 緒佐武 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (50030458)
中本 信忠 信州大学, 繊維学部, 助教授 (40109202)
須永 哲雄 香川大学, 教育学部, 教授 (00035883)
生嶋 功 千葉大学, 理学部, 教授 (20009046)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 熱帯湖 / 実養塩 / 湖底堆積物 / 水生植物 / プランクトン / フサカの羽化 / 魚類相 / 変水層 |
研究概要 |
本研究はブラジルのミナスジェライ州のリオ・ドッセ湖沼群を研究対象に選び、その熱帯湖としての生物生産が、どのような生態学的ならびに生物地球化学的な機構によって維持されているかを明らかにする事を目的としている。 今回の調査は1963年(乾季)、1965年(雨季)の調査に次ぐもので、1967年7ー8月(乾季)に実施された。自然がよく保護されている森林公園内のドン・ヘルベシオ湖(最大深度32m)とカリオカ湖(10m)、ユーカリの人工林中のジャカレー湖(8m)とアマレーラ湖(2m)の4湖を重点的に調査した。これまでに明らかになった興味ある成果は次のごとくである。 1.ドン・ヘルベシオ、カリオカおよびジャカレーの3湖において、現場法により窒素化合物のとり込み速度を測定した。その結果、雨季、乾季ともにアンモニアと尿素態窒素が優先的に利用されており、いずれも生産層での滞留時間は短く、植物プランクトンによる消費と動物プランクトンによる排泄、有機窒素化合物の微生物分解による供給とが、動的平衡の状態にあると考えられた。一方硝酸態窒素の利用は少なく、また硝化活性が低いため、硝酸の滞留時間は長いと思われる。 2.リオ・ドッセ湖沼群の堆積物の有機炭素含量が高い(10ー30%)ことに着目し、その有機物の起源と蓄積の機構を、ドン・ヘルベシオ湖とアマレーラ湖を対象に、脂肪酸組成を基に考察した。その結果、両湖共に約9%の有機炭素が陸起源で、残りは自生性起源であるが、その多くはバクテリアに由来するものであり、高有機炭素の蓄積をもたらす基本的な要因は、両湖底で生じる嫌気的環境であることが示唆された。 3.リオ・ドッセ湖沼群でひろく見られる大形の半抽水性植物Eichhornia azurea Kunth(ホテイアオイと同じ属)の葉群動態を調べるため、できる限りふるい横走茎を含めた植物を採集し、ふるい部分の生死をテトラゾリウム・テストで調べたところ、茎は約二年間生きていることを知った。茎の最先端の節間から順次、節間の長さ、乾重および節間の茎に含まれている貯蔵澱粉量を測定した。茎はいつも一定の成長を続けているのではなく、雨季または乾季から雨季にはいる移行期に成長が良いことが明らかになった。 4.ドン・ヘルベシオ湖の成層期の変水層(9.5ー16.5m)は栄養塩濃度も高く、植物プランクトンの生産も高い。動物プランクトン相についてもこの時期には明確な層別分布が見られ、浅い層には小型の種が、変水層にはDiaptomusやTropocyclopsなどの大形の種が分布している。こうした植物、動物プランクトンの層別分布は食物利用の効率を高めるのに役立っていると思われる。 5.ドン・ヘンベシオ湖は1年を通じて水位変化はほとんど認められず、深水層の水温も約2度しか変化しない。底生動物としてはフサカ幼虫のみが棲息している。フサカ幼虫の羽化がシンクロナイズしているかどうかに注目して検討を試みた。エマージェンストラップ(70×70cm)による1987年7月10日(午前0時の月齢13.9)から7月31日(月齢5.3)までの毎日の採集で4種類のフサカが認められ、その中でも1種が羽化個体数の96%を占めた。この種は7月26日に突然大量に羽化し、この時の羽化数は前日の約30倍に達した。大量羽化は4日間継続し、随時採集した幼虫の令組成の変化から安定した環境下においても成長がシンクロナイズしていることが推定された。ところで、大量の羽化の認められた7月26日の月齢は新月であったことにより、成長にIunar cycleが関係していることが強く示唆された。 6.1963、1965、1967年の3回にわたる調査を通じての、リオ・ドッセ湖沼群の魚類相の変遷を見るとき、移入魚が在来の魚類相に与える影響がきわめて大きかったことがわかる。ドン・ヘルベシオ湖とアマレーラ湖では1985年にトクナレCicla ocellarisとピラニアPygocentrus sp.の出現により小型魚類の激減が起こったが、同様の事態が1987年にカリオカ湖で起こった。また、このような魚類相の変遷は温帯湖に較べて熱帯湖では速いことがうかがわれた。
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