研究分担者 |
中原 紘之 京都大学, 農学部, 助手 (80026567)
小河 久朗 東北大学, 農学部, 助手 (20005656)
山本 弘敏 北海道大学, 水産学部, 助教授 (00001610)
大野 正夫 高知大学, 海洋生物教育研究センター, 教授 (10036543)
奥田 武男 九州大学, 農学部, 教授 (80038174)
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研究概要 |
フィリピン諸島南部に位置するミンダナオ島のザンボアンガ,パラワン島,マクタン島及びボホール島北部の調査を昭和62年10月7日〜11月14日と昭和62年12月28日〜昭和63年2月14日の2回に渉って調査した。海藻類(紅藻・緑藻・褐藻)、海産種子植物及び植物プランクトンの種類と分布、カラギナン原藻キリンサイ属2種及び寒天原藻オゴノリ属2種の生長率、サンゴ礁上のホンダワラ類群落の現存量と藻体長、紅藻及び褐藻の成熟期の推定、さらにパラワン島住民の海藻の利用実体について調査した。 紅藻類(綱)は8目22科48属87種が記録され、うち4種(Eucheuma arnoldii,Digenea simplex,Neurymenia fraxinifolia,Zellera tawallina)はパラワン島からの新発見で、オゴノリ属8種は日本の暖海(琉球諸島)にも生育する種であった。緑藻類は5目9科22属55種が採集され、そのうち4種(Anadyomene wrightii,Bryopsis plumosa,Caulerpa curpressoides var.lycopodium,Halimeda velasquez)はパラワン島及びミンダナ島からの新記録種であった。褐藻類は5目6科12属30種が同定され、そのうち6種(Colpomeia sinuosa.Dictyota indica,D.mertensii,Lobophora crassa Modelo & Umezaki(未発表)、Sargassum granuliferum,S.oligocystum)ガパラワン島及びミンダナオ島からの新記録種で、ホンダワラ属2種(S.feldmannii,S.mollei)はフィリピン諸島から新発見された。海産種子植物は7属10種で、うち2種(Halodule pinifolia,Halophora spinulosa)はパラワン島からの新記録種であった。海産植物プランクトンは39属96種が採集され、3種(Nitzshia longissima,Rhizosolenia stolterfothii,Peridinium quinquecorne)は優占種であった。また、1l当たりの細胞(コロニー)数は114〜44,000個で、場所による違いが大きかった。調査期間中の水温は26.0〜27.0℃、塩分は28.7〜33.8%であった。採集された紅藻と褐藻の成熟期を推定すると、(1)10〜1月成熟期と(2)その他の時期の成熟期に区別された。カラギナン原藻キリンサイ属2種(Eucheuma denticulatum,E.alvarezii)のそれぞれの2品種(褐色株、緑色株)のボホール北沖での7〜9月の日生長率は、前種の褐色株は3.54%、緑色株は3.31%、後種の褐色株は4.66%、緑色株は3.59%であった。両種とも11月〜2ー3月の生長率は急減した。寒天原藻オゴノリ属2種(Gracilaria verrucosa,G.salicornia)の8〜9月の生長率は、前種では16.4%、後種では10.1%であった。2〜3月では、前種は1.5%、後種は0.6%となり、キリンサイ属と同様に急減した。潮間帯の藻体は、池のものより生長率が良好であった。藻体の湿重量/乾重量比は、前種は6.02〜11.6%、後種は7.36〜11.9%であった。サンゴ礁上のホンダワラ属群落の現存量は5.0〜15.6kg(湿重量)/m^2であった。その群落の優占種(Sarqassum polycystum)の藻体長は場所によって大きい差異があるが、41〜107(平均50〜80)cmで、これらホンダワラの種の多くは1〜2月が成熟期であった。 パラワン島では、緑藻イワズタ属3種(Caulerpa lentillifera,C.uvifera,C.racemosa)が主として、稀に紅藻オゴノリ(Gracilaria verrucosa)が野菜サラダとして食用に供されている。 フィリピン諸島の海藻の第1回調査は昭和60年に、中部のビザヤス地区(パナイ、セブ、レイテ各島)を、第2回調査は、昭和62年の南部のボルネオ地区(ボルネオ島ザンボアンガ、マクタン島、パラワン島、ボホール島北沖)を実施して成果を納めた。そして、第3回調査は、平成元年に北部のルソン地区(ルソン島)を計画し、準備が進渉している。
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