研究課題/領域番号 |
63043042
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堤 利夫 京都大学, 農学部, 教授 (80026393)
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研究分担者 |
玉井 重信 京都大学, 農学部, 助手 (60026606)
千葉 喬三 岡山大学, 農学部, 教授 (10036741)
片桐 成夫 島根大学, 農学部, 助教授 (00032649)
李 昌華 中国科学院, 自然資源総合考察委員会, 副研究員
岩坪 五郎 京都大学, 農学部, 助教授 (00026395)
LI Changhua Associate Professor, The Chinese Academy of Sciences
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1988年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 馬尾松林 / リター除去 / 現存量 / 炭素 / 無機物 / 土壌の回復 / 物質循環 / シイ林 |
研究概要 |
本研究は1987年9月から1988年2月にかけて、中国江西省南方山地及荒廃地で行われた。その成果についての検討と総括を本年度において行った。 1988年9月9日から10日の2日間にかけて、日本側研究者全員が京都大学に集り、各自の分担項目についての研究成果を報告し、それに基づく相互の検討の結果を報告の案としてまとめた。その上で1988年10月に日本側研究者のうち岩坪五郎(京都大学・農学部)が中国に出張し、中国側研究者と同報告案についての打合せをした。その結果を持帰った後、1988年12月から1989年2月にわたって、片桐成夫(島根大学・農学部)千葉喬三(岡山大学・農学部)、太田岳史(岩手大学・農学部)の三名に別々に京都への出張を依頼し、京都で最終的打合せを行った。これらの結果をとりまとめ報告書の作製を行った。その内容を要約すると以下の通りである。 江西省中部の興国県において花崗岩を母材とする荒廃山地の若い馬尾松林を選び、リター及び下層植生の採集、または施肥が土壌の回復、森林の生長に与える影響を測定するための調査区を設定した。馬尾松林の現存量はこの地方の最も貧弱な林分と同程度であるが、日本の荒廃地のアカマツ林より生長はよい。馬尾松林の葉量は他のマツ類の森林に比べてかなり低く、葉量と林分生長との間に幾分不釣合がみられる。不層植生も極めて貧弱で、少数のハギ類とコシダが局所的に地表をおおう程度である。Ao層はほとんどみられず、土壌層断面の発達は甚だ貧弱で、土壌中の炭素、窒素、ミネラルの集積は極めて乏しい。この林分は荒廃地を復旧し、表土の侵食を抑制するために造林されたものであるが、今日でもリター、下草の採取及びマツの下枝の採取が定期的に行われていて、再循環が不完全で土壌り回復がおこっておらず、表土の侵食はなおさかんであると判断できる。再循環の保全、施肥が土壌や森林の回復のために必要で、この試験区で測定を継続すれば、それらの変化速度が求められるであろう。 江西省南部九連山は亜熱帯常緑広葉樹林が発達し、自然保護区として保護されている。その中の一部に約20haの小流域を設定し、水及び物質の循環を測定するための試験流域を設けた。この試験流域において水の流出、降水量、蒸発散量など水の循環に関する測定と、植生調査及び森林の乾物及び物質現存量調査(樹木と土壌)、再循環速度の測定など物質の循環に関する諸測定を行い、この地域の森林の機能を明らかにする予定である。今回はまず植生調査、現存量調査に重点をおいた。 この試験流域内の植生は大別するとマツ林、Schima林、シイ林となる。マツ林は斜面上部や尾根などにみられ、シイ類は斜面下部にある。Schima林はその中間に位置する。常緑広葉樹林に一部針葉樹を混えるほか、落葉広葉樹がみられ、緯度は24°で亜熱帯であるが植生は暖温帯の照葉樹林に相当すると考える。その理由は多分冬季の低温にある。 シイ林に設けた2つの固定標準地について乾物現存量を求めると、地上部重が396と308t/haで、胸高断面積合計は49と42m^2/haであった。樹高は高いもので30mに近く、常緑広葉樹林としては相当大きい森林であるといえる。階層構造は多層で、シイを中心とする常緑広葉樹のサイズ分布は連続的である。 樹本の養分分析の結果によれば、窒素の分有率がかなり高く、熱帯林のそれに近い。また土壌中の養分物質は高くはないが、炭素は53〜90t/ha、窒素は3〜9t/haの集積があり、日本南部の照葉樹林に相当する。 この地域の降水量は約1800mm、年平均気温は16.5℃、蒸発量は865mmである。冬季(11月から4月)日平均温度の変化が激しく、20℃をこえるという特長があり、最低の極は0℃以下である。森林土壌の透水性き高いとはいえないが、流出水の流出過程に森林の影響を認めることが出来る。 今後、興国及び九連山における固定調査地での測定を継続すれば、当地域の森林の機能が解明できるであろう。
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