研究課題/領域番号 |
63043046
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
北原 淳 神戸大学, 文学部, 教授 (30107916)
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研究分担者 |
松薗 祐子 いわき明星大学, 人文学部, 講師 (00164799)
橋本 卓 北九州大学, 法学部, 講師
竹内 隆夫 金城学院大学, 文学部, 助教授 (40105747)
清水 由文 桃山学院大学, 社会学部, 助教授 (40132352)
赤木 攻 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (10030157)
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研究期間 (年度) |
1986 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 都市ー農村関係 / タイ国の地方都市 / タイ国東部臨海地区 / 移住労働者 / 季節的出稼労働者 / インフォーマル・セクター帰郷意志の強さ / 恒常的都市定住者 |
研究概要 |
1.本研究はタイ国における都市と農村の関係を農村から都市への出稼労働者、移住労働者に焦点をあて、その労働と生活についての検討を試みたものである。調査地はタイ東部のチョンブリー、ラヨーン両県の地方都市を主体とし、比較の意味で首都圏ミンブリーをも対象とした。調査の種類は、(1)ラヨーン県クレーン郡における東北出稼農民のライフ・ヒストリー、(2)チョンブリー市における企業調査、(3)同市内新興居住地区のコミュニティー調査、(4)首都圏バンチャン工業団地企業調査、(5)ミンブリー郡における近郊農村調査であった。 2.タイ東部の伝統的生活空間は、北辺平野部米作地帯、沿岸部漁村、丘陸地畑作樹園地帯と三大区分された。海岸部は華人が多く、またラオ系諸族の強制移住もあったので多民族構成である。従来貿易ルートにあたったので商業は盛んであったが戦後ベトナム戦争の過程で基地保養地として都市が急成長した。また畑作、果樹も戦後丘陸地の開発により急成長をとげた。こうして東部は有数の出稼地となった。 3.ラヨーン県クレーン郡には我々のかつての調査村・東北ローイエット県ノーンクンからの出稼者が集中している。彼らの大半が林業労働に従事している。また特定のパトロン的雇用主がいて村人を雇う。村人は作業請負組織を結成して木材運搬を請負う。この組織は故郷の共同体的関係にもとづいて構成されており、参入・脱退が自由で伸縮自在である。出稼者は独身のときは季節的製造業にも従事するが、結婚後は夫婦での通年的出稼か単身での季節的出稼を典型とする出稼に終始し、都市での定住者は少ない。クレーンでの都市雑業の少なさと彼らの帰郷意志の強さとが彼らを労働者ではなく出稼者にとどめる。 4.チョンブリー市外縁の新興居住地区には戦後のチョンブリーの就業機会の拡大により移住労働者が定住している。彼らはクレーン郡の場合とちがい定住的である。多くは借家である。出生地は地元東部と東北が多い。移住者は仕事を求めて直接移住してきた者が多い。世帯主は独身で単身または家族の一員として移住した者が多い。故郷への仕送りはない。区内に同郷人、親族のいる者は少なく、区内への定着性は低い。3分の2が地元に住民登録をし、帰郷の意志は弱い。この居住区は他県出身者の"ふきだまり"となっている感がある。 5.チョンブリー市の就業構造は、4.のコミュニティー調査および別途の企業調査によって検討した。(1)移住者コミュニティーの就業者は農林漁業の雇用者にならない点で季節的出稼者とは異なる。他県からの移住者は廃品回収、サムロー、露天商などの雑業に従事し工場労働者が相対的に少ない。ただし収入の点では雑業者と工場労働者の間に大きな差はない。地元チョンブリー出身者には工場労働者、公務員等の賃金労働者がやや多い。またチョンブリー出身の10代は相対的に高学歴で、将来賃金労働者の可能性が高い。(2)キャサバ等季節的農産物加工、非熟練労働集約部門には他県からの出身者が相対的に多いのに対し、熟練的機械工場や大規模近代工場にはチョンブリー出身者および近郊農村からの通勤者が多い。通勤者の階層は中農以上が多い。現在は全部間で若年労働者が多いが、今後は、職場内で昇進が可能な職階制を備えている一部の熟練的機械工場、大規模近代工場において内部労働市場が形成される可能性も皆無ではない。
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