研究課題/領域番号 |
63043047
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
竹内 芳親 鳥取大学, 農学部附属砂丘利用研究施設, 助教授 (90032094)
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研究分担者 |
作野 友康 鳥取大学, 農学部, 教授 (10032567)
白石 真一 九州大学, 農学部, 助教授 (40154356)
伊藤 代次郎 愛媛大学, 農学部, 助教授 (80036318)
遠山 柾雄 鳥取大学, 農学部附属砂丘利用研究施設, 助教授 (00038267)
濱崎 敞 鳥取大学, 農学部, 教授 (40032081)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 沙漠 / メキシコ / 乾燥地農業 / 点適かんがい / 塩類集積 / アルベド / 保水剤 / サボテン |
研究概要 |
乾燥地、半乾燥地は陸地面積の約28%に達する広大なものである。この乾燥地、半乾燥地における作物栽培技術は特別な地域以外は極めて低水準にある。このような地域における耕地の生産性の上限と、生産性を阻害する要因に関する科学的解明を行なうことを研究の目的とした。 気象環境条件の把握はその地域の潜在的耕地生産力の推定および耕地生態系の把握に対して基本的に必要である。そのため気温、地温、相対湿度、風速、日射および放射収支、土中水分含量等の測定を行った。 作物栽培技術の確立と最大生産力の実証のため、野菜栽培を実施した。実験圃場は、かんがいによる塩類集積を回避できる土壌として砂地を使用した。かんがい法やかん水量の検討と並行し作物栽培を行なうと同時に、点滴ホースの種類と土壌水分分布について作物を生物センサーとした研究をも行なった。野菜栽培に対する節水栽培として高分子吸水性樹脂(保水剤)と点滴かんがい法との組合せなどの研究、また海岸沙漠特有の霧の発生メカニズムの解明と霧の利用法として、電気除湿機による空中水分の採水実験とこの水を利用した育苗実験を実施した。 中南米は立地によって乾湿差と気温の高低差が大きいため、各種作物の起源したところとされている。従って、自然および耕地植生も種類が多様であることが予測される。特に乾燥地における自然および耕地植生の種類や分布およびその生態特性を明らかにすることによって乾燥地農業の栽培技術の確立に重要な意味を持つと考え、調査を実施した。耕地雑草については土壌水分傾度、塩類濃度などと関連させた調査を行なった。 以上、これらの結果は学会等の研究発表要旨(別記)、また別冊「メキシコ・バハカリフォルニア沙漠の農業開発」に詳述されているが、その要約を記すると次の通りである。 気象観測の結果から、バハ・カリフォルニア半島は、北緯30°を中心とする亜熱帯高圧帯に属し、前線帯の北限と南限との中間に位置している。さらに、半島の西側の太平洋沖には寒流(カリフオルニア海流)が流れているため、その上空にある大気の温度を下げ、大気は多量の水蒸気を含むことができないまま大陸に向かって流れ込み、湿度が比較的高いにもかかわらず、雨がほとんど降らない海岸沙漠気象が実現している。従って、沙漠地でありながら相対湿度が高く、特に夜間の湿度が高い。そして日の出前の日最低気温となる頃には湿度は90%程度となる。一方、夜間の地表面や植物葉は放射冷却を受け、風速が弱い場合は気温より2〜3℃低い露点以下の温度となり地表面および植物葉面に露を生成する。その量はおおむね100cm^2あたり2〜3gの露量であった。このことは乾燥沙漠地の水資源として利用できるものと考えられる。また、この露が自然植生にも大きく影響するものと考えられる。 次に放射現象を見るためアルベドを調査した。乾燥沙漠地でのアルベドは40%で鳥取砂丘のアルベド26〜28%より大きい値を示し沙漠地の特性を示した。 野菜栽培における節水栽培として高分子吸水性樹脂(保水剤)を土壌中に混合し、数種の野菜栽培を行なった。その結果、グリーンデビュー、チンゲンサイなどにおいて全体的に増収効果が見られた。 除湿機を利用した除湿水によるレタス、チンゲンサイの栽培において初期生育は現地のかんがい水と比較して優れた結果を得た。 現在まで実施してきた野菜栽培実験の結果から判断して、ゲレロ・ネグロは野菜栽培において高い生産力を持っていることが実証できた。 農業は、自然の影響を大きく受ける風土産業である。従って、2〜3年の実験値からその地域における農業の適否を論ずることは危険である。我々はこの危険をできるだけ小さくするために、同一作物の栽培回数を多くする努力も行なった。いずれにしても外国での学術研究であるため、時間的な制約もあり不本意ながらも結論を急がねばならない事情があることも付記しておく。
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