研究課題/領域番号 |
63043050
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤原 健蔵 広島大学, 文学部, 教授 (90034545)
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研究分担者 |
牧野 一成 広島大学, 総合地誌研究資料センター, 助手 (00173724)
岩崎 公弥 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80135392)
中里 亜夫 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60044343)
米田 巖 広島大学, 総合科学部, 助教授 (90012533)
安藤 忠男 広島大学, 生物生産学部, 教授 (90034470)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | インド / ラージャスターン州 / 干ばつ常習地域 / 農村開発 / 井戸灌漑 / 天水農業 / 家畜飼養 / 土壌侵食 |
研究概要 |
研究課題「インド・干ばつ常習地域の農業と村落変化」について、昭和62年度に行った現地調査の諸資料と数回の研究集会(インド側共同研究者R.C.Sharma教授の来広を含む)等の検討を経て、次の成果を得た。 1.現地調査で収集した一次資料のデータベース化:標本調査村アバネリ村における悉皆調査(全世帯対象の家族構成・職業・土地所有・家畜飼育等の面接調査)の全記録をパーソナルコンピューターを利用してデータベース化した。こうした一次資料のデータベース化並びに標準化は当該研究者の個別テーマの考究のみならず、広く他の関係研究者への資料提供を可能にするものであり、あわせて後年に利用可能な形で保存することにもなる。 2.アバネリ村はバンガンガ・サンワンナディ両川の河間平地に位置し村全域にわたって微砂質〜砂質の赤黄色土が分布しており物理性は良好である。水利が整い、土壌肥沃度を向上させれば、収量の倍増は容易である。地下水は比較的豊富であり、40ケ所の近くの井戸が掘られ、灌漑兼飲用に利用されている。32地点で観測した結果、pHは7.36〜8.34、電気伝導度は0.8〜3.0ms(平均1.46ms)で、Na塩等を含むものの水質は良好であった。問題は地下水位の低下であり、1980年代初めからの電動揚水の普及により村域全般にわたり急速に低下して現在は18〜21mとなっている。早急な利水計画の策定と管理とがアバネリ村の農業生産力を規定すると考えられる。 3.村の農業はカリフ作にバージラ・ジョワールを主体とする雑穀・豆類が、ラビ作として小麦・豆類が栽培されている。井戸灌漑が普及されつつあるが、なお天水農業が畜力を利用して広範囲に行われている。1987年の干ばつには多くの灌漑井戸も枯れ、カリフ作は大きなダメージを受けた。農業の改善、向上はグジャー等の一部農民を中心に認められ、灌漑圃場の整備、改良過程の採用、トラクターの導入等によって、農業経営の拡大・強化が行われている。これに刺激されて、村の有力ジャーティーであるシャルマにも農業に直接携わる者も見られてきた。近代的農業技術の普及制度は形式的に整っているが、実質を伴っていない。普及員の常駐化や能力の向上に期待する農民が多い。 4.家畜飼養は、低く不安定な耕種生産を補うものとして重要である。ウシ(ゼブ牛と水牛の総称)飼養農家は、総世帯211戸のうち155戸(73%)に及ぶ。特に、1970年代後半からの搾乳用ウシの増加が目立ち大規模飼養(14〜25頭)の農家が5戸ある。入会放牧地は2ケ所あるが、牧養力は皆無に近いので、飼養は農地からの粗飼料に依存せざるを得ない。しかし一方、零細農・農業労働者にも家畜飼養が普及しており(政府の農村開発政策により)、村人の営農水準の向上に重要である。しかし、飼料源として野草の採取に依存せざるを得ず、野草資源の適切な管理・利用は、これら零細農・農業労働者の家畜飼養の安定化並びに土壌侵食の防止の面で緊急の課題である。 5.アバネリ村は10世紀に創設の寺院を中心にした村であり、主要ジャーティーはブラーミンであり、村外に職を得ている世帯が多い。また、村から6Kmに鉄道交差点の町バンディクイがありここに職を求める世帯も多い。また、1982年以降ジャイプールやデリーなどの離れた大都市で働く者が増えている。村外に流出する労働者の構成をみると、コリやバルワ等の低いカーストで土地所有規模も小さい世帯の比率が高いことが認められる。
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