研究課題/領域番号 |
63043054
|
研究種目 |
海外学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
広瀬 義躬 九州大学, 農学部, 助教授 (10038218)
広瀬 養躬 九州大, 農, 助教授
|
研究分担者 |
SAWAI Burana タイ国立生物的防除研究センター, 研究員
BANPOT Napom タイ国立生物的防除研究センター, センター長
岡島 秀治 東京農業大学, 農学部, 助手 (60194346)
高木 正見 九州大学, 農学部, 助手 (20175425)
梶田 泰司 九州大学, 農学部, 助手 (40038229)
SAWAI Buranapanichpan National Biological Control Research Center, Thailand
|
研究期間 (年度) |
1986 – 1988
|
研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
|
キーワード | 天敵 / 生物的防除 / 東南アジア / ミナミキイロアザミウマ / 侵入害虫 / 果菜類 / アザミウマ類 |
研究概要 |
1987年1月、6月、9〜10月、1987年12月〜1988年2月にタイ、1987年1月と11月にマレーシア、1987年1月にフィリピンの各国においてミナミキイロアザミウマの天敵を探索した。また同時に果菜類やランでのミナミキイロアザミウマの発生状況とアザミウマ相を調査した。さらに1988年1〜2月、タイでミナミキイロアザミウマの個体群動態とその天敵の野外での活動状況や生態的特性について調査研究した。その結果、以下のような点が明らかになった。 1.タイ、マレーシア、フィリピンの3国の果菜類に11属15種のアザミウマの生息を認めた。作物別では、ナスで14種、トウガラシで5種、ウリ類で7種、マメ類で6種のアザミウマが生息していた。 2.タイにおいてはバンコックとチェンマイおよびこれらの2都市の周辺のいずれの地域でもミナミキイロアザミウマが普通に生息していることを認めた。果菜類ではナス、トウガラシ、キュウリ、トウガ、トカドヘチマ、スイカ、メロン、セイヨウカボチャ、ジュウロクササゲなどでその発生を認め、1987年6月、9〜10月にはキュウリ、トウガ、スイカ、トカドヘチマ、セイヨウカボチャでは本種が多発していた。また、バンコック周辺のランの苗圃でも本種の発生を認めた。 3.マレーシアにおいてはクアラルンプール近郊、イポー近郊、ペナンとその周辺、カメロンハイランドのいずれの地域でもミナミキイロアザミウマが普通に生息していることを認めた。果菜類ではナス、トウガラシ、メロン、ジュウロクササゲ、インゲン類などでその発生を認めた。ナスでの発生は顕著であったが、トウガラシではチャノキイロアザミウマの方が多かった。 4.フィリピンにおいてはマニラの周辺でミナミキイロアザミウマが普通に生息していることを認めた。果菜類では、ナス、トウガラシ、ツルレイシ、クリカボチャ、メロン、スイカでその発生を認め、特にメロンやスイカでは大発生がみられた。 5.タイにおいて、ミナミキイロアザミウマの天敵として、計8種、すなわち、卵寄生蜂のMegaphragma sp.、幼虫寄生蜂のCeranisus sp.,幼虫捕食性カメムシのBilia sp.、Orius sp.、Campylomma sp.、幼虫捕食性アザミウマのFranklinothrips vespiformis(Crawford)、幼虫捕食性ダニのAmblyseius sp.とPhytoseius sp.を発見した。このうちCeranisus sp.、Bilia sp.、Orius sp.の3種が有力天敵と考えられた。 6.1988年2月にバンコックのナス圃場で毎週ミナミキイロアザミウマの個体数を調べた結果、調査期間中に個体数の顕著な減少を認めた。この減少はその減少の直前における約50%に達するCeranisus sp.の寄生によるものとみられ、本寄生蜂がミナミキイロアザミウマの天敵として重要な役割を果たしていることが示唆された。また、バンコックとチェンマイおよびこれらの2都市の周辺のナス畑における調査の結果、本種の寄生は自家用に農家の近くで小規模に栽培されている無散布の畑に限られることが判明し、このことから本種の天敵としての働きに農薬散布が悪影響を及ぼしていると考えられた。 以上のように、今回、ミナミキイロアザミウマの有力天敵としてCeranisus sp.、Bilia sp.、Orius sp.の3種がタイに生息することが明らかになったが、いずれも同属の種が日本にいるため、これらのタイ産の種が日本産の種と同一か否かを今後決定する必要がある。また、同一種と判明しても、生態的に差があればわが国への導入は考えられるので、生態的特性の研究はなおタイで行う必要がある。タイで今回、Ceranisus sp.のミナミキイロアザミウマの個体群動態に及ぼす影響は研究したが、不十分であり、一方Bilia sp.やOrius sp.の同様な影響については全く不明なので、今後なおタイでこれら3種の天敵の研究が必要である。さらに、今回発見できなかったミナミキイロアザミウマの病原微生物についても、タイとマレーシアで今後なお探索の必要がある。
|