研究課題/領域番号 |
63043056
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山口 隆男 熊本大学, 理学部・臨海実験所, 助教授 (10040106)
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研究分担者 |
上田 恭一郎 北九州市立, 自然史博物館, 学芸員
波部 忠重 東海大学, 海洋学部, 教授 (80138635)
馬場 敬次 熊本大学, 教育学部, 教授 (20038227)
重井 陸夫 東京大学, 理学部・臨海実験所, 講師 (60011566)
大森 実 法政大学, 第二教養部, 教授 (80061050)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | シーボルト / 自然史研究 / 博物学 / 日蘭文化交流 / シーボルト収集動物標本 / シーボルト収集植物標本 / シーボルト収集写生画 / 本草学者 |
研究概要 |
調査はオランダのライデン市の国立自然史博物館、国立〓葉館、国立地質学博物館、ライデン大学、国立民族学博物館等で行った。シーボルト収集の知られざる動物標本類の発見と調査に努力したが、それと共に彼がどのような意図で、どのような構想のもとに、どのように収集を展開していたのか、それも明らかにすることに努めた。また、シーボルトに対して、日本の自然史(博物学)の研究者がいろいろな協力をしている。その人々の活動をさぐることも目的とした。それゆえに、動物標本以外のもの、植物標本や化石、彩色写生画、書簡なども調査対象とした。探し出した標本については同定を進め、その他のものについてはそれぞれに研究を行った。成果は学会発表、雑誌論文の他に、報告書を印刷刊行して報告している。 1.昆虫の標本類:現地の博物館で所在が判っていたシーボルト昆虫標本は数十頭に過ぎず、果たして、どれだけあるのか不明であった。博物館の数百万点の標本の中からシーボルト標本を見つけ出す作業は困難を極めた。全昆虫群を対象にするのは調査体制上無理であったので、甲虫類、鱗翅類に重点をおいて調査を進め、1450頭、約350種を見出すことができた。うち300種程度については種の同定が終了した。模式標本も数十頭見つかった。シーボルトが昆虫にも大きな関心を寄せていたことが判明した。珍品よりも普通種の収集に重点がおかれ、昆虫相の概略を把握する意図で科学的な収集が行われていたことが判った。対馬特産の種もあり、弟子たちも動員して収集していた可能性がある。 2.甲殼類の標本類:シーボルトと助手のビュルゲルが特に入念に収集している動物群であることが文献でうかがえた。彼等の収集の特色を把握することを目的として調査した。2000点、200種が保存されていた。標本は実に入念に収集、製作されていた。乾燥標本と共に液浸標本があり、大きさの異なるものが揃えられているという特色があった。こうした配慮は、研究する上で極めて有意義であり、彼が研究をするための材料は如何にあるべきかせ念頭において収集していたことを示している。江戸参府旅行に際して入手されたことが確実な北方系のものがある一方で沖縄から入手したと推定されるものも見つかり、収集が広範囲に及んでいることも判った。 3.貝類、棘皮動物の標本類:第1次調査で概略が判明していたが、さらに調査を進めて、完全なリストの作成に努めた。従来、貝類標本の一部がイギリスへ流出して、新種の記載に用いられたとされていたが、実際に、大英博物館にシーボルト由来の15種の模式標本があることを明らかにできた。棘皮動物ではシーボルト標本の一部が誤って別の人の収集品に紛れているらしいと判明し、完全なリストの作成作業を進めた。 4.化石類:貝類を主とする300余点があることが判明した。しかし、文献に出ている、象の歯や牙、魚の化石等の重要なものについては所在を確認するには至らなかった。 5.植物標本類:シーボルトは自分は動物よりも植物に重点をおいて収集、研究をしたと述べている。しかし、彼の膨大な標本はほとんど研究されていない。彼の自然史研究の特色を総合的に把握するためには、彼が植物の収集と研究をどのように行っていたのかを知る必要があった。調査メンバーのうちの一人(大森)が担当して国立〓葉館で調査した。280万枚の〓葉標本の中から、シーボルト標本を捜し出すのは困難であったが510枚、75種を見出した。標本にはシーボルトの特色がはっきりと見られた。実に入念に収集、製作されていて、日本の植物相の全貌を知るという大きな構想で収集されていたことが明らかになった。発見標本の中にはシーボルトの江戸参府旅行中に収集されたらしいものもある。また、フローラ・ヤポニカを刊行するまでのシーボルトの研究の過程を知る手がかりも得られた。 6.関連資料類:主に彩色写生画について調査した。特に栗本瑞見の蠏蝦類写真について重点をおいた。これはシーボルトが江戸で入手したもので、栗本瑞見の数少ない肉筆の写生画として重要であり、また、ファウナ・ヤポニカの重要な引用文献だからである。その他に、大河内存真、川原慶賀の写生画などついても調査をした。
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