研究分担者 |
WARREN Manse パプアニューギニア大学, 理学部, 助教授
田口 幸洋 福岡大学, 理学部, 助教授 (00108771)
東 正治 高知大学, 理学部, 助教授 (90036583)
志賀 美英 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (50154191)
山本 温彦 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (00041236)
MANSER Warren Ass. Professor, Fac. Sciences, Univ. P.N.G.
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研究概要 |
パプアニューギニアはオーストラリアプレートと太平洋プレートの衝突する場所に位置し、大陸卓状地から大陸縁辺造山帯、島弧地域にかけ第三紀から第四紀にかけての火成岩が貫入し、周辺には斑岩銅鉱床をはじめ種々の鉱床が胚胎していて、いずれも成因的に密接な関係がある。昭和62年度の調査に基づき、本年度はPorgera(大陸卓状地)、Frieda(造山帯)、Wild Dog、Panguna(島弧地域)を中心に総括を行った。 1.Porgera地域の火成活動は8.4Maよりやゝ前から始まった。貫入順に閃緑岩類と斑岩類からなる複合岩体で他地域に比べ塩基性でアルカリ岩的である点が特徴である。特に閃緑岩類において顕著である。鉱化作用は4.7〜5.8Maで、火成活動の始まりよりかなり若い。変質鉱物に産出が稀な3Tポリタイプmicaが見出された。火成岩中の石英脈に黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、方鉛鉱が産出し、少量の黄銅鉱、磁硫鉄鉱の他、多くの銀鉱物(Electrum、含Ag四面銅鉱、polybasite,pyrargyrite)や輝水鉛鉱、bournonite,mackinawite、硫砒鉄鉱等が産する。堆積岩中では黄鉄鉱ー磁鉄鉱ー(赤鉄鉱)の組合せに変る。 2.Frieda地域の各種の鉱床は複合岩体をなす閃緑岩類の周辺部に累帯構造をなして胚胎し、一連の火成活動で形成されたと考えられる。変質鉱物はsericite,kaoline,chloriteの他に、andalusiteや明バン石で特徴付けられる。sericiteが結晶度が高くて2M_1ポリタイプを示す。鉱化作用は8.6〜10.5Maを示す。 3.Wild Dog金銀鉱床は中性〜酸性の火山活動で形成されたカルデラの内側に分布する石英脈である。鉱脈が21.9ー23.4Ma、母岩が35Maよりも古く、漸新世から中新世初期の活動である。変質鉱物はsericiteの他にpyrophylliteとdickite,nacriteが局部的に認められる。主要な鉱石鉱物は黄鉄鉱と黄銅鉱であるが、少量の斑銅鉱、閃亜鉛鉱、四面銅鉱の他、Te鉱物(native Te,alteite,rickardite,tellurobismuthite,stuetzite),clausthalite,stannoidite,輝水鉛鉱、melenite等が産出する。 4.Panguna鉱床については、KーAr年代と岩石磁気学的方法で火成活動史と鉱化作用の時期を確認した。その結果火成岩体は2つに区分でき、鉱化作用以前の貫入岩でアルカリ元素が高い。鉱化作用(3.1Ma)の中心には黒雲母花崗閃緑岩、優白質石英閃緑岩が貫入しており、カルクアルカリ岩に属する。黒雲母とKー長石で特徴付けられる変質帯のsericiteは結晶度が高く2M_1ポリタイプでアル。 5.パプアニューギニアの火山岩はアルカリ元素をはじめincompatible elementsの量に大きなバラツキと特徴を持つ。ラバウルの火山岩はNa_2O、K_2O、Sr、Baに富み、LiとRbに乏しく、アルカリ長石を含む未分化の岩石に起源を求めうる。ブーゲンビル島の火山岩は特徴的にpargasitic-hastingsitic赤褐色角閃石を含む。K_2Oに富みTiO_2に乏しい。またfo_2が高いと共に、分別作用の程度が低かったことを示す。 これらの実験結果に基ずいて関係火成岩の特徴を考察した。Porgeraをはじめ鉱化地域を他の環太平洋地域の鉱化地域の複合岩体と比較するとアルカリ元素等のincompatible elementsの絶対量に違いがあるが、早期の貫入岩にアルカリが多くf_<HCl>/f_<H20>が急減し、末期の岩石にアルカリが少なくf_<HCl>/f_<H20>が一定である点で共通している。鉱化作用以前の貫入岩体に比べて、鉱化作用とほぼ同時期に貫入したマグマにおいてF_<HCl>/F_<H20>比が大きかったために、発生した流体のf_<HCl>/f_<H20>比が岩石の固結の過程で一定の値を保持したと考えられる(Holland,1972)。このような流体は金属を塩素の錯体として運搬する能力に長け、天水との混合によってその能力を失って鉱石鉱物を沈殿させる。このプロセスは鉱脈中の燐灰石のハロゲン元素含有量の測定結果からも裏付られ、またEastoe and Eadingto(1986)やFord and Green(1977)による実験とも調和する。また、Wau地域の斑岩は周辺地域に貫入する花崗閃緑岩類に比べ塩素含有量が高い特徴を持つ。 今後は火成岩のincompatible elementsと鉱床構成元素の起源について、現地の調査と研究室における実験を続けたい。
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