研究課題/領域番号 |
63043058
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
西平 守孝 琉球大学, 理学部, 教授 (80004357)
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研究分担者 |
SURAPHOL SUD チュラロンコン大学, 理学部, 助教授
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯海洋科学センター, 助手 (50153838)
香村 真徳 琉球大学, 熱帯海洋科学センター, 教授 (90044982)
土屋 誠 琉球大学, 理学部, 助教授 (40108460)
山里 清 琉球大学, 理学部, 教授 (80044973)
SUDARA Suraphol Faculty of Science, Assistant Professor Chulalongkorn University
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | タイ国シャム湾 / 非礁性サンゴ群集 / 環境の異質性 / ガンガゼによるグレイジング / サンゴ棲動物 / サンゴの無性生殖 |
研究概要 |
タイ国シャム湾湾奥部にあるシイチャン島周辺は、湾内への大きな河川の流入がある為に海水塩分の年間変動が大きい(15ー33%。)。また懸濁物も多いので透明度も低い。このような内湾的環境に成立するサンゴ群集は、サンゴ礁を形成することのない非礁性のサンゴ群集である。わが国の温帯地方でも造礁サンゴが生育し、しばしばよく発達したサンゴ群集が成立している場所が少なくない。しかし、このような場所で見られる群集ではいずれも非礁性サンゴ群集であり、サンゴ礁が発達することはない。これは通常温帯海域では水温が低くサンゴの生育が悪い為と推測されているが、未だ十分に説明されているとはいえない。サンゴの生育にとって水温条件は申し分ないと思われる熱帯海域においても、本研究を行なったシイチャン島のような内湾的環境のもとでは、サンゴ礁が発達しないのが普通である。このことは、サンゴ礁が発達しない直接の要因として水温のみを引き合いに出すことが再検討されるべきであることを示唆している。サンゴ礁の形成は、サンゴをはじめとした生物による造礁作用と、生物及び非生物的要因による破壊作用との差引によって動的に決っていると言える。このようなことを念頭において、非礁性のサンゴ群集の成立と維持(何故礁を形成することができないのか)を解明することを目的として本研究が行なわれた。第1次調査によって得られた成果に基づいて、非礁性サンゴ群集と本調査地に発達した特色ある生物群集の構造解明の為に、いくつかのテーマについて集中的な調査が行なわれた。 1.塊状ハマサンゴは、サンゴ同士の種間競争においては常に劣位にあり、多くの種に攻撃された場合勝ち目はないが、調査地では優占種でその被覆度は最も高い。それは何故なのか?詳細な現場調査によって、サンゴの大きさや空間配置の正確な地図を作成し、群集構造と優占種の個体群構造の詳細な解析と種間競争関係を検討し、合せてガンガゼのグレイジングや既に得られている穿孔物動の豊富さなどから、次の様な推測がなされた。このハマサンゴが優占する非礁性サンゴ群集の形成と維持には、ガンガゼのグレイジングによる骨格の削り取りや穿孔動物の侵食作用によるサンゴの死亡や分断・破壊、更にハマサンゴが群体の倒壊によって新たな生息場所へ受動的に加入する能力を持っていることなどが重要であると考えられた。また、ガンガゼはサンゴの骨格や他の硬い底質上の藻類群集にも極めて重大な影響を及ぼしていることが野外における実験で確かめられた。ガンガゼや多様な穿孔動物の役割の評価が将来の重要な課題であり、このような環境でこれらサンゴの破壊生物が多い理由を解明し、具体的に造礁作用と破壊作用のかかわりを解明する必要がある。 2.サンゴ群集に続く砂底には様々な底生動物が生息しているが、中でもウニ類が低生生物群集に及ぼす影響は興味深い。埋在性の2種のブンブクが、深度に沿って住み分けている。浅所ではミナミオオブンブクの摂食作用によって、粗い礫が残った谷間と細かい粒子の山が作られる。このような環境の異質性が動物の活動によってもたらされ、その為に砂底に微小生息場所が形成され維持されることを実験的に確かめた上で、それぞれに特色ある動物群集を成立させていることを立証した。ウニ類は砂底においても極めて重要で、群集の構造化過程における影響種として重要な役割を担っている。 3.数メートル以深の砂底には、2種の単体サンゴと2種のワレクサビライシが極めて高密度で生息していることがこの場所の際立った特徴であった。それらの分布と個体群構造の記載を行ない、また走査電子顕微鏡による形態観察や生体染色実験によって、オオワレクサビライシの自割による無性的増殖のメカニズムを調べた。 4.これらの他にもサンゴ棲の小型動物の群集構造の記載と、それに及ぼすサンゴ群体の大きさの影響をハナヤサイサンゴを用いて調べた。また、群集の特徴を全体に把握する為に不可欠な動物相の記載作業の手始めとして、貝類のリストを作成した。
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