研究課題/領域番号 |
63043061
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
川道 武男 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (00047333)
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研究分担者 |
王 宗仁 中国科学院, 動物研究所, 研究員
汪 松 中国科学院, 動物研究所, 研究員
前田 喜四雄 朝日大学, 歯学部, 助手 (90076042)
金子 之史 香川大学, 教育学部, 教授 (30036058)
小林 恒明 京都大学, 教養部, 教授 (50001433)
WANG Sung Zoological Institute, Academia Sinica, China
ZONGREN Wang Zoological Institute, Academia Sinica, China
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 哺乳類の分類 / 中国産小哺乳類 / げっ歯類 / 翼手類 / 核型分析 / ナキウサギの生態 / 行動と社会 |
研究概要 |
1.核型分析班:小林はネズミ類、特にApodemus属の系統分類を形態学・核型分析からアプローチしたが、中国中央部(甘粛省・狭西省)でネズミ類の所蔵標本約1500個体を形態学的に精査した。その結果、日本特産と考えられていたヒメネズミと同一か極めて似た所蔵標本をみいだした。またこの地域のセスジネズミ、アカネズミ、モリネズミ類を採集し、通常法による核型を分析した。さらにGーbannded karyotypeに関する情報を得た。この核型分析では中国科学院動物研究所の王宗仁を招へいして共同研究を行った。これらの核型をもつネズミ類の学名については中国各地の資料が集まって後、同定される。現在、これらの核型と、G-band既知のセスジネズミを用いてbanding patternの類似度から類縁を分析する作業が日本と中国で進められている。 2.分類班:前田はユビナガコウモリとキクガシラコウモリの両属での系統分類を中国産で検証し、日本産近縁種との類縁関係を明らかにするために、中国内の所蔵標本182個体の計測をおこなった。測定したグループはヒナコウモリ、オヒキコウモリ、キクガシラコウモリ、オオコウモリ科のコウモリで、北京の中国科学院動物研究所で146個体、西寧の中国科学院西北高原生物研究所で36個体を測定した。標本が同一個体群(同一採集地点が10個体以上)で保存されていたのは3種であった。そのうち、コヤマコウモリで分析中である。日本産コヤマコウモリは、世界的にはヨーロッパ産と同一種(N.noctula)とされているが、日本の研究者にはN.furvusとして扱われている。しかし本調査により、日本産コヤマコウモリは、ヨーロッパ産とは別種であるが、中国産とは同一種であると考えられる。そうであるなら日本産コヤマコウモリの学名はN.planceiとするのが適当である。 金子は中国東北部・シベリヤ・朝鮮半島産のヤチネズミ群の分類学的整理を行ったCorbet(1978)の仕事にはいくつかの問題点がある。すなわち歯根の有無を用いた識別形質は年齢変異を示すものであるし、分布図は極端な小縮尺で実用的でない。本調査の標本と他の標本により、中国東北部を含めて計34地点の地域標本群がカバーされた。またタイリクヤチネズミの年齢変異を考慮した同定のために、フィンランド産の標本群と比較検討した。その結果、中国東北部・北朝鮮東北部を含む、北緯41ー50°には頭蓋基底長25ミリ台より歯根を持つタイリクヤチネズミが分布するが、北緯41°以南の朝鮮半島には、別属のコウライビロウドネズミが分布することが明かになった。この分布境界は北朝鮮の蓋馬高原であると思われ、ここは中国東北部とよく似た針葉樹林帯である。 3.ナキウサギ班:川道はナキウサギ属の比較生態調査の一環として、2種の草原性ナキウサギの基本社会構造を明らかにした。既に調査した露岩帯に生息する5種類が一夫一妻であるのに、本調査の1種クチグロナキウサギは家族なわばりをもち、子供たちは分散しなかった。もう1種のカンシュクナキウサギは世界初の調査により一夫一妻の社会であることが判明した。特異な社会をもつクチグロは草原の高い生産力に対応して子供を分散しないように進化したものであろう。子供が分散しないため高密度になる生息地は捕食者をひきつける。空からの捕食鳥に対してはその地域の第一発現者が警戒声を発して、地下に逃げ込み、また地下巣穴まで侵入するイタチ類に対しては、家族全員が巣穴を掘ったり、埋めたりして、巣穴システムを迷路状にして捕食者をまく対策をとっていた。
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