研究課題/領域番号 |
63043066
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
廣瀬 昌平 日本大学, 農獣医学部, 教授 (00102517)
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研究分担者 |
半澤 和夫 日本大学, 農獣医学部, 専任講師 (60147676)
小崎 隆 帯広畜産大学, 畜産学部, 助手 (00144345)
溝田 智俊 九州大学, 農学部, 助手 (10089930)
矢澤 進 京都府立大学, 農学部, 助教授 (90026550)
久馬 一剛 京都大学, 農学部, 教授 (80027581)
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研究期間 (年度) |
1984 – 1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 大地溝帯 / 農耕型態 / 永続的農耕 / 生業的農業 / 互違い栽培法 / 粘土鉱物 / 火山灰土壌 / 土壌肥沃度 |
研究概要 |
この調査の目的は東アフリカ大地溝帯地域を対象として、そこで行われている農業の実態を農地生態的諸要因との関係で調査することであった。この調査は予備調査を含めて5年間に渉って実施された。1985年にはケニア・エンブ県の5地区、1987年にはザイール・キブ州の2地区を対象にして農業の実態を調査した。調査方法は農地の踏査と農民に対するインタビューによった。 この総括の主題はザイール調査に焦点をおくが、ケニアでの調査結果をも対比した。ザイールの調査地は東アフリカ地溝帯の西側、そして、キブ湖西側に位置している。調査地の標高は1700〜1750mにあるKashenyi集落と1900〜1950mにあるBugobe Center集落である。この両地はKabarezoneに属し、アフリカでも人口密度の高い地帯(200人/km^2)として知られている。 まず、両調査地の農業がどのような農耕型態に属しているかを自然環境および社会経済要因をも含めて明らかにしたが、いずれも生存のための生業的農業の範疇に属する自然適応型の農業に依存しているものと考えられた。しかし、それを支える農耕様式は焼畑・移動耕作から永続的農耕へと移行しているのが認められた。キブ湖周辺地区は比較的肥沃な火山灰土壌に由来する耕地(後述)からなるが、人口過密化は耕地不足を生み、それが永続的耕作を結果したものと考えられる。そこでの作物生産は自然変動の支配を強く受け、極めて不安定であるのが観察された。農民のそれへの対応は多様な技術的適応として特徴づけられる。例えば、耕地の多様化として、丘陵の谷間にある湿地畑(marshy field)の開発、屋敷畑(Kitchen garden)およびバナナ畑の下地の利用などに特徴ある作付様式をみることができる。また、Bugobe Centerでは2000mに近い高地でありながら、熱帯低地起源のキャッサバにその主食の多くを依存しており、キャッサバの年間収穫を可能とする方法として特徴あるStagger cultivation(互違い栽培法)をみることができる。 1985年の調査地のケニア高地では、すでに明らかにしたように、商品作物であるコーヒー、茶の栽培が約30年前よりケニア政府によって奨励され、生業的農業に従事している農民にもその近代的技術が浸透しているのがみられた。しかし、ザイール高地では、商品作物としてのコーヒー、茶をある規模以上に栽培している農家はKashenyとBugobe Centerでわずかに1戸のみであった。調査地の周辺には大規模なプランテーションが存在しているが、これらはベルギー時代あるいはその後の外国資本によるものであり、プランテーションによる土地の占拠は農民の耕地不足を助長したが、そこでの商品作物栽培は農民による生業的農業生産に技術的インパクトを何ら与えていない。そのためギブ湖周辺の農民は相変らず伝統的農法に依存し、その結果として恒常的な食糧不足が深刻化する傾向にあった。 一方、この調査のもう一つの目的は農業の基礎としての土壌環境を調査することである。まず、塩基性火山灰および更新世の玄武岩由来の土壌断面の化学的および鉱物学的特徴づけが行われた結果、【○!1】土壌溶液の季節的な濃集は乾燥気候下の火山灰土壌では活性アルミニウムの発現が抑制される。【○!2】玄武岩由来の土壌では、風化段階がかなり進行しているため、乾燥気候条件の影響は余り明瞭でないことが明らかにされた。 次に、上記の由来および特徴を有する畑地土壌の肥沃度が分析調査されたが、熱帯アフリカの他地域のそれに比べて一般に高いことが示された。特に有機物とか生活残滓を施与されているバナナ畑や屋敷畑では特に高いことが示されたが、永続耕地あるいは短期休閑地では特に低く、休閑による肥沃度再生の効果は認められなかった。さらに、土壌肥沃度に対する農民の見方を、Base status,organic matter,exchangeable NaとKおよびavailable phosphorusの4つの成分を抽出して主成分分析法によって解析した結果、前二者は農民によって認識されていたが、後二者は農民の認識外にあった。この事実はこの地帯の母材が高い肥沃度を有するにもかかわらず、多湿条件下で土壌肥沃度を評価する場合に溶脱条件を評価することが重要であることを反映しているものと考えられた。以上、土壌分析の結果は人口の過密条件下で、永続耕作により自給的農業を維持するためには有機物および無機養分の施与が不可欠であることを示唆するものであった。
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