研究課題/領域番号 |
63043072
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
野村 暢清 久留米大学, 法学部, 教授 (90036955)
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研究分担者 |
中別府 温和 西南女学院短期大学, 助教授 (00155805)
猪又 徹 九州産業大学, 芸術学部, 講師
安元 正也 久留米大学, 法学部, 講師 (80036988)
清水 透 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (60014453)
水波 朗 久留米大学, 法学部, 教授 (50037058)
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研究期間 (年度) |
1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 空間構造 / 時間構造 / 社会構造 / 法複合 / タブー / 教会法 / エヒード / コンパドラスゴ / マラカメ |
研究概要 |
本研究は南部メキシコ村落における宗教と法と現実という題目のもとで研究を進めている。従来から各研究分担者が細かな研究を進めてきたその諸地域において、宗教と法と現実の姿を取り出していってみようとする。 野村はトラホムルコにおいて、宗教に関してはハヤカーテとコンパドラスゴを中心に研究を進め、法に関してはエヒードに関する研究を進めてきた。エヒードの体系の性格を考察するにつれて、それが宗教的なものの姿とは非常に異なったものであることが取り出されてきた。宗教的なものが意味のあり方を中心にして統合されている全体であるのに対して、法の性格が顕著に形式合理的であることなどが取り出されている。宗教は人間を心の中からつき動かすものであり、法はここから出てはいけないというところを規定し、それを越えたものを罰しようとするものである。エヒードに関しても形式合理的な行き方をとるかぎり法の精神とは全く逆のものでも承認しなければならない。エヒードに関する土地の譲渡の様態は家族から家族への譲渡の姿を示し、その決定が総会の51%という合理性によって決定され確認されている。このような形でテヘだけが140ヘクタールの耕地を持ち、リバスも同様に広大な土地を所有している。しかし、これらも過半数という合理的決定によって支持され認可されている。それが革命において、「土地なき農民に土地をというエヒードの精神とはおよそ異なったものであるのは事実である。しかしその精神にもとづいて、土地所有者がエヒードを所有することは許されないことは厳格に守られており、エヒードの土地が、土地なき者に配分されるという性格はあるところでは明確に保持されてもいる。このような形式合理的な土地所有の思考とカトリック宗教文化の中で生きる人々の奇跡の上に立つ信仰とは非常に性格の異なったものである。しかし、この両者がカトリック的全体として統合されつつある点が示されてもいる。 水波はこのエヒードについて比較憲法の立場から分析し、山崎はエヒードについてその細かな各法規定を詳細に分析した。中別府は宗教現象の特徴について、治療儀礼の局面を中心として分析し、安元もウィチョルの宗教現象をめぐって、マラカメの動きを中心に分析し、その宗教のシャマニズム的性格に言及している。安元はさらにウィチョルにおける結婚の問題を取りあつかっている。その伝統的形式のもの、当事者が幼いときに両親が取り決め、一定の年令に達すると結婚を行なう第一の形式と第二の形式はマラカメの介入がないものであり、両親の合意により、若者の父親が嫁の父親に求婚するのをくりかえすものである。第三の形式は男女だけの合意による自由結婚である。ウィチョルの家族はこのような結婚を通して出発している。中別府は儀礼的親族関係について、コンパードレは親族対非親族が71対29、60対40のごとき形で親族関係を高める形をとっていること、コンパードレの多くは父方のものであること、父方対母方が66対34、80対20の形をとっていることなどを結果として取り出している。猪又はラカンハの空間構造の分析を行ない、母方居住の問題やジャングルの中での行動場面でも夫婦が夫も妻も一定の道筋を行動する姿などを取り出している。ロペス教授はウィチョル族を取りあつかい、法と慣習を区分し、ウィチョル内に存する諸規制をこの区分にもとづいて整理し、法的なものが十分にウィチョルの中に定着していない姿に言及している。
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