研究課題/領域番号 |
63043079
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
和田 正平 国立民族学博物館, 第3研究部, 教授 (50110086)
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研究分担者 |
栗田 和明 リトルワールド人間博物館, 研究員
渡辺 公三 国立音楽大学, 音楽学部, 助教授 (70159242)
和崎 春日 神奈川大学, 外国語学部, 教授
江口 一久 国立民族学博物館, 第3研究部, 助教授 (90045261)
端 信行 国立民族学博物館, 第3研究部, 助教授 (90044742)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 物質文化 / 民族技術 / 文化領域 / 部族 / トーゴ / カメルーン / タンザニア / ザイール |
研究概要 |
従来から社会、文化、歴史それぞれに顕著な相違が指摘されていた東部アフリカと中・西部アフリカを比較の視野に入れて対象領域を設定し、独立後20数年たったアフリカ諸国の民族文化の変容過程を明らかにするのが本研究の目的である。 昭和62年度の現地調査では、「東アフリカ牛牧文化複合」と呼ばれるかなり一様な文化領域を形成している東アフリカにおいて、国家建設と近代化に伴なう伝統的な長老政治の後退、農業開発による牧畜部門の衰微、スワヒリ文化の拡大等に関してタンザニアを中心に民族学調査を推進した。中部アフリカにおいては、M・ハースコヴィッツが「コンゴ」という一つの文化領域を設定するほど特徴的なザイール流域の熱帯雨林の文化を中心にクバ王権とラフィア染織との関係を明らかにした。同様に、カメルーン西部高原でもラフィア文化は王権と結びつく明瞭な文化特徴であり、バムンとマンコンの両王制社会においてヤシ文化複合として把握された。北カメルーンのフルベ都市社会ではイスラム文化の影響と植民地化以降のヨーロッパ文明の浸透がフルベ民族文化をいかに変容させているかを歴史民族学的に追求した。西部アフリカにおいては、トーゴ調査を通して、海岸部のギニア文化が旧宗主国の政治支配の影響を強く受けて変化の度合が大きいが、内陸部のスーダン文化はサヘルに発達したイスラム教の伝統を濃厚に維持し、両者の文化的差異は独立後もかなり対立的に表出していることが具体的に明らかになった。以上、昭和62年度の現地調査の結果を集積し、調査総括により整理、分析した主な研究成果を要約すると次の通りである。 1.東アフリカでは、土地不足を社会変動の一つの要因とする見方が多くあるが、タンザニア南部、ニャキュウサ族を調査した栗田によると、出稼ぎを積極的に行なうなどして土地不足が調整されており、土地不足それ自体が変動の引き金になっている割合はそれほど高くないという結果が得られた。 2.タンザニアのウジャマー村建設は行政的には中止されたが、その後の波及効果としてコミュニティー・センターの成立、商業活動の規模拡大等をもたらして、生活文化の革新を急速に進行させている。 3.ザイールのクバ王国では、王の可視の身体および隠された身体を中心に分節化されたクバの王権が、衣装をどのような装置としてもちいることで成り立っているのか。渡辺の調査によって近代国家における伝統的な王権の位相について潜在的な部分が明らかにされつつある。 4.西カメルーンのバムン王国では、民族の工芸文化の発展に寄与した者は「王子」格の称号「ンジ」を与えて民衆の前で顕彰される。とりわけ、バムンの代表的な民族文化である金属工芸が、現在も技術革新を伴ないながら維持されている仕組みが和崎の調査によって明らかになった。 5.西カメルーンのマンコン王国における「王の祭」の記録に加えて、今回、王がその治世において一度しか行なわない行事である「ヌクイ」を観察できた。これはマンコン王国の文化の華とでもいうべき儀礼で、詳細な分析結果は近々に端により報告される予定である。 6.トーゴ北部、バッサリ地方は第1次世界大戦終了後も土製高炉による鉄生産が持続していた。鉄生産と鉄鍛冶文化はバレオ・ニグリティックの重要な文化表徴であり、タゴンバ、マンプルソ、ゴンジャ等の諸王国の形成に重大な影響を与えていたことが今回の鉄器調査から確認された。
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