研究課題/領域番号 |
63044017
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 (1989) 東北大学 (1988) |
研究代表者 |
池田 正之 京都大学, 医学部, 教授 (00025579)
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研究分担者 |
金 淬 中国預防医学科学院, 労働衛生職業病研究所, 副所長
劉 世傑 北京医科大学, 公共衛生学, 名誉教授
竹内 康浩 名古屋大学, 教授 (90022805)
中塚 晴夫 東北大学, 助手 (70164225)
渡辺 孝男 宮城教育大学, 助教授 (20004608)
LIU Shi-jie Beijing Medical University School of Public Health
JIN Chui Institute of Occupational Medicine
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1989年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1988年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | トルエン / 有機溶剤 / 用量ー作用関係 / 尿中代謝物 / 中枢神経抑制作用 / 自覚症状 |
研究概要 |
工場調査は昭和63年5月には、北京市内の溶剤工場6工場および非曝露工場1工場の計7工場について行った。その時点では気候が良く窓などは開放されていて自然換気が良好であったため、職場内溶剤濃度は相対的に低いと思われた。トルエン単独曝露ではなく、ベンゼンとの混合曝露を伴う職場が多かったため、昭和64年2月には、昭和63年5月の調査成績に基づいてトルエン単独曝露あるいは、それに近い工場のみを、厳冬期で窓や扉が閉鎖されている時期を選択して(実際には日本と同様に暖冬異変の冬であり、窓などは必ずしも完全に閉鎖はされていなかった)北京市内の溶剤工場5工場および非曝露工場1工場の計6工場について調査を行った。さらに昭和64年度には、10月に北京市を避けて、無錫市および上海市内所在の溶剤工場各1工場および非曝露工場各1工場の計4工場について調査を行った。従って調査工場は延べ17工場で、反復調査した工場を重複せずに数えると、13工場となる。気中トルエン濃度は最高500ppm程度であった。 トルエンおよびその他の溶剤に対する曝露濃度:拡散型サンプラ-を用いて測定したトルエンに対する個人曝露濃度、および同サンプラ-で検出された他溶剤、ことに芳香溶剤の共存の有無について検討した。溶剤工場の生産する製品の種類により、トルエンの単独曝露あるいはそれに近い状態からトルエンよりも、毒性が強いベンゼンの混合曝露が顕著である工場まで大きな変化があり、ことに靴を生産する工場では、ベンゼンの混合曝露が高度であった。無錫および上海の溶剤工場は極めて大規模の工場であって、職場によりトルエン単独曝露に近い職場、キシレン(厳密にはキシレン3異性体とエチルベンゼンを含む工業用キシレン)曝露が主体である職場およびトルエンとキシレンが共存する職場まで多様であった。また若干の労働者については、調査当日極めて低い曝露しか受けない事例も存在した。 トルエン曝露と尿中代謝物排泄の対応:ベンゼンその他に対する混合曝露の強度が少なく、トルエン曝露が主体と考えられる昭和64年2月の調査例を中心にトルエン曝露濃度と尿中馬尿酸およびO-クレゾ-ル排泄濃度との対応を検討した。個人サンプラ-による時間荷重平均曝露濃度と、尿中代謝物の2つの曝露指標との間には、有意な相関があり、測定したトルエン曝露濃度は十分信頼に堪えることが立証された。 被検者総数および各検査項目別被検者数:被検者の総数は、曝露群は、昭和63年5月527名、昭和64年2月169名、同10月417名の計1113名。対照群は、昭和63年5月285名、昭和64年2月69名、同10月194名の計548名。総計1661名である。これを男女別にみると、曝露群のうち、男子と女子は、ほぼ同数、また対照群でも男子と女子とは、ほぼ同数であった。しかし、すべての被検者が全項目を受診したわけではなく、採血又は、採尿を拒否した例、あるいは採血量の不足、採血後の凝血などのために特定の項目の成績を得られなかった場合がある。 血液学的および血清生化学的所見:血液学的および血清生化学的所見の考察には、昭和63・64年の被検者のうちで、トルエン以外にベンゼンに対する混合曝露を受けている従業員を除外した。(正常範囲を逸脱しているが、異常値に至らない場合境界値と考えた)ヘモグロビン濃度、GOT、GPT活性、ALP・LAP活性およびクレアチニン濃度については、いずれも全体として曝露群・対照群間に有意な差を見出し得なかった。 トルエン曝露労働者群では、対照群に比して、作業中の症状および最近3ケ月の症状のいずれについても有意(P<0.01)に自覚症状頻度が上昇していた。さらに作業中の症状を各項目毎に検討すると、「頭がふわふわする」・「頭が重い」・「頭が痛い」などの自覚症状が曝露の程度が強くなるに従って、一層頻度が高く訴えられていることが注目された。
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