研究課題/領域番号 |
63044022
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 昭二 筑波大学, 農林学系, 教授 (20015639)
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研究分担者 |
PARMELEE A.J カナダ国立系統分類学研究所, 主任研究員
HIRATSUKA Ya カナダ国立北方森林研究所, 主任研究員
金子 繁 森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員
柿嶌 眞 筑波大学, 農林学系, 助教授 (40015904)
勝屋 敬三 筑波大学, 農林学系, 教授 (40015863)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1989年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1988年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | さび病菌 / 樹木類 / 分類 / 形態 / 生態 / Ecology |
研究概要 |
寒帯および亜寒帯地域に分布する樹木類さび病菌の中でとくにマツ類に寄生するさび病菌について、日本、北米で多数の標本を採集し、それらの形態学的な比較検討を行うとともに、胞子の発芽などの生態学的性質を明らかにし、それらの分類学的再検討を行った。その概要は以下のとおりである。 (1)ハイマツに寄生するさび病菌について 中部山岳地のハイマツに寄生するさび病菌について、それらの標本を採取し、北米に分布しているCronartium ribicolaと比較検討した結果、形態的に類似していることが明らかになった。しかしながら生態的には異なり、北米のものがスグリ類を中間宿主とするのに対し日本のものはシオガマギク類を中間宿主とすることが判明した。また東北地方に分布するハイマツ上のさび病菌については、形態的にはCronartium ribicolaと類似するが、中間宿主を必要とせず、また、胞子の発芽を調べた結果、胞子は発芽管の先端にのう状構造を形成した。さらに細胞学的検討の結果、胞子内には2核を有するが、その発芽に判い核数は1〜4核に変化することが認められた。これらのことから、東北地方のハイマツ上のさび病菌はCronartium属ではなく、北米で記載されたEndocronartium属に所属することが明らかになり、既知種との比較検討の結果、新種であることが明らかとなり、Endocronartium sahoanumと命名し記載した。北海道のハイマツ上においては、すでに中間宿主を必要としないさび病菌であるPeridermium yamabenseが報告されているがこれらの多数の標本を採集し形態学的検討を行った結果、胞子の表面微細構造は、Cronartium ribicolaや、Endocronartium sahoanumとは異なり、表面に不規則な縦の筋を有する疣状の構造を有することが明らかとなった。また、この胞子の発芽形態および発芽に判う核の行動についても検討した結果、その発芽はEndocronartium sahoanumと類似していることが認められ、本菌も分類学上Endocronartium属に所属させるべきであるとの結論に達した。また従来の報告では北海道のハイマツ上にもCronartium ribicolaが分布するとされていたが、本研究で収集した多数の標本の調査では、Cronartium ribicolaは見い出すことが出来なかった。さらに今回の調査においてPeridermium yamabenseとは形態的に異なるさび病菌が一部地域で発見されたため、今後このさび菌については、さらに検討する予定である。 (2)ストロ-ブマツに寄生するさび病菌について 北海道のストロ-ブマツ上のさび病菌について採集し、その形態について、北米のストロ-ブマツ上の標本と比較検討した結果形態的に同一であったため、Cronartium ribicolaであると同定することが出来た。しかしその伝染経路などについては解明することは出来なかった。 (3)二葉松類に寄生するCronartium quercuum complexの分類学的検討 Cronartium quercuum complexはナラ類などを中間宿主としアカマツなどの二葉松類にさび病を引き起こし、全世界に広く分布していることが知られているが、この分類については研究者により意見の相違が認められる。そこで本研究では北米産と日本産のCronartium quercuumを比較検討するため、とくに中間宿主上に形成された冬胞子より生ずる担子胞子の発芽形態について調査した。その結果、ナラ類葉上の冬胞子から形成された新鮮な担子胞子胞子は、マツ針葉上、ペトリ皿内の蒸留水上では大部分が直接発芽管を出して発芽したが、中間宿主のナラ類葉上では、大部分が2次的担子胞子を形成する間接発芽をすることが認められた。また担子胞子を一時抑制するための酸性水(pH.2)または蒸留水中や乾燥条件に短時間置かれると間接発芽をする能力を失うことが明らかとなった。また、担子胞子の発芽に際し、胞子から発芽管内に移動する核の行動には、発芽のタイプにより差異が認められた。今後、冬胞子より形成された担子胞子の詳細な形態についてさらに検討する予定である。
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