研究課題/領域番号 |
63044029
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 信幸 東京大学, 工学部原子力工学科, 教授 (60023719)
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研究分担者 |
NEWTON A.A. AEA Colham Laboratory, 主任研究員
BODIN H.A.B. AEA Culham Laboratory, 主任研究員
二瓶 仁 東京大学, 工学部原子力工学科, 助手 (70010973)
吉田 善章 東京大学, 工学部原子力工学科, 助教授 (80182765)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1989年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | プラズマ・核融合 / トロイダイルプラズマ / ULQ / プラズマ閉じ込め / イオン加熱 / Ion Heating |
研究概要 |
超低q領域のプラズマ平衝はトカマクとREPとの中間的な性質を持ち、高βであり且つ工学的安定性の高い閉じ込め形式として注目を集めている。超低qプラズマ(ULQ)は、東京大学のREPUTEー1実験装置によって世界に先駆けて研究が始められ、以来国内ではSTPー1M(名古屋大学)、TPEー1RM15(電総研)、海外でも米国のOHTE(GA Technologies)をはじめ英国、ブラジル、インド、ソ連などで研究が進められている。当研究費補助金による国際学術研究では、英国Culham研究所のHBTXー1Cを用いた共同実験を行い、REPUTEー1での実験デ-タとの比較検討を行うことにより、以下に述べるような成果を得た。 (1)ULQ放電の特性(高イオン温度の達成): HBTXー1Cは本来RFPとして建設された装置であるが、これを用いてULQ放電を行い、安定なプラズマ閉じ込めを実証した。REPUTEー1が示したように、安定閉じ込めが得られるq値にはプラズマ自身による自己選択性があり、ULQ平衝の自己形成が再確認された。REPUTEー1及びOHTEでは200kA以上の大電流放電によって放射損失バリヤ-を越え200eV程度の電子温度を得ている。またREPUTEー1ではMHD揺動の励起に伴ったイオンの異常加熱が観測されており、最高1keV程度のイオン温度を得ている。HBTXー1CによるULQ放電でも同様に高い電子温度、イオン温度が観測された。プラズマ電流210kAに対し、電子温度(制動輻射X線のスペクトルによる)は800eV、イオン温度(中性粒子エネルギ-分析による)は1.2keV程度であった。密度は0.5_X10^<19>m^<-3>程度で、この値はREPUTEー1で得られている1^-2_X10^<19>m^<-3>よりも低い。これは真空容器壁面にloadされた水素量の違いによると考えられる。 (2)ThinーShellの下での安定放電(RFPとの比較): HBTXー1Cはthinーshell(電気抵抗の大きなプラズマ安定化壁)を採用している。この点は将来の核融合炉炉心として工学的feasibilityを検証しようとする動機による物であり、REPUTEー1と同様の設計思想である。HBTXー1CによるRFP放電ではシェルの抵抗が大きいことによる不安定性(thinーshell mode)のために、プラズマの持続時間が著しく短いが、ULQ放電ではこの不安定性は起きず、安定な長時間放電(6ms以上;上限は電源の制約による物であり、プラズマの不安定性によらない)が達成された。これもREPUTEー1でのRFPとULQとの比較結果と全く同じ結果であり、工学的にfeasibleな装置環境下では、REPよりもULQの方が優れた安定性を持つことを示した。 (3)粒子閉じ込めと不純物輻射(RFPとの比較): HBTXー1Cにおいても、プラズマの諸パラメ-タについて、ULQとRFPの比較を行った。上記二項において述べたように、ULQは良好な閉じ込め特性を示し、エネルギ-閉じ込め時間にして0.13msを得た。この値はRFPに関する0.15msと比較して、ULQのエネルギ-閉じ込め性能がRFPとほぼ同等であることを示している。この結論はREPUTEー1及びOHTEでの実験結果を再現するものである。一方、ULQとRFPの著しい違いを示したパラメ-タの一つに、不純物輻射量の違いが観られた。HBTXー1CのULQプラズマはRFPよりも4倍程度も高い電子温度を持つにも拘らず、軟X線領域の不純物輻射量がむしろRFPよりも1桁以上小さい。同様の傾向はREPUTEー1でも観られた。このことはULQプラズマがRFPと比べて短い粒子閉じ込め時間を持つことを示唆する。この点は将来炉心プラズマの候補として考えたとき、ULQの著しい利点となり得る。高純度プラズマの閉じ込めには、長いエネルギ-閉じ込め時間、短い粒子閉じ込め時間が好ましいからである。 以上のように、本研究を通じてULQプラズマの総合的理解が深まり、基礎的なデ-タベ-スが広がった。また、今後のULQプラズマの閉じ込め特性に関する研究の、一つの重要な方向が得られた。
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