研究課題/領域番号 |
63044031
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西川 勝 東京大学, 教養学部, 教授 (10012329)
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研究分担者 |
SCHMIDT Wern ハーン, マイトナー研究所・放射線化学部, 主任研究員
加藤 統之 名古屋大学, 工学部, 教務職員 (10109275)
笛木 賢二 名古屋大学, 工学部, 教授 (90023027)
中川 和道 東京大学, 教養学部, 助手 (00134403)
伊藤 健吾 東京大学, 教養学部, 助手 (40221080)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1989年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1988年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 電子移動度 / 伝導状態エネルギ- / 電子捕捉反応 / 二酸化炭素 / 誘電体媒質 / 圧力効果 / Hall移動度 / 炭化水素二成分系 |
研究概要 |
当初計画において予定した測定は、1.電子移動度(Hall移動度を含む)測定,2.伝導状態エネルギ-測定,3.電子補捉反応速度測定の三つで、これらの測定結果から媒質の高電圧特性に関する情報を得ることが本共同研究の目的である。以下で、まず測定結果を整理する。 1.電子移動度の測定.(1)nーペンタンーネオペンタン二成分系について、Hall移動度μ_Hとドリフト移動度μ_Dをnーペンタン濃度30(体積)%迄の濃度範囲(蒸気圧下)で測定した。nーペンタン中のμ_Dは低く電子は局在状態にあり、μ_D大で電子が準自由状態にあるネオペンタンと混合していわゆるtwoーstate状態を創り出し、電子局在ー自由状態間の平衡についての情報を得ることを期待したが、この濃度範囲ではμ_H/μ_Hがほぼ1で電子が準自由状態にあることが判明した。μ_D自体は濃度と共に低下するので、nーペンタンは単に大きい散乱断面積を持つ散乱体としてのみ働いている。この事実は、無極性媒質中の電子局在化にはより多数の直鎖状分子を要するという局在化機構について極めて重要な情報を含んでいる。μ_Hの測定は媒質中の電子状態を判定する最も確実な情報を与えるが測定は極めて困難で、現在液体中の測定例は本測定を含めて6例に限られている(内4例は本共同研究関係)。(2)テトラメチルシラン(TMS)ー、nーペンタンートルエン(またはベンゼン)二成分系のμ_Dを3、000barまでの圧力範囲で測定した。TMSの場合はトルエン、ベンゼンを1%程度混合しても、TMSのみの場合と全く等しい値、圧力変化を示す。nーペンタンでは、低圧領域で純nーペンタン中と同じであるが、1,000bar付近から急激に減少する。トルエン高濃度(35%)の場合は低下したμ_D値がそれ以上の圧力上昇には無関係でほぼ一定値を示すことを見いだした。μ_Dの低下は高圧下の陰イオン安定化によるベンゼンないしトルエンへの電子付着の結果で、TMS中で陰イオンが生成しないのはTMSのV_0値が低く準自由電子状態が安定であるためと解釈される。高濃度・高圧領域における一定なμ_D値は電子がトルエン分子間のhoppingにより移動することを示すもので、hopping mechanismにより電子移動の最初の観測例である。 2.伝導状態エネルギ-(V_0)の測定.イソオクタン、テトラメチルシラン、2,2ージメチルブタン、nーペンタン中で3、000barまでの圧力範囲のV_0値を測定した。亜鉛蒸着膜の光電効果法による仕事関数の測定をコンピュ-タ制御により1nm間隔で行い、より正確なV_0値の決定が可能となった。V_0値はどの液体でも圧力と共に増加するが、密度増加によるV_0値の増加としてWignerーSeitz理論と矛盾しないが、定量的には同理論による計算値は実験値を十分再現しないことが判明した。 3.CO_2による電子捕捉反応速度の測定.東京大学で常温液体中の測定を終了した2,2ージメチルブタンおよびイソブタンのうち、2,2ージメチルブタン中の測定を2,500barまでの範囲で行った。低圧領域では、常温液体中同様、電子捕捉ー離脱平衡が成立する。高圧領域では圧力による陰イオンCO_2^ーの安定化により捕捉反応が優勢となり、反応速度定数及び平衡定数は圧力と共に増加する。熱力学によれば圧力による平衡定数の増加は体積の減少(〜ー250cm^3)を意味するが、これは溶媒の電縮現象によるものであることがDrudeーNernstの古典的理論が適用されることで結論できる。前述のV_0実測値とCO_2^ーイオンによる溶媒の分極エネルギ-を用いてエネルギ-収支論による反応速度の解釈を試みた。 これらの測定結果を総合すると、カロリメタ-用電離箱内等の高電圧条件下の使用で直鎖状または芳香族炭化水素は不純物として比較的問題とならないことが判明した。またCO_2が多くの炭化水素中で電子を容易に捕捉することを観測したので、鉱油中にCO_2を溶解させて絶縁破壊電圧の測定を行ったが、破壊電圧は60kV前後で改善は見られなかった。炭化水素の種類を選んで、さらに検討を続ける必要がある。
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