研究課題/領域番号 |
63044034
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本間 三郎 東京大学, 原子核研究所, 教授 (10004326)
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研究分担者 |
杉立 徹 広島大学, 理学部, 助手 (80144806)
木村 喜久雄 九州大学, 理学部, 助手 (60108636)
秋葉 康之 東京大学, 原子核研究所, 助手 (80192459)
永江 知文 東京大学, 原子核研究所, 助手 (50198298)
浜垣 秀樹 東京大学, 原子核研究所, 助手 (90114610)
宮地 孝 東京大学, 原子核研究所, 助手 (20013401)
西川 公一郎 東京大学, 原子核研究所, 助教授 (60198439)
橋本 治 東京大学, 原子核研究所, 助教授 (50092292)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
12,000千円 (直接経費: 12,000千円)
1990年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1989年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1988年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 高エネルギ-重イオン反応 / クォ-ク・グル-オン・プラズマ / 相変化 / 高密度原子核物質 / 高エネルギ-原子核反応 |
研究概要 |
本国際学術研究の当初の目的の1つは、高エネルギ-重イオン衝突によって生成される電子・陽電子を検出することによってクォ-ク・グル-オン・プラズマ状態の実現を検出することであった。そこで、昭和63年度では、高エネルギ-重イオン衝突により生成される電子・陽電子対の検出装置系の整備が進められた。トリガ-用シンチレ-タ系、位置測定用ドリフトチェンバ-系、及び電子識別用チェレンコフカウンタ-系の整作がほぼ終了し、二次ビ-ム及び重イオンビ-ムからの二次粒子を用いた性能テストが開始された。トリガ-用シンチレ-タ-系は個々のシンチレ-タ-の時間分解能が測定され、実験に必要とされる十分な時間分解能が得られた。位置測定用ドリフトチェンバ-系は使用ガス混合比、設定電圧に対する位置分解能、測定効率の系統的テストが進められ、既におおよその最適化が終了した。チェレンコフカウンタ-系については、入射パイオンの運動量の関数としてチェレンコフ光収量が測定された。また、ガスの種類によるチェレンコフ光収量の依存性の測定が進められた。計算機によるシミュレ-ションプログラムの整備が進められ、シミュレ-ションにより、重イオン衝突においては、トリガ-系を強化する必要があることが解った。 平成元年度は、クォ-ク・グル-オンプラズマ(QGP)のシグナルとしての電子・陽電子対検出器の全体調整を終了し、いくつかの入射重イオン粒子、原子核標的の組合せに対して試験的な実験を行った。元年度で実験遂行上の重要な点は、デ-タ収集のためのトリガ-系の重要性が認識されたことである。これにしたがい平成元年度はトリガ-系の系統的調査、改良に対して比重が置かれた。そして、実際の実験条件をシミュレ-トするように、計算機・シミュレ-ションプログラムを変更した。これは、電子・陽電子対のような収量の少ないシグナルについては、トリガ-系の良し悪しが実験の正否を決めるからである。さらに完成した全体系用いて、元年度において、収量効率のよいハドロン生成のプレミナリ-な実験を行った。そして、この実験から、パイ中間子とK中間子生成量について、原子核・原子核衝突の場合の比が、陽子・原子核衝突の場合とは異った値となることが発見された。これは原子核・原子核衝突においてなんらかの新しい現象が起っている可能性を示すものである。このため、当初の電子・陽電子対検出に先立ってこの現象の徹底解明を進めることとした。 平成2年度は平成元年度にひきつづいて、高エネルギ-重イオン衝突によって生成される各種中間子等のハドロン測定と解析を行った。とくに元年度において見い出されたパイ中間子とK中間子の生成比の異常に重点をおきつつ、その他陽子等のハドロンについても陽子・原子核衝突の場合と原子核・原子核衝突の場合に違いがあるかどうかくわしくしらべた。したがって、陽子入射による原子核反応及び原子核入射による原子核反応において発生するπ中間子、K中間子、陽子、反陽子などの荷電粒子の運動量、角度分布がブルツヘブンAGSのエネルギ-領域において系統的にしらべられたことになる。これら測定の中でとくに、K中間子とπ中間子の生成量の比(K/π比)について次のことがわかった。すなわち原子核入射の原子核反応では陽子入射の原子核反応よりもK/πの比が2ー3倍大きくなっている。この比率は、陽子入射陽子反応、陽子入射原子核反応、原子核入射原子核反応と、それぞれ反応に関与する核子の数が多くなるほど大きくなっていく傾向を示しており、「奇妙さ」という量子数をもつK中間子が、反応に関与する核子数とともに多く生成されていることを示している。こうした現象がクォ-ク・グル-オン・プラズマと関係したものかどうかは今後の課題である。また、電子・陽電子対の測定もAGSで金イオンまで加速される来年度以降再び開始していくことにしている。このように、QGPの検出へ向かって電子・陽電子、各種ハドロンといろいろな方面から今後も挑戦していく予定である。
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