研究概要 |
【目的】 光ファイバセンサは電磁波等の影響を受けずに,劣環境下でも容易に計測を行うことができる。今回われわれは,光ファイバをエネルギ伝達とセンシング素子として用いたセンサ・アクチュエ-タシステムを開発し,その評価を行った。 【構成】 光ファイバセンサ・アクチュエ-タは,光源・光ファイバ・光電変換素子・信号処理回路より構成される。各々の構成は次の通りである。 1.光源として1W高出力半導体レ-ザ(波長813nm)を用いた。光ファイバ(グレ-デッド・インデックスファイバE167,日立電線,コア径230μm,開口数0.3,長さ2m)によりレ-ザ光を光電変換素子部に導光した。光ファイバ先端での光出力は最大800mwであった。光ファイバと半導体レ-ザとの接続,光電変換素子との接続は,市販のFCコネクタを使用した。 2.光電変換素子として,シリコン単結晶の太陽電池(S4V United Detector Technology,大きさ4×2mm)を8固直列に接続し,アクリルパイプ内に光ファイバ先端をとりまくように配置した。 3.計測対象として温度を考え,IC温度センサを選択し,その電圧出力をVーFコンバ-タを介して周波数出力に変換した。 4.信号処理回路は,光通信回路の原理より,LED,光ファイバとホトディテクタより構成される。光通信用LEDとして波長650nm(TLYR5500)を用いた。2mのプラスチックファイバ(SHー4001,コア径1mm)により通信を行った。 【実験方法】 レ-ザ光を光ファイバを介して光電変換素子に導き,温度計測を試み,システムの評価を行った。 【結果】 センサ回路接続しない無負荷状態での最大供給電力は約40mWであった。しかし,光出力を最大にすると熱の影響が大きく,太陽電池の効率が時間とともに減少するため,熱の影響を受けず安定した供給電力が得られる光出力を選択した結果,光出力約650mWで解放電圧4.3V,ショ-ト電流6.7mAが得られた。この値は,われわれが当初予測した値より少ないが簡単なセンサ回路を動作させるのには十分であった。 使用したLEDは低電流(2mA以下)で駆動し,ファイバを介して温度出力を得ることができた。 【検討】実験結果より基本システムの動作は確認された。しかし当初われわれが予想し,また理論的に計算した電流値を得ることができなかった。この原因として,1)光出力が大きくなると熱の影響を受け,太陽電池の効率を低下させる。2)今回使用した光ファイバの開口数は0.3と小さいので光が広く拡散しないため,8個すべての太陽電池表面を均一に照射することができず,小電流しか得られなかった。そのため太陽電池の配列構造を再検討する。すなわちすべての太陽電池を均一に照射できる構造に改めたい。また今回は,光電変換素子部と光ファイバの接続にFCコネクタを用いたが,効率の面からも,さらに工夫する必要がある。 光ファイバセンサについては今回,比較的回路作製が簡単な温度計測を行ったが,生体の他の生理現象,例えば,血圧,血流等を計測対象とする事もできる。この際なるべく少ない消費電力でセンサを駆動する工夫を行う必要がある。 【まとめ】光によるエネルギ供給により約20mWの電力を得ることができた。このことは,生体のような高絶縁性を必要とする環境下や高温高湿下での計測への応用が期待できる。
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