研究課題/領域番号 |
63044044
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岡田 勲 東京工業大学, 総合理工学研究科, 教授 (60011582)
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研究分担者 |
ASHOK Kumar ブリストル大学, 物理学科, 助手
GEORGE Walte ブリストル大学, 物理学科, 助教授
岡崎 進 東京工業大学, 総合理工学研究科, 助手 (70194339)
山口 敏男 福岡大学, 理学部, 助教授 (70158111)
小田原 修 東京工業大学, 総合理工学研究科, 助教授 (90185611)
NEILSON George Walter Associate Professor, Bristol University
ADYA Ashok Kumar Research Associate, Bristol University
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
1989年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1988年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 中性子散乱 / 同位体置換法 / 分子動力学シミュレ-ション / 溶融塩 / 水酸化物 / 炭酸塩 / 硝酸塩 |
研究概要 |
1.耐食性に優れたニッケル金属を中性子散乱測定用セル材料として用い、高精度測定に基づき、結晶質セルに由来するブラッグピ-クを試料に起因する情報と区別し、それを除去する技術を確立することにより、溶融水酸化物などの高温腐食性試料に対する、中性子回折による構造解析を可能にした。 2.上記セルを用いることにより、一連の溶融アルカリ水酸化物(LiOD,NaOD,KOD)に対して中性子散乱測定を行い、これまで全く未知であった、これら融体の構造因子を精度良く求めることに成功した。これに基づいて、OーD結合距離はこれら高温融体中においても水中のそれとほとんど同じであること、また、対陽イオンと水酸化物イオン間の動径分布関数の第一ピ-ク位置は、金属イオン半径に対して直線性を有すること、つまり、OD^-イオンのような多原子イオンに対しても、ひとつの有効イオン半径を定義できることを明らかにした。 3.さらに、腐食性試料用上記セルを、より高温の溶融炭酸リチウムに対する測定へと展開した。これにより、炭酸イオンは、同じ対称性の硝酸イオンよりも百分の数(〕.SY.Angstrom.〔)だけ大きいこと、また、その液体構造は硝酸リチウムよりも相当rigidになっていること等を明かにした。この新たな知見は、溶融炭酸塩の電気伝導度やラマン散乱による回転緩和など、他の実験とも大きな関わりを有する重要な結果である。 4.上記水酸化物中、まず、水酸化リチウムに対し分子動力学シミュレ-ションを実施した。計算に不可欠なイオン間ポテンシャル関数の決定においては、分子軌道計算に基づき求めた関数を、中性子散乱実験から求めた構造因子を充分満足に再現できるように経験的に修正した。中性子散乱実験と分子動力学計算をこのように相補的に用いることにより、溶融水酸化リチウム中のOH^-イオンのまわりのLi^+イオンやOH^-イオンの配位構造、並びに液体の三次元骨格構造等に関する詳細な知見を得ることに成功した。 5.溶融硝酸アンモニウムに対し、様々な組合せにおける窒素同位体置換試料に対し中性子回折実験を行い、同位体置換法による構造解折を行った。この系に対しては、一次の差構造因子をかなりの精度で求めることができ、また、二次の差構造因子についても定性的な議論が可能であることが示された。 6.上記の成果に基づいて、二種類の置換原子を有する同位体置換法として、溶融硝酸リチウムに対する中性子散乱実験を実施するため、^7Li^NNO_3,^0Li^NNO_3,^NLi^NNO_3,そして^7Li^<15>NO_3,^0Li^<15>NO_3,^NLi^<15>NO_3の6種類のリチウム並びに窒素に関する同位体置換試料を調製した。ここで、Nは自然界における同位体比、0は干渉性散乱長が0となるような同位体比の試料を意味する。これにより、一次及び二次の差構造因子から、Liー0,LiーN,NーN等の原子間対分布関数を独立に決定することができる。しかしながら、このためには相当の統計量が必要であり、なおこの実験は継続中である。 7.静的液体構造研究に対するD4(ILL、グルノ-ブル)とHIT(高エネ研、筑波)との比較において、両者間の測定技術並びにデ-タ解析レベルにはほとんど差はなく、HIT分光器は他国と比べても全く遜色はない。しかしながら、中性子源に関してはILL等における方が相当強いものであり、得られる統計量にはかなりの差が存在する。これは、単に中性子源の大型化、高出力化等により解決し得ることでもあり、早急な改善が望まれる。
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