研究課題/領域番号 |
63044065
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 清一 名古屋大学, 医学部, 助手 (70190410)
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研究分担者 |
湯沢 由紀夫 ニューヨーク州立大学, バッファロー校, 客員教授
JAN Brentjen ニューヨーク州立大学, バッファロー校, 教授
GIUSEPPE And ニューヨーク州立大学, バッファロー校, 教授
伊藤 恭彦 名古屋大学, 医学部, 医員
BRENTJENS Jan State University of New York at Buffalo, Pathology
ANDRES Giuseppe State University of New York at Buffalo, Pathology
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 糸球体腎炎 / 免疫病理学 / 免疫複合体 / レクチン |
研究概要 |
本研究は免疫学的機序による糸球腎炎成立のメカニズムを探る目的でラットに実験的糸球体腎炎を作成しこのモデルを用いて免疫病理学的研究を行なった。この研究により得られた成果は以下のとうりである。(1)内皮細胞膜を炎症(抗原抗体反応)の起点とする実験的糸球体腎炎モデルの作成:ラット左腎灌流によりレクチン(HPA及びLCH)を糸球体内皮細胞膜に結合させたあと顕微鏡下で腎動静脈を修復し血流を再開させ尾静脈より抗レクチン抗体を投与した。免疫電顕法による観察では抗体投与直後レクチン、抗体IgG、補体が糸球体内皮細胞膜上に観察され計画していたモデルが作成された。(2)形成された免疫複合体の動態:HPAを外来抗原として用いた場合HPAは内皮細胞膜上にびまん性に結合するが抗体投与によりごく短時間のうちにHPA(及び抗体を含む免疫複合体)はその局在を変化させ顆粒状の免疫沈着物となる。この免疫沈着物は時間の経過とともに内皮下、上皮下へとその局在をかえる。一方LCHを抗原として用いた場合、HPAを用いた場合とは異なり顆粒状免疫沈着物はみられず時間の経過とともに内皮下に長く(〜1週間)とどまった。このように外来性抗原が糸球体内皮細胞膜上で抗体と反応するとその抗体によってはヒト膜性腎症類似の病理所見を呈し得る事が判明した。(3)顆粒状免疫沈着物形成のメカニズム:ラット腎灌流システムを用いてHPAを抗原とした場合灌流条件を変化させて検討した。その結果4℃での灌流、IgG抗体の変わりにFab抗体を用いた灌流、あるいはクロ-ルプロマジンの添加により顆粒状の免疫沈着物生成が抑制され、細胞骨格の関与が示唆された。さらにHPAを用いたモデルでは速やかに免疫複合体が上皮下へと移動した理由としてHPAが糸球体基底膜の主な構成成分であるIV型コラ-ゲンやラミニン等と反応性が低く基底膜の通過が容易であったと推察された。一方LCHの場合はラミニンとよく反応するため基底膜の通過が阻害され長く内皮下に留まったと考えられた。 (4)ラット糸球体細胞膜からのHPA結合性糖蛋白質の精製とそれに対する抗体の作成:ラット糸球体をメッシュ法により単離し膜成分をDOC(Deoxy Cholate)にて抽出した(PM分画)。PM分画をニュ-ラミニダ-ゼ処理したあとHPAアフィニティ-カラムにかけHPA結合性糖蛋白を得た(HPAーPM分画)。HPAーPM分画はSDSーPAGEにて分子量約140KD(シアル酸の結合した状態では160KD)の糖蛋白で分子量やHPA・PNAなどとの反応性からポドカリキシンであると考えられた。HPAーPMを家兎に免疫して抗体(RbAHPAーPM)を作成しその性質を検討したところ、ポドカリキシンの糖鎖を含む部分のエピト-プに特異性がありシアル酸を除去したときにのみ反応することが判明した。またこのRbAHPAーPMの認識する抗原はラット腎では糸球体上皮細胞の自由面にのみ存在する比較的特異なエピト-プであることがわかった。またHPAーPMを抗原として用いてマウスモノクロ-ナル抗体を作成した(現在のところ未検討)。以上からラット糸球体細胞膜には比較的特異な糖鎖を含むエピト-プが存在することが示唆された。(5)まとめ:これまで比較的研究の進んでいなかった内皮細胞障害と糸球体腎炎の発症・進展との関連を考えるうえで本研究は重要な示唆を与えるものと考えられた。とくにレクチンは自然界(とりわけ感染性病原体)に多く存在しており外来性抗原による腎炎の発症機序を考えるうえで重要な所見が得られた。
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