研究課題/領域番号 |
63044077
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 國寛 (1990) 京都大学, 医学部, 助教授 (00027070)
上田 国寛 (1990) 京都大学, 医学部, 助教授
村地 孝 (1988-1989) 京都大, 医, 教授
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研究分担者 |
神奈木 玲児 京都大学, 医学部, 講師 (80161389)
山肩 葉子 京都大学, 医学部, 助手 (20210338)
浜窪 隆雄 京都大学, 医学部, 助手 (90198797)
RUCHANEELKOR カルプラヴイド マヒドール大学, 医学部タイ国, 助教授
PRAPON Wilai マヒドール大学, 理学部タイ国, 教授
FUCHAROEN Su マヒドール大学, 大学院タイ国, 教授
安達 喜文 京都大学, 医学部, 助手 (50201893)
戸谷 誠之 国立健康栄養研究所, 母子健康栄養部, 部長 (70163988)
RUCHANEELKORN Kalparavid Mahidol University, School of Medicine
YMAMGATA Yoko Kyoto University Faculty of Medicine
MURACHI Takashi Kyoto University Faculty of Medicine
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
1990年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1989年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1988年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | サラセミア / グロビン遺伝子 / ヘモグロビン異常症 / プロテオリシス / カルパイン / カルパスタチン / Ca^<2+> / 膜蛋白質 |
研究概要 |
〔研究の目的〕サラセミアはグロビン遺伝子の変異によってα鎖、β鎖のいずれか(または両方)が欠失あるいは合成低下する遺伝性のヘモグロビン異常症である。本症は東南アジアに多く、特にタイ国ではαサラセミアが出生児の20ー30%、βサラセミア/HbEはこれより多く、地域によっては全人口の約70%にも認められる。本症で最も多い、また重篤に臨床症状は貧血(ヘモグロビンの減少)である。しかし、その症状の軽重に個人差があり、単純にグロビン遺伝子の変異型だけで説明できないことが次第に明らかになってきた。本研究は、上記症状の軽重(表現型)とグロビン遺伝子の変異の関連を詳しく調査するとともに、赤血球内のプロテオリシス(蛋白質分解)酵素系、特にサラセミア血中で高くなるCa^<2+>に依存性のプロテア-ゼ(カルパイン)の活性変動を追究することにより、予後判定ないし治療指針を得るための検査診断法を見い出すことを目的とした。 〔研究方法と体制〕上記の目的の中、グロビン遺伝子の解析と試料の提供をタイ国側研究者が担当し、プロテア-ゼの測定を日本側研究者が担当した。また、試料や試薬の輸送、情報交換、研究打合せ、さらに技術修得の目的で、両方向ヘ研究者が頻回に出向き、国際学術(共同)研究の実をあげることに努めた。 〔研究の成果〕1.サラセミアにおける遺伝子型と表現型の解離の確認ー調査した数百例のβサラセミア/HbE患者の分析から、同じ変異をもつ患者間でも、症状(特にヘモグロビン含量)に大きな個人差があることを確認した。 2.遺伝子型と表現型の解離要因の解析ー次に、上記の差異を生ぜしめる要因を種々検討した結果、次の3つが浮かび上がってきた。(1)αサラセミア遺伝子とβサラセミア遺伝子の相互作用ーHb ConstantSpringを含むαサラセミア遺伝子を併有するβサラセミア患者は、併有しない患者よりも症状が軽かった。(2)胎児ヘモグロビン(HbF)の遺伝子構造ーβサラセミアの軽症例と重症例の間でHbFの含量に有意な差は認められなかったが、制限酵素XmuI(HbFを構成すグロビンの1つ^Gγの遺伝子の上流158番目のヌクレオチドに切断点をもつ)によるβグロビン遺伝子群の解析から、この制限部位が+/+の患者は+/-や-/-の患者よりヘモグロビン含量が有意に高く、軽症の例が多かった。(3)プロテア-ゼ活性ーβサラセミアの軽症例と重症例の間で、赤血球中のカルパインとその内因性インヒビタ-(カルパスタチン)の活性レベルには有意な差が認められなかったが、両者とも健常者の赤血球中より高い傾向が見られ、異常ヘモグロビンの分解にμMレベルのCa^<2+>に依存するプロテア-ゼが関与するという報告と考え合わせ、サラセミア血中における蛋白質代謝へのカルパインの関与が予想された。 3.サラセミア赤血球の膜蛋白質の解析ーサラセミア患者の赤血球で、膜の蛋白質アンキリンやスペクトリンの部分分解および膜からの遊離があることを見い出した。これは、in vitroで細胞膜をカルパイン処理した場合の変化に似ており、サラセミア血中での高Ca^<2+>濃度やCa^<2+>によるカルパインの膜への結合の事実を考え合わせると、カルパインが細胞質でのグロビン分解だけでなく、膜局所において裏打ち蛋白質群の異常に分解にも関与する可能性が考えられた。 〔考察と反省〕以上のように、日本・タイ両国の研究者の緊密な協同研究により、世界の(特にアジアの)難病サラセミアに関するさまざまな貴重な知見が得られた。特に本疾患の予後を考える上で、グロビンのα鎖とβ鎖の(遺伝子レベルでの?)相互作用や、プロテオリシス、特にカルパイン系の動きに注意すべき点が示喚された意義は大きく、今後の研究に期するところ大である。
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