研究課題/領域番号 |
63044083
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
野村 春治 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (10026073)
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研究分担者 |
WU W.L. アメリカ合衆国国立標準局, 高分子部門, 研究員
HAN C.C. アメリカ合衆国国立標準局, 高分子部門, 班長
MUTHUKUMAR M マサチューセッツ大学, 高分子研究所, 教授
STEIN R.S. マサチューセッツ大学, 高分子研究所, 所長
トランコン クイー 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (50188827)
矢野 興紀 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (00010942)
柴山 充弘 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (00175390)
WU Wen-li National Institute of Standards and Technology
HAN Charles C. National Institute of Standards and Technology
TRAN-CONG Qui Kyoto Institute of Technology
STEIN Richard S. University of Massachusetts at Amherst
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1990年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | ゲル / ポリビニルアルコ-ル / ゾル-ゲル転移 / フラクタル / 強制レ-リ散乱 / 高分子網目 / 二様高分子網目 |
研究概要 |
A.ポリビニルアルコ-ル(PVA)の小角中性子散乱(SANS)実験 硼酸イオンを含むPVA水溶液のゾル-ゲル転移前後の小角中性子散乱実験を行い、濃度揺らぎの空間的広がりを示す相関長の温度および濃度依存性について系統的な実験を行った。その結果、ゲル状態では相関長ξは110A^^゚でほぼ一定であるが、温度の上昇に伴って系がゾル化すると次第に減少することが認められた。またゲル状態における実測散乱強度関数I(q)(qは散乱ベクトルの絶対値)は強度をI(q)/Cξ^3で、qをqξで規格化することにより普遍関数化できることを示した。ここでCはPVA濃度である。これよりゲルの構造は、互いに空間相関のない大きさξ程度のクラスタ-が密に集合し、そのクラスタ-内ではフラクタル次 元D<3)をもつ枝別れ分子として記述できることを示した。またPVAの固相押しだしフィルムでは延伸倍率が約5倍程度までPVA分子がアフィン的に延伸されていることが認められた。 B.PVAー硼酸イオン水溶液の相分離挙動とゾル-ゲル転移 毛細管粘度計によるPVAー硼酸イオン水溶液の粘度測定と相分離挙動の観察より、孤立分子鎖の広がりとゲル化の前駆現象および相の安定性の研究を行った。その結果、(1)あるPVA濃度(C*;分子が絡み合いを始める濃度)以上で硼酸濃度の上昇とともに透明ー白濁ー透明転移が見られること、(2)極限粘度は硼酸濃度の上昇とともに一旦減少し、その後上昇すること、(3)PVA濃度が充分高いときには、系が白濁(相分離)する事なく可逆的なゾル-ゲル転移が観察されることなどがわかった。これらは、すべてPVA分子と硼酸イオンとの化学平衡、PVA分子鎖に結合した硼酸イオン間の静電相互作用、およびPVAと溶媒間の相互作用により理論的に説明されることを示した。 C.強制レ-リ-散乱法(FRS)による拡散測定 高分子物理ゲルの形成機構の動力学を明らかにするため、強制Rayleigh散乱法(FRS)、偏光解消法および超音波緩和法を用い、Poly(alkyl methacrylate)およびPoly(2ーhydroxyethyl methacrylate)(PHEMA)の一級アルコ-ル溶液について検討した。得られた結果は次の通りである: 1)Poly(butyl methacrylate)の誘導体(poly(nーbutyl methacrylate)PnBMA,poly(isoーbutyl methacrylate)PiBMAおよびpoly(tertーbutyl methacrylate)PtBMA)の2ーpropanol溶液は室温近傍では、そのゲル化現象は強く側鎖の構造に強く依存することがわかった。立体障害の大きいPtBMAの場合では、相分離が起こる温度領域まで溶液を冷却しても、ゲル化しないのに対して、PiBMAやPnBMAの溶液が安定なゲルを形成した。 2)一方では、Poly(2ーhydroxyethyl methacrylate)(PHEMA)の2ーbutanol溶液のゲル化過程を蛍光偏光解消法によって追跡した結果、試験管傾法で観測されたゾル-ゲル転移温度付近の領域において、PHEMA鎖にラベルしたアントラセンの回転緩和時間の発散が見られた。水素結合の切断試薬として知られているformamideを約1wt%の濃度で溶液に展開した場合、ゾル-ゲル転移が消減したことが観測された。これらの結果はformamideの存在下での音速の増大と吸収係数の低下の結果と定性的に一致している。 D.二様分子量分布をもつ高分子網目のシミュレ-ション 複分散高分子網目の物理的性質とその局所構造との関係を解明するために、2次元正方格子および3次元正方格子上の複分散網目をコンピュ-タ-シミュレ-ションにより作成し、それらの統計的解析を行った。その結果、架橋点の官能性の大小は網目構造に大きく影響すること、モデル複分散網目は多くの網目欠陥を持ち、実際の架橋ゴムの網目構造の種々の特微を再現していることが、確認された。
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