研究課題/領域番号 |
63044097
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今村 詮 広島大学, 理学部, 教授 (70076991)
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研究分担者 |
S.H. Bauer Cornell Univ., Department of Chemistry, 教授
R. Hoffmann Cornell Univ., Department of Chemistry, 教授
薮下 聡 広島大学, 理学部, 助手 (50210315)
大作 勝 広島大学, 理学部, 助手 (70033884)
斉藤 昊 広島大学, 理学部, 助教授 (00033853)
HOFFMANN R. Cornell Univ., Department of Chemistry, Professor
BAUER S.H. Cornell Univ., Department of Chemistry, Professor
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 電子状態 / 遷移状態 / 反応経路 / Ab-initio法 / 拡張ヒュッケル法 / Through Space@Bond相互作用 / 軌道対称性 / Orbital Symmetry |
研究概要 |
[総括] 本研究は、気相反応機構を理論と実験を組み合わせて解明しようと試みている。そのために、コ-ネル大学の著名なHoffmann教授およびBauer教授と協同研究、あるいは意見交換をおこなった。Woodward-Hoffmann則で化学反応の分野で不動の地位を築いたHoffmann教授との意見交換によって、今後の化学反応の理論的研究の方向付けがなされ、さらにこの分野の最近の研究情報が得られ、われわれの研究室の化学反応理論の展開に大きく寄与している。また、衝撃波管およびレ-ザ-を用いた気相反応の実験的研究で、常に世界をリ-ドしているBauer教授との協同研究において、Bauer教授のこれまでの経験にもとづく鋭い洞察力によって考えられた実験計画は非常に興味深いものである。しかも、この実験計画は理論的な考察を加えることによって分子論的に議論することが可能となっている。 [理論研究] 反応経路(IRC)をAb-initio法で求めるプログラム、及びその経路上でThrough Space/Bond相互作用エネルギ-を求めるプログラムとも完成した。反応経路プログラムは、経路上の各点でエネルギ-と核座標に関するエネルギ-勾配を必要とするため、現在のところ小さな分子への応用に限られる。また理論計算として、Hoffmannグル-プが拡張ヒュッケル法で調べているHIn-InH及びHTl-TlH系を相対論的有効ポテンシャルを用いて調べた。SCF計算によると、In系では二つのH原子がトランス型に結合した構造が安定であるが、Tl系では使用する基底関数依存性が強く、最良のものでは二つのTlHに解離することが判った。現在その原因を解明中である。また今後、スピン軌道相互作用の効果、特にS-Pの混成へ及ぼす影響を調べる予定である。 [実験研究] 単分子反応の速度理論の問題点解明のため実験による検証を試みた。本実験の目的は分子内に他より極端に弱い結合がある場合に、単分子反応がはたして分子内エネルギ-の統計的分布が成立した状態で進行するかどうかを調べることにある。今回その例として、ジメチルエ-テルと三フッ化ホウ素の錯体を炭酸ガスパルスレ-ザ-を照射し解離平衡の緩和速度を温度を変えて測定した。この結果によると、この錯体の分解速度は分子内の全ての自由度にエネルギ-が等分配していると仮定したRRKM理論にしたがうことが判った。 これまでの実験で、衝撃波を用いて比較的大きい分子を分解させると生じたフラグメント分子は化学的に励起した状態にある。この励起分子が更に分解する場合、その遷移状態の構造と第一段階の遷移状態との間になんらかの関連性があるような結果をえた。今回エチルビニ-ルエ-テルの熱分解で生じるアセトアルデヒドの挙動を調べた。その結果、基底のアセトアルデヒドが熱分解する速度に比べてエ-テルから生じたアルデヒドの分解は極めて速いことが確認された。この事実は、第一段階の遷移状態の構造の分子軌道計算によってうまく説明することができた。 以上、理論・実験の両面で、Hoffmann教授、Bauer教授との意見交換・協同研究は、非常に刺激的であり、研究の新しい方向付けに対する重要な示唆を与えるものであった。さらに、協同研究の機会にアメリカで開催された気相反応の実験的研究や理論的研究のシンポジウムに出席する機会もあり、多くの世界的なレべルでの研究の流れを把握することができた。総合すると、本国際学術研究は、大変稔りの多いものであり、今後のわれわれの研究の発展に対する重要な一里塚になったと確信している。
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