研究課題/領域番号 |
63044100
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 治 広島大学, 医学部, 教授 (30012595)
|
研究分担者 |
近藤 勝彦 広島大学, 理学部, 教授 (00110817)
林 七雄 広島大学, 総合科学部, 助教授 (60033841)
古前 恒 広島大学, 総合科学部, 教授 (40034532)
大谷 和弘 広島大学, 医学部, 助手 (20203820)
笠井 良次 広島大学, 医学部, 助教授 (10034018)
|
研究期間 (年度) |
1988 – 1989
|
研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
|
配分額 *注記 |
14,000千円 (直接経費: 14,000千円)
1989年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1988年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
|
キーワード | 化学分類 / 種生物学 / 雲南の植物 / ニンジン属植物 / サイコ属植物 / ウリ科植物 / ツバキ属植物 / カンアオイ属植物 |
研究概要 |
中国雲南省の植物の研究は、日本と東ヒマラヤの植物の関連性を論じる上で極めて重要な位置を占めている。本国際学術研究では、中国科学院昆明植物研究所との密接な協力のもとに、相互に派遣、招へい、共同研究を行い、本地域の植物の化学分類学的及び種生物学的研究を長年の蓄積の上にたって遂行し、下記の成果をあげた。 ウコギ科人参属植物は北半球、ヒマラヤ、中国、日本及び北米に分布する。これらの地下部のサポニン組成を比較検討し、その地理的分布との関係を考察した。多くの本属植物はオレアノ-ル酸のグルクロニドサポニンと共に、本属に特徴的なダマラン系サポニンを含む。その中でも、東ヒマラヤ、中国雲南及び日本の南九州の種の間に類似性が認められた(日本ー雲南ーヒマラヤ要素)。しかし、日本の南九州以外の地域に野生している竹節人参は形態学的には中国の竹節三七及び南九州の同種植物(薩摩人参)とは区別できないが、ダマラン系サポニン組成においては明瞭に異なり、人参との共通性が殆どない。この竹節人参が本属植物の中で特異な化学種であることを組織培養の応用で確認した。又、本属植物の分布の西限と考えられる中央ヒマラヤの植物及び中国の三七人参はオレアノ-ル酸サポニンを全く含まないこと、分布の南限の屏辺三七はダマラン系サポニンを含まないことなど、サポニン組成と分布との間に重要な相関性のあることが明らかにされた。 雲南産セリ科サイコ(柴胡)属植物、竹叶柴胡、窄竹叶柴胡及び麗江柴胡中の生理活性サイコサポニンーa,dの含有量を日本産及び韓国産柴胡、中国北部柴胡と比較分析した。その結果、これらの雲南産柴胡特に麗江柴胡は極めて高品質であることが明らかにされた。その生産的栽培が期待される。 雲南、西双版納産のウリ科翅子羅漢果の甘味ククルビタン系配糖体の分離、構造研究を行い、広西産の羅漢果のそれと比較して、略同様であることを明らかにした。これらの甘味質と構造との関係を考察し、甘味剤としての可能性を検討した。更に、本科の各種雪胆属植物の配糖体成分の検討をも行った。この研究で、本属植物の中には、肉花雪胆や藤三七雪胆のようにククルビタン配糖体を主として含むグル-プと、羅鍋底、中華雪胆、馬胴鈴雪胆などオレアン系サポニンを主として含むグル-プと、配糖体含量の少ないグル-プのあることが明らかにされ、その形態的分類と化学分類との関係についての重要な知見を得た。又、五叶赤爬が単一のオレンナン系サポニンを大量に含むことも明らかにした。 中国産ツバキ科ツバキ属植物の25サイトタイプ(分類群)について染色体数及び核形態を同定した。Chang、Bartholomewがあげた本属200種の中で、62種、9変種、1品種、11栽培品種の染色体数が明らかにされた。二倍体は46種、四倍体は4種、六倍体は4種、八倍体は1種あった。以上に1978年以前の報告を加えると、現在までに全種の39%、中国種の40.6%の染色体が検討されたことになった。13種に種内倍数性が認められた。体細胞の核形態は、観察した全種に共通して、球形前染色体静止期染色体、介在型前期染色体、漸変型中期核型を示した。核型の基本、相関が中部動原体型染色体に認められ、8の倍数関係にあった。 雲南産のウマノスズクサ科カンアオイ属、フタバアオイ属の精油中のフェニプロパノイド系成分のテルペン系成分をGCーMSにより検討し、中国の他の地域及び台湾、日本の類縁植物の成分と比較した。その結果、これらの地域の植物の成分に密接な関連があることが明確にされ、カンアオイの中国から日本への伝播経路として、雲南省ー湖南省ー台湾ー日本西表島ー沖繩本島ー九州ー本州のル-トが推定された。これは日本ー雲南ーヒマラヤ要素に関して重要な知見と考えられる。 以上のように、当初の研究目標は殆ど達成されたものと考えられる。
|