高分解能電子顕微鏡による歯科用合金の相変態に関する研究

• 研究課題/領域番号: 63044111
• 研究種目: 海外学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 安田 克廣 長崎大学, 歯学部, 教授 (50013884)
• 研究分担者: GUSTAAF VAN アントワープ大学, 超高圧電子顕微鏡研究室, 教授 ; JOSEPH VAN L アントワープ大学, 超高圧電子顕微鏡研究室, 教授 ; SEVERIN AMEL アントワープ大学, 超高圧電子顕微鏡研究室, 教授 ; 中川 雅晴 九州大学, 歯学部, 助手 (80172279) ; 有働 公一 長崎大学, 歯学部, 助手 (60145266) ; AMELINCKX Severin Professor, Laboratory of Electron Microscopy for Materials Research, University ; VAN LANDUYT Joseph Professor, Laboratory of Electron Microscopy for Materials Research, University ; VAN TENDELOO Gustaaf Professor, Laboratory of Electron Microscopy for Materials Research, University
• 研究期間 (年度): 1988
• 研究課題ステータス: 完了 (1988年度)
• 配分額: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円); 1988年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
• キーワード: 相変態 時効硬化 / 歯科用金合金 / X線回折 / 電子顕微鏡 / 機械的性質

研究概要

本研究の最終的な目標は合金結晶の微細構造と機械的性質、電気化学的性質、生物学的因子等との関係を解明することによって構成した合金設計の原理に基づいて歯科用合金を開発することにある。何故ならば、これらの因子は結晶粒界、積層欠陥、双晶境界、逆位相境界などの固相内界面によって支配されるからである。本研究の具体的な研究計画は次の4点である。(1)AuCuーAgおよび(Ag_<0.5>Cu_<0.5>)_XーAu_<1ーX>断面のコヒーレント相図を理論計算および実験結果から組立てること、(2)AuCuーAg擬二元系合金の長周期逆位相境界構造の高分解能電子顕微観察、(3)AuCuー3at.%Ag合金中の双晶境界の構造解析、(4)高分解能電子顕微鏡による市販歯科用金合金の時効硬化機構の解明である。得られた結果は以下の通りである。(1)AuCuーAg擬二元系合金についてAg濃度に依存して3通りの相変態様式が見出された。すなわち、(i)固溶限の外側の組成を有する合金に見られる不規則固溶体面心立方晶α_0相からAuCu規則化が生ずる相変態で、高温側からα_0相とAuCuII規則格子相の共存する領域、AuCuII規則相単相領域、AuCuIおよびAuCuII規則格子相の共存する領域、AuCuI規則相単相領域であり、AuCuー3at.%Ag合金では規則化の臨界温度653K以下の温度領域で生じた。(ii)固溶限とスピノーダル線の間の組成を有する合金に生ずる二相分離と規則化で、この相変態は核生成・成長によって支配され、高温側からCuーrichα_1相とAgーrichα_2相を形成する二相分離の領域、2つの不規則相と1つの規則相α_1+α_2+AuCuII共存領域、1つの規則相と1つの不規則相が共存するAuCuII+α_2の領域、2つの規則相と1つの不規則相が共存するAuCuI+AuCuII+α_2の領域、そして1つの規則相と1つの不規則相が共存するAuCuI+α_2の領域から成っていた。(iii)スピノーダル線の内側の組成を有する合金に起こる規則化とスピノーダル分解による二重機構で、この組成範囲の合金の相変態速度は(ii)の組成範囲の合金のそれより大であり、共存する相の種類は微細組織の相違を除けば本質的に同一であった。相境界の温度および組成依存性の決定に関しての研究は継続中である。(2)AuCuー3at.%Ag,AuCuー6at.%Ag、AuCuー9at.%Ag、AuCuー14at.%Ag合金の異相界面、双晶界面、長周期逆位相境界の構造を解析するために高分解能電子顕微鏡観察を行った。時効によって導入される微細構造は合金中のAg濃度に依存して全く異なっていた。すなわち、固溶限の外側の組成を有する合金では不規則固溶体からAuCu規則化のみが生じ、固溶限とスピノーダル線の間の組成を有する合金では相変態は核生成・成長過程であり、スピノーダル線の内側の組成を有する合金では規則化とスピノーダル分解が競合して起こった。AuCuー9at.%Ag合金を613Kで100ks時効した場合、AuCuII規則相と面心立方晶不規則固溶体α_2相から成る特徴的なモザイク組織が高分解能電子顕微鏡により観察された。(3)AuーCuーAg三元系コヒーレント相図を決定するに際して、相律から予想されるようにAuCuII長周期規則格子相と共存する面心立方晶不規則固溶相を同定する必要が生じた。643Kにおいて100ks時効したAuCuー3at.%AgについてAuCuII規則格子相と共存する不規則面心立方相を同定するために高分解能電子顕微鏡観察を行った。薄板状の双晶の先端付近に相当量の弾性ひずみを伴った三角形の領域が形成され、原子配列の幾何学的特徴からこの領域が不規則相と判断された。(4)Auー5wt.%Ptー3wt.%Pdー6wt.%Agー15wt.%Cuー3wt.%Znの組成を有する市販歯科用合金の時効硬化機構を解明するために、電気抵抗測定、硬さ試験、X線回折、電子顕微鏡観察を行った。低温における時効硬化は微細な板状のAuCuI型規則格子相の核生成によって生じ、この規則相の成長速度は極めて低いのが特徴であった。一方、高温における時効硬化は交互する粗大な板状のAuCuI規則相の形成によって生じ

研究成果

• [文献書誌] K.Yasuda;G.Van Tendeloo;J.Van Landuyt;S.Amelinckx: Journal of Dental Research. 65. 1179-1185 (1986)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Yasuda;M.Nakagawa;G.Van Tendeloo;S.Amelinckx: Journal of Less-Common Metals. 135. 169-183 (1987)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Yasuda: Gold Bulletin. 20. 90-103 (1987)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Nakagawa;K.Yasuda: Journal of Less-Common Metals. 138. 95-106 (1988)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Nakagawa;K.Yasuda: Physica Status Solidi(a). 107. 709-717 (1988)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] M.Nakagawa;K.Yasuda: Journal of Materials Science. 23. 2975-2982 (1988)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 安田克廣,有働公一,中川雅晴,堂山晶男,矢部正也 編: "金属間化合物データハンドブック" 株式会社 サイエンスフォーラム, 451 (1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K.Yasuda;D.F.Williams ed.: "Concise Encyclopeadia of Medical and Dental Materials" Pergamon Press, 400 (1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] K. Yasuda; G. Van Tendeloo; J. Van Landuyt; S. Amelinckx: "High-resolution Electron Microscopic Study of Age-hardening in a Commercial Dental Gold Alloy" Journal of Dental Research. 65. 1179-1185 (1986)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Yasuda; M. Nakagawa; G. Van Tendeloo; S. Amelinckx: "A High Resolution Electron Microscopy Study of Pseudobinary AuCu-6at.%Ag Alloy" Journal of Less-Common Metals. 135. 169-183 (1987)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Yasuda: "Age Hardening and Related Phase Transformations in Dental Gold Alloys" Gold Bulletin. 20. 90-103 (1987)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Nakagawa; K. Yasuda: "A Coherent Phase Diagram of the Au_X (Ag0.24Cu0.76)(Ag0.24Cu0.76)_<1-X> Section of the Au-Cu-Ag Ternary System" Journal of Less-Common Metals. 138. 95-106 (1988)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Nakagawa; K. Yasuda: "Phase Changes and Structural Features of Cu_3Au II Gold-Copper-Silver Ternary Alloy during Isothermal Ageing" Physica Status Solidi (a). 107. 709-717 (1988)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M. Nakagawa; K. Yasuda: "Age-hardening and the Associated Phase Transformation in an Au-55.2at.%Cu-17.4at.%Ag Ternary Alloy" Journal of Materials Science. 23. 2975-2982 (1988)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Yaduda; K. Udoh; M. Nakagawa (ed., by M. Doyama and M. Yabe): A Data Handbook of Intermetallic Compounds. Science Forum, 451 (1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] K. Yasuda (ed., by D.F. Williams): Concise Encyclopeadia of Medical and Dental Materials. Pergamon Press, 400 (to be published June, 1989)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より