研究分担者 |
ブロック フィリップ ハ゜リ大学, ジャクモノ研究所, 助手
ロビン アリーヌ ハ゜リ大学, ジャクモノ研究所, 講師
ジョスリン ダニエル ハ゜リ大学, ジャクモノ研究所, 講師
リーバード ジャンクロー ハ゜リ大学, ジャクモノ研究所, 講師
ジャフェ アリーヌ ハ゜リ大学, ジャクモノ研究所, 助教授
ダリ リチャード ハ゜リ大学, ジャクモノ研究所, 教授
仁木 宏典 熊本大学, 医学部, 助手 (70208122)
小椋 光 熊本大学, 医学部, 助教授 (00158825)
BOULOC Philippe Jaques Monod Institute, Instructor
ROBIN Aline Jaques Monod Institute, Lecturer
JOSELEAN Daniele Jaques Menod Institute, Lecturer
LIEBARD Jean-Claude Jaques Monod Institute, Lecturer
DARI Richard Jaques Monod Institute, Professor
JAFFE Aline Jaques Monod Institute, Professor
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配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1989年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1988年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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研究概要 |
原核生物大腸菌の染色体分配機構と細胞分裂調節機構についてフランス第7大学ジャック・モノ研 R.D'Ari教授のグル-プと3年間にわたって共同研究を実施した。 染色体の分配機構の研究はそれまで行ってきたミニFプラスミドの分配機構の研究成果を生かし、無核細胞を放出する変異株を容易に同定することで可能となった。これにより無核細胞を放出する非致死の変異株を多数分離することができた。本研究では特に興味深い性質を示した二つの変異株について解析を行うとともに、野生型細胞における染色体のポジショニングについても解析し、染色体の分配機構について重要な知見を得た。 まず染色体のポジショニングについては、染色体の複製終結後娘染色体が細胞長の1/4の位置にすみやかにポジショニングすることを発見し、このポジショニングには複製後におこる新たなタンパク合成が必要であることを示した。このポジショニングは細胞の伸長やDNAジャイレ-スの関与は必要なく、複製した染色体の物理的分離の後に未知のタンパクの働きにより、二つの娘染色体が能動的に1/4の位置に移動する分配機構が存在することを示唆した。そこである頻度で無核細胞を放出するが致死とはならない新しいタイプの変異株を多数分離し、解析を行った。このうちmukAと名付けた変異株は核のポジショニングに異常をきたし不規則な分布を示し集団中に3%程の無核細胞を放出したが、DNA複製や細胞分裂は全く正常に進行することが分った。mukA遺伝子をクロ-ニングしたところ、この遺伝子はtolCと呼ばれる膜タンパクをコ-ドする遺伝子と同一であることが分り、報告した。既に発表されたtolC遺伝子の塩基配列に数ヶ所の誤りがあることを見つけたのでこれも報告した。 次に別のタイプのmuk変異株(mukB)を解析したところ、mukB変異株は低温ではmukA変異株と同様の分配異常を示したが、高温では細胞の伸長と染色体の分配異常が現れ、致死となることが分った。mukB遺伝子は染色体上21分に位置する未知の遺伝子であった。クロ-ニングと塩基配列の決定により、MukBタンパクは分子量177kDaのタンパクであることが判明し、頭部にヌクレオチド結合ドメインを有し、中央部はコイルドコイル領域、尾部にCys,Arg,Lysに富むドメインを持つことが分った。全体的特徴はミオシンやキネシン等と似ており、原核生物では初めての駆動力発動酵素の可能性が強く示唆された。アミノ酸配列上でもネズミの微小管結合タンパクの一つであるダイナミン(D100)と有意な相同性を示した。現在MukBタンパクを精製し、生化学的解析を行っている。mukB変異株の高温感受性を抑制する変異株を多数分離し、それらの抑制変異遺伝子の解析を進めている。またmukA遺伝子の近傍に染色体の分配に関与する新しいトポイメラ-ゼtopo IV のサブユニットをコ-ドするparE遺伝子を発見した。 細胞分裂の調節機構に関しては、隔壁形成の位置決定に関わる min遺伝子群について解析するとともに、細胞の形態形成にあずかるpbpA,rodA遺伝子が細胞分裂においても重要な役割を持つことを明らかにした。また隔壁形成酵素ペニシリン結合タンパク3(PBP3)の膜画分量が減少し、致死となるftsH変異株を解析し、PBP3が細胞質膜に組込まれる過程に欠損がある事を明らかにした。またPBP3以外にもftsH変異によって影響を受ける細胞分裂に必須なタンパクが存在することを明らかにした。ftsH遺伝子の構造を決定し、FtsHタンパクが真核細胞で発見された一群の ATPア-ゼと高い相同性を有する膜タンパクであることを明らかにした。このグル-プに属するタンパクの中に真核生物のタンパク輸送(小胞体経路)に必須のタンパクが知られておりFtsHタンパクはPBP3を含む特定の膜タンパクの輸送に働くことが強く示唆された。 3年間の共同研究は円滑かつ有効に進められ上記のような多大な成果を上げることができた。期間中、小椋と仁木をフランスに派遣し、逆にA.JaffeとP.Boulocを日本に招聘し、それぞれ数ヶ月間滞在して共同研究を推進した。本研究の成果は多数の論文として報告するとともに、平賀、小椋、A・Jaffeがアメリカ合衆国およびフランスで行われた国際集会において発表した。
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