研究課題/領域番号 |
63044114
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大分医科大学 |
研究代表者 |
桑野 信彦 大分医科大学, 医学部, 教授 (80037431)
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研究分担者 |
SCHLESSINGER デビド ワシントン大学, 医学部, 教授
KRIEGER Mont マサチューセッツ工科大学, 準教授
MERKLE Rober ジョージア大学, 炭水化物研究所, 主任研究員
CUMMINGS Ric ジョージア大学, 準教授
小野 真弓 大分医科大学, 医学部, 助手 (80128347)
河野 公俊 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00153479)
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研究期間 (年度) |
1989 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
4,900千円 (直接経費: 4,900千円)
1990年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1989年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 低比重リポ蛋白(LDL) / 低比重リポ蛋白(LDL)受容体 / 家族性高コレステロ-ル血症 / 受容体変異 / 体細胞遺伝変異 / ゴルジ装置 / Oー糖鎖構造 / コレステロ-ル代謝調節 |
研究概要 |
低比重リポタンパク質(LDL)受容体を媒介にしてLDLは通常血中から細胞内へ取り込まれ、ライソソ-ム内で分解されてコレステロ-ルが遊離してくる。その結果、コレステロ-ルの細胞内濃度が上昇するとLDL受容体合成やコレステロ-ル合成経路の律速酵素である3ーヒドロキシー3ーメチルグルタリルCoA(HMGーCoA)還元酵素の活性を抑制調節する。従ってLDL受容体の機能は血中コレステロ-ルのレベルを制御する上で極めて重要である。実際、LDL受容体経路による、LDLの細胞内取り込みの異常が遺伝性家族性高脂血症(FH)をひきおこすことはよく知られている。本研究では、我々はLDL受容体の新しいタイプの突然変異株を単離して、その変異部位を同定して、新しい高脂血症疾病のモデル細胞を提唱することにした。特にゴルジ装置が受容体修飾・成熟の場であることを考える時、このゴルジの変化した新しい疾病モデルは医学生物学の分野にも貢献する所は大きい。 我々は2つの異なる薬剤に対する耐性変異株としてLDL受容体の体細胞変異株を単離した。すなわち、1つの薬剤はモネンシンであり、もう1つの薬剤はコンパクチンである。モネンシンはNa^+/K^+イオノホア抗生物質であり、ゴルジ装置に特異的に働き、形態変化を生じる。モネンシン耐性変異株を単離することができればゴルジ領域の変異株を期待できる。我々はCHO細胞から変異剤処理してモネンシン耐性株Mon^rー31を単離した。さらにHMGーCoA還元酵素の阻害剤であるコンパクチンに対する耐性株を単離できればHMGーCoA還元酵素及び、LDL受容体の変異株が期待できる。事実、コンパクチン耐性で選択することによって、我々は、LDL受容体変異株を単離した。我々の研究室で単離したモネンシン耐性株Mon^rー31とコンパクチン耐性株MFー2株との相補性テストから、2つの独立に単離した変異株は1つのInt遺伝子に生じた変異であることが判明した。さらに、米国マサチュ-セッツ工科大学のKrieger博士の協力をえて、彼らの樹立した4つの相補性グル-プ(1dl A,B,C 及びD)のLDL受容体変異株との細胞融合テストの結果、Int変異は全く新しい相補性グル-プに分類されることが判明した。現在までにこのInt変異株の性質として、Int変異株は親株に比べ、(1)LDLの細胞表層への結合活性や、細胞内とりこみや崩壊活性が著明に低下している。(2)酢酸からのコレステロ-ル合成や、HMGーCoA還元酵素活性が著明に上昇している。(3)LDL受容体の合成、成熟過程において未熟型受容体の分子量の差はみられないが、成熟型において5000ダルトン近い分子量の差がみられた。(4)LDL受容体成熟型の分子量の差はツニカマイシンやシアリダ-ゼ処理では消失せずに、Oーグリカナ-ゼ処理によって消失した。この結果はLDL受容体のOー糖鎖に変化が生じていることを示している。 そこで、米国ジョ-ジア大学のCummings及びMerkle博士らの協力をえて、LDL受容体のOー糖鎖の変化が生じている部位を明らかにすることにした。そのために、 ^3Hー糖前駆体を用いて、標識後これらの変異株のLDL受容体のOー糖鎖の構造を親株と対比させた。その結果、モネンシン耐性株では、Oー糖鎖が数本欠失していた。更に、DavisらのOー糖鎖集合ドメインを欠失させたヒトLDL受容体のcDNA並びに正常ヒトLDL受容体cDNAをモネンシン耐性株に導入したところ、CHO内で発現させた同受容体との分子量に差があり、その差がOーグリカナ-ゼ処理により消失することを観察した。以上の結果から、Mon^rー31やMFー2のint変異は、第1、第2ドメインの糖鎖を欠失させることが示唆された。以上、本国際学術研究により、はじめて、LDL結合ドメイン附近のOー糖鎖構造がLDL受容体の機能に必要であることを明らかにすることができた。int変異にみられるゴルジ領域の変異が、ヒトのFHなどにみられるか否か、さらに、同遺伝子の単離については、今後の検討課題である。
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