研究課題/領域番号 |
63044116
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
片岡 千賀之 (1990) 鹿児島大学, 水産学部, 助教授 (00112433)
岩切 成郎 (1988-1989) 鹿児島大, 水産, 教授
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研究分担者 |
VINA Ram 南太平洋大学, 海洋資源研究所, 講師
JOHNSON Seet 南太平洋大学, 海洋資源研究会, 講師
井上 晃男 鹿児島大学, 南太平洋海域研究センター, 教授 (10034456)
岩切 成郎 鹿児島県立短期大学, 学長 (70041689)
SEETO Johnson Institute of Marine Resources, The University of the South Pacific
RAM Vina Institute of Marine Resources, The University of the South Pacific
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
19,100千円 (直接経費: 19,100千円)
1990年度: 6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
1989年度: 6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
1988年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
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キーワード | 海面占有 / 海洋資源管理 / ラグ-ンの経済 / 生業的漁労 / 伝統的生活様式 |
研究概要 |
昭和63年度から平成2年度にいたる3年間で南太平洋のバヌアツ、フィジ-、トンガ王国、西サモア、キリバス、ソロモン諸島、パプア・ニュ-ギニア、ニュ-カレドニア、ニュ-ジ-ランド、仏領ポリネシアの10ケ国・地域で調査を実施した。南太平洋諸国は島峡域であり、リ-フやマングロ-ブで囲まれたラグ-ンへの依存度が高い。地域の社会経済発展にとってラグ-ン域の活用と管理は不可欠であるが、そこは沿海住民の生産・生活空間であり、その係わり方や度合いは極めて多様である。こうした伝統的な土地(海面)占有関係、生活様式は今日急速に変容しており、いわゆる近代化の波と至るところで摩擦を生じている。南太平洋諸国が政治の季節を迎えたといわれるが、その現象形態はともあれ、民族主義、伝統主義に色どられ、土地問題が基本になっている点で共通している。近代的な法体系の整備、インフラの整備や資本・技術の導入、人口の増加と流動化、貨幣経済の浸透、外国人観光客の増加、海浜・漁業開発などは、氏族や部族を基本単位として自給体系を形成してきた伝統社会を大きく変容させている。それは土地(海面)に関する権利の二重化、自給生産の減退と商品生産への特化という跛行的利用、血縁結合および社会規範の希薄化、資源管理や相互扶助機能の低下、生活・生産単位の核家族化となって現れている。 地域ごとにラグ-ン域の社会生態と地域開発の特徴を述べよう。 バヌアツのマラクラ島では土地問題の波及は小さいが、広大なラグ-ン域では移・輸出用海産物の乱獲が進行して共同体的土地所有(マサラ制)による資源管理に課題を呈している。 フィジ-のラキラキ地区ではラグ-ン漁業を規制する慣習法・マタンガリ制度が機能しているが、個別的演場利用であるキリン草の養殖が成立し、部族総有制に波紋を役げかけている。 トンガ王国のトンガタプ島、ババウ島では慣習法が希薄で、核家族を中心として自給漁労に加えて小商品漁業が展開している。定置網での許可制、閉鎖水域での漁期制限が行われる一方、漁業法では禁止されている漁法も残っている。 西サモアでは氏族制・マタイによって土地とともにラグ-ン漁業の秩序が保たれているが、それに規制されない動力船漁業が育成されている。マタイ制度も商業的作物の導入、拡大家族の衰微で統合力が弱まっている。 キリバスのタラワ南部では人口集中がすすみ、そこでは先住民によるラグ-ン域の占有権は崩れ、自由漁場となっている。有用資源の乱獲の進行とともにキリン草やカツオ餌料用のミルク・フィッシュの養殖が展開している。 ソロモン諸島では土地(海面)の占有・利用形態は部族ごとに違っているといってよいほど多様で、マライタ島北部でも造船業や観光業に特化として自給漁労がかえって減退した集落がある一方で、新しいタイプの地域指導者によって共同体的な村作りを通して人口流出の防止を図る漁業集落もある。ニュ-ジョ-ジア島では合弁カツオ企業の進出によって労働力需給、餌料採捕にともなうラグ-ン域の利用、生活様式に大きな変化をもたらしている。 パプア・ニュ-ギニアでは氏族結合が強固であるが、ウェワク地方では人口の都市流出によって農漁業の粗放化、ラグ-ン資源の乱獲、資源管理機能の低下がみられる。 ニュ-カレドニアや仏領ポリネシアでは、ラグ-ンの発達や漁業に違いはあるものの、氏族による伝統的な土地(海面)占有・利用と行政によって推進されている個人への漁業許可制度や漁業規制との間で摩擦が生じている。観光開発が進んでいる都市部では、生業的漁業が制約され、沿海住民の観光事業へのコミット、輸入水産物の増加がみられ、生活様式も西欧化しつつある。 ニュ-ジ-ランドは南太平洋諸国と違って慣習法は埋没し、商業的漁業、養殖業の発展と生物学的基準による漁獲規制と割当て制が貫徹している。
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