研究課題/領域番号 |
63044120
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
川添 豊 名古屋市立大学, 薬学部, 教授 (80106252)
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研究分担者 |
GORROD John ロンドン大学, 薬学部, 教授
YAGI Haruhik 衛生研究所, NIDDK局(米国), 室長
高橋 和彦 名古屋市立大学, 薬学部, 助手 (40117833)
NONOYJAMA Me Tampa Bay Res. Institute, 所長
JERINA Donal 衛生研究所, NIDDK局(米国), 部長
貝谷 トヨ 名古屋市立大学, 薬学部, 講師 (10080201)
幸田 光復 名古屋市立大学, 薬学部, 助教授 (60124286)
NONOYAMA Meihan Tampa Bay Res. Inst. in Florida ; Director
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
1990年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1989年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | キノリン / 含窒素芳香族化合物 / リグニン / 代謝 / 遺伝毒性 / 発癌 / 変異原性 / エイズ |
研究概要 |
【目的】芳香族化合物は、一般に酸化的代謝を受けて解毒されるが、その際にある種のアレンオキシドが生成すると遺伝子を傷害し発癌に至る。しかし多くの医薬品や環境物質の構成分子である、窒素などを含む複素環芳香族化合物の代謝については系統的な知見は殆ど得られていない。そこで我々は、キノリンを基本骨格とするモデル化合物を選び、含窒素芳香族化合物の代謝的活性化の構造活性相関の検討を行い、その遺伝子傷害の分子機構を明らかにする事を目的として研究を開始した。本研究から期待される成果は、(1)環境物質や医薬品の基本骨格の一つである含窒素芳香族化合物の代謝的活性化、あるいは解毒機構の解明に手掛かりを与える、(2)代謝様式の構造依存性を明らかにする事によって、逆に、適当な構造修飾によって毒性発現を防止したり、薬物の代謝的排せつを遅らせ、薬物効果の持続性を高める事などが期待される。さらに本研究の後半においては、含酸素芳香族化合物であり、生物活性を有するリグニン類の代謝を含む体内動態についても検討を行った。 【結果】 1.発癌性を有するキノリン誘導体をモデル化合物として、その代謝に及ぼす種々の置換基の効果を検討した。キノリンの主代謝経路は、5,6ーエポキシド経由、あるいはNーオキシド経由でありこれらの経路はいずれも解毒機構である。これは、Jerinaらが提唱する機構と一致する。一方、我々は、発癌活性体への代謝は、ピリジン部の1,4位へ水が付加した後に生成する2,3ーエポキシド体を経由する事を提唱した。これらの作業仮説に立つと、2ー位あるいは3ー位にハロゲン原子が導入されるとその遺伝毒性を失う事が期待される。F,Cl,Br置換体を合成しその変異原性を検討した所、期待どうり全く変異原性を示さなかった。2ー位、3ー位以外の位置にハロゲン原子を導入しても遺伝毒性の消失は見られない。一方、メチル基を導入した場合には、2ー位、3ー位を含めて全べての位置異性体に変異原性が認められた。これらの知見は、発癌活性化機構として我々が提唱した2,3ーエポキシド説を強く支持するものである。更に、3ーFー置換体の解毒代謝はキノリンと同様に進行し、強い細胞毒性を示さなかった事は、適当な位置にF原子を導入する事により有用芳香族化合物の遺伝毒性を除去できる可能性を示唆するものである。本研究で提唱した代謝的活性化機構は、含窒素芳香族化合物の発癌活性化機構において一般性のある重要な仮説であり、Jerinaらのbayーregion説に加えて、今後、普遍的な法則(エナミンオキシド仮説)へと展開される事が期待される。Jerina、Yagiとの研究討論は極めて有効であったし、今後の共同研究を通じ更に大きな成果が得られるものと期待している。 2.我々は、酸素を含む複素環芳香族化合物の一種である天然あるいは合成リグニン類に抗ウイルス性、抗菌性、及び免疫賦活化能のある事を見出だした。そこで、本研究の延長線の一端として、当該リグニン類の代謝を含む体内動態についての検討を、本研究分担者であるNonoyamaらと協力して研究を展開した。木質化植物の熱水、あるいはアルカリ抽出液から得られる高分子分画に上記生物活性が認められ、更に、パルプ産業廃棄物としてのリグニンにも一部の活性があり、また、phenylpropenic acids(合成リグニン)の化学的重合体にも同様の活性が認められた。抗ウイルス活性は、リグニン骨格構造に基ずく事を明らかにし、一方、抗菌活性は寄主仲介性であり、寄主の免疫能が増強される事による事を明らかにした。抗菌活性は、リグニン構造のみならず、その骨格に結合するヘミセルロ-ズ部分も活性発現に必要である。病原性細菌をマウスに移植する2日前に、当該リグニン類を投与して置くと、発病が完全に予防できた。投与法は、静脈、皮下などが有効で、経口投与では減弱した。これは、当該リグニン類が高分子である為、消化管からの吸収が充分でなかったためと考えられる。吸収された当該リグニン類は、一過性に、肝臓、じん臓に貯留され、大部分は、尿中より排せつされる。今後、木質化分子の医薬品開発への応用研究が期待される。
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