研究課題/領域番号 |
63044128
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
野見山 一生 自治医科大学, 医学部, 教授 (80048967)
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研究分担者 |
野見山 紘子 自治医科大学, 医学部, 講師 (70049039)
加須屋 実 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (50045382)
能川 浩二 千葉大学, 医学部, 教授 (40019584)
劉 鏡愉 北京医科大学, 医学部, 教授
王 翔樸 湖南医科大学, 医学部, 教授
王 世俊 北京医科大学, 医学部, 教授
劉 世傑 北京医科大学, 公共衛生学院, 教授
WANG Xiang-pu Hunan Medical University, School of Medicine, Professor
LIU Jing-yu Beijing Medical University, School of Medicine, Professor
WANG Shi-Jie Beijing Medical University, School of Medicine, Professor
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1989年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1988年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | カドミウム / 作業環境 / 環境汚染 / 精錬工場 / 蓄電池製造 / 尿中β_2ーミクログロブリン / 腎機能異常 / 生物光的モニタリング |
研究概要 |
昭和63年度より平成2年度の3年間に調査したカドミウムにより周辺地域に環境汚染を起こしている工場とその周辺地域は4カ所で、昭和63年度は、遼寧省錦省市葫蘆島区の葫蘆島冶煉厰、平成元年度は河南省新郷市の新郷鹸化蓄電池厰、平成2年度は広東省韶関市の韶関冶煉厰、湖南省株州市の株州冶煉厰であった。 遼寧省錦省市葫蘆島区の葫蘆島冶煉厰は年間12万tの亜鉛を生産している中国一の亜鉛精錬工場で、乾式精錬をしている。工場内の気中濃度は焙焼のカドミウム濃度は2.5ー6.5mg/m^3、蒸留10.8ー23.3mg/m^3、インゴット製造2.8ー4.7mg/m^3、カドミウム精錬0.01ー0.16mg/m^3であった。日本の許容濃度は0.05mg/m^3であるから如何に高濃度の曝露があったかが分る。工場から500mの地点での気中のカドミウム濃度は0.02mg/m^3、地表の土壌中濃度は115ー202μg/g、草は196ー580μg/gであった。作業者ならびに周辺地域住民361名の健康調査を行なったところ、最も気中濃度が高かったインゴット製造部門では、尿中β_2ーミクログロブリン濃度が正常値を越え異常曝露があると考えられる(300μg/gCr以上の者)が93.3%にも及び、健康異常者(1,000μg/gCr以上のもの)が40.0%、また、腎障害者(10,000μg/gCr以上のもの)が13.3%であった。ついで、カドミウム曝露の多いカドミウム精錬部門での異常曝露者は54.5%、健康異常者が36.4%、焙焼部門での異常曝露者は45.3%、健康異常者が16.8%いた。 河南省新郷市の新郷鹸化蓄電池厰は中国有数のアルカリ蓄電池製造工場で、カドミウムインゴットから製造した酸化カドミウムを用いて大型カドミウム蓄電池などを製造したいた。工場内には局所排気装置がないために気中濃度が高かった小型カドミウム蓄電池製造過程のうち酸化カドミウムを箱に入れる作業で24.1mg/m^3、酸化カドミウム生産過程のうち粉塵カドミウムの粉を重ねたり圧縮する作業でも1.2ー2.2mg/m^3であった。工場周辺地域が住宅化してきたので、酸化カドミウム製造工程を近隣の山麓農村地帯に移転したが、こヽの周辺の土壌中カドミウムは1.1ー8.6μg/gと低かったが、小麦には200ー771μg/gと強いカドミウム汚染が認められた。作業者ならびに周辺地域住民449名の健康調査を行なったところ、最も気中濃度が高く、しかも、局所排気装置のなかった密封電池製造部門では、異常曝露者が33.3%、健康異常者が16.7%、また、カドミウム原料部門,大容量蓄電池製造部門でも、ほぼ同率の異常曝露者、健康異常者がみられた。 韶関冶煉厰は鉛の乾式精錬工場であるにも拘らず工場内の気中カドミウム濃度は低く、熔解炉0.03ー0.20mg/m^3、カドミウム精錬炉0.01ー0.08mg/m^3であった。工場周辺の空気中カドミウムは500m離れた地点で0.000ー0.030mg/m^3,土壌中カドミウムは0.4ー57μg/g、草は1ー21μg/gであった。作業者144名について健康調査を行なったところ、尿中β_2ーミクログロブリン300μg/1以上のものが20.0%、1,000μg/1以上のものが1.1%であった。 株州冶煉厰は亜鉛生産高が年間10万tの湿式精錬工場で、鉛は7万t、カドミウムは400ー500kgも生産している。以前は乾式精錬をしていたために作業者の金属曝露量は高かったと考えられるが、近年、湿式精錬に改善され、調査時点では、空気中カドミウムの高い職場は限られ、原料投入で3.7ー4.2mg/m^3、電解槽0.72ー0.95mg/m^3、カドミウムインゴット鋳造0.06mg/m^3で、他は日本の許容濃度0.05mg/m^3以下であった。排水処理施設も適切に運用されており、周辺地域の水質汚濁は防止されたいた。工場周辺の草は500m離れた地点で7ー9μg/gであった。作業者164名の健康調査を行なったところ、尿中β_2ーミクログロブリン300μg/1以上のものが46.7%、1,000μg/1以上のものが10.7%であった。 以上の調査結果から、健康影響を早期に発見するための生物学的モニタリングとして、尿中カドミウムは10μg/gCr、尿中β_2ーミクログロブリンは300および2,000μg/gCrでスクリ-ニングすると良いことが分った。
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