研究課題/領域番号 |
63044133
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
梅村 甲子郎 東邦大学, 薬学部, 教授 (60147577)
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研究分担者 |
DUNN Floyd University of Illinois, Dept. of Ellectric, Professor
梅村 晋一郎 日立製作所, 中央研究所, 主任研究員
弓田 長彦 東邦大学, 薬学部, 助手 (40191481)
西垣 隆一郎 東邦大学, 薬学部, 助教授 (30111553)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
1989年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1988年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 超音波 / ヘマトポルフィリン / 癌 / 腫瘍 / キャビティション / 活性酸素 / 一重項酸素 / 電子スピン共鳴 |
研究概要 |
超音波の抗腫瘍作用及び薬物との併用による効果増加について照射条件の検討、作用機序解明、動物治療実験を実施し次の1〜6の結果を得た。 1.超音波単独、又は薬物との併用に於る抗腫瘍効果を、in vitro腫瘍細胞浮遊液で確認した。超音波と併用することにより殺細胞効果が発現、又は増強される薬物をスクリ-ニングした結果、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、フェオフォルバイド(クロリン誘導体)、アドリアマイシン、及びFAD104(アンスラサイクリン系制癌剤)で優れた増強効果を認めた。 2.超音波の作用には物理作用と、キャビテ-ションを介して発生する活性酸素種による化学作用とがあると推定されるので、一重項酸素(^1O_2)の消去剤であるヒスチジンとス-パ-オキサイドラジカル(^-O_2)の消去剤であるス-パ-オキサイドジスムタ-ゼ(SOD)、及び水酸ラジカル(OH・)の消去剤であるマンニト-ルの添加のin vitro殺細胞作用に対する影響を、ラットascite hepatoma130(AH130)とマウスsarcoma180を用いて検討した。一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とヘマトポルフィリン、又はアドリアマイシン併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認め、殺細胞作用機序における一重項酸素の関与を確認した。この結果はJpn.J.Cancer Res.(1989)に公表した。 3.超音波照射による水溶液中での活性酸素生成をラジカル生成を指標として電子スピン共鳴(ESR)により測定した。関与する活性酸素種は使用する特異的ESR試薬、及び特異的スカベンジャ-による阻害により推定した。^1O_2により4ーoxoーTEMPOラジカルになる2、2、6、6ーtetramethylpiperidineを含む空気飽和緩衝液に超音波を照射し、20KHz、及び2MHzの周波数で^1O_2の生成と超音波強度依存性を確認した。しかし、窒素ガス飽和下では4ーoxoーTEMPOの生成は認められなかった。以上の結果から、酸素ガス由来の^1O_2生成を確認した。活性酸素スカンベジャ-を用いた阻害実験では、4ーoxoーTEMPOの生成はヒスチジン、又はSODの添加によってのみ阻害された。故に^1O_2と^ーO_2の関与が示され、一方OH・、及び過酸化水素は関与していないことが示唆された。ヘマトポルフィリン、又はアドリアマイシン共存下で超音波による4ーoxoーTEMPOラジカル生成量は増加した。この増加分に対するヒスチジンの阻害効果から^1O_2の関与が大きいことが示唆された。この結果はSofiaでのPhotodynamic therapy国際学会(1989年)で公表済みである。 4.超音波による薬物の活性化メカニズムを明らかにするために水に超音波を照射し発光スペクトルを測定し、さらに活性酸素の消去剤添加の影響を検討した。発光は、活性酸素の消去剤により影響を受けないことから、超音波による発光メカニズムとして、キャビテ-ションによりミクロ領域に生じる高温状態が考えられる。発光強度が超音波強度の二乗に比例することを認め、光の仲介によるヘマトポルフィリン励起の可能性が示された。 5.動物腫瘍治療実験では、2MHzの起音波照射が、ラットAH130腫瘍体積増加を抑制し宿主ラット生存日数を延長することを確認した。ヘマトポルフィリンを予め静脈内投与したラットでは、ヘマトポルフィリンが腫瘍内に蓄積しており、そこへ局所的に超音波を照射することにより超音波の抗腫瘍効果が増加することを確認した。またマウス固形腫瘍、sarcoma180及びcolon26を用いた実験においても超音波とヘマトポルフィリン、アドリアマイシン、又はFAD104の併用が超音波単独、又は薬物単独と比べて著しい腫瘍増殖抑制を示すことを確認した。 6.臨床使用を目的として位相差配列型(phased array)超音波照射装置を作製し、ラット肝臓を用いて深部到達性、及び集束性を確認し病理的検討を加えた。3次元的な超音波の集束部位のみに組織の壊死が認められ、集束部位以外には何らの影響も認められなかった。
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