研究課題/領域番号 |
63044135
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
志方 俊夫 日本大学, 医学部, 教授 (50009932)
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研究分担者 |
XUEYI Cao 新彊衛生防疫所, 所長
SHRESTHA S.M ネパールビール病院, 部長
GUPTA H. 全インド医科学研究所, 教授
TANDON B.N. 全インド医科学研究所, 教授
稲葉 裕 順天堂大学, 医学部, 教授 (30010094)
鈴木 高祐 日本大学, 医学部, 助教授 (00158974)
江角 真理子 日本大学, 医学部, 助教授 (60160363)
阿部 賢治 国立予防衛生研究所, 主任研究官 (60130415)
内田 俊和 日本大学, 医学部, 助教授 (80060078)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
18,000千円 (直接経費: 18,000千円)
1990年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1989年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1988年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | 非A非B型肝炎 / E型肝炎 / 感染実験 / ウイルス血症 / 診断法 / 輸入肝炎 |
研究概要 |
本研究の目的は未知の流行性の非A非B型肝炎の起因ウイルスを発見すべく、まず実験モデルを完成し、ウイルスを分離同定しようということであり、このウイルス性肝炎が主として蔓延しているインド、ネパ-ルなどの研究者と共同研究を行ってきた。そして3年の研究期間の間に実験モデルの完成、ウイルスの分離同定、ウイルス核酸のクロ-ニングに成功した。そしてこの流行性の非A非B型肝炎はE型肝炎と呼ばれることになった。次ぎのステップはこの肝炎の診断方法を開発し、血清疫学的に肝炎の分布、流行形式を明かにし、又ワクチンを開発してこの肝炎の撲滅をはかることである。 A型肝炎とB型肝炎の診断方法が確立されて、1955年12月から1956年1月にかけてニュ-デリ-で大流行した肝炎がA型ではなく別の肝炎ウイルスによることが明かにされてから、この肝炎の流行がインドのみならずビルマ、ネパ-ル、ソ連の中央アジア、中国のウイグル自治区などヒマラヤ山脈の周辺の国々に多いことが報告された。我々はインドのAllーIndia Institute of Medical Scienceとの共同研究でこの未知のウイルス性肝炎の解明に取り組んだ。そして先ず、1.実験モデルの開発を試みたのである。初めマモセットを使用したが、感染はコンスタントにおこらず、かにくいざるを使用したところ、十分なウイルスを経静脈的に接種すれば100%感染が成立することが明らかになった。又猿の糞便を用いての継代感染実験にも成功し6代までの継代を行った。6代までの継代実験では潜伏期の短縮、病型の変化などはみられなかった。2.経時的に行った肝生検及びトランスアミナ-ゼのピ-ク時に解剖した若干例の肝組織像からこの肝炎でも組織像は基本的には他のウイルス性肝炎と異ならないことを明かにした。つまり肝細胞の巣状壊死と肝小葉内及びグリッソン鞘へのリンパ球を主体にした細胞浸潤がみられ、このウイルス性肝炎の発生も恐らくウイルス自体の細胞障害性はほとんどなく、肝細胞壊死は宿主の免疫反応によることが想定された。3.感染した猿の胆汁中に大量のウイルスが排出されることを見つけ、ウイルスの精製に成功した。ウイルスの排出は初め散在性にみられるが、やがてスポンタ-ンに凝集した見られる。排出の末期にはエンプティなウイルスが増加する。4.又この精製したウイルスのRNAからλ gtllによるcDNAライブラリ-を作製し、インムノスクリ-ニング法によってウイルス核酸のクロ-ニングに成功した。現在全塩基配列の決定に努めている。5.この核酸の塩基配列でプライマ-を作製し、PCR法によりウイルス血症の期間を明かにした。即ちウイルス接種後10日目頃よりトランスアミナ-ゼのピ-ク迄ウイルス血症が証明された。6.インムノスクリ-ニング法により得られたウイルス核酸の一部で大腸菌を用いてウイルスペプタイを発現させ、これを抗原として診断の為の抗体のアッセイ系をEIA法で確立した。まだ若干特異性と感度に問題があり現在改良を進めている。しかし急性肝炎の診断には十分に使用できる。ただ流行地域の一般住民で抗体が5%しか証明されず、血清疫学的研究には使いにくい。恐らくこのペプタイドに対する抗体は肝炎が治ると比較的早く消失すると思われ別のレコンビナントペプタイドを抗原として使用することを計画中である。7.またこれら2,3のレコンビナントペプタイドをワクチンとして使用可能かどうか、かにくいざるをしようとして感染防御実験を始める予定である。8.かにくいざるの培養肝細胞他、種々の培養細胞にこのウイルスをアダプトさせる試みを行っている。これはペプタイドワクチンが有効でないときに、死菌ワクチン或は弱毒生ワクチンの開発にそなえるものである。9.抗体のアッセイ系が完成した後、インド初めビルマ、ネパ-ル、中国のウイグル自治区などで血清疫学的調査を行う。10.現在までの予備的な血清疫学的調査で日本には輸入肝炎として若干存在するものの、散発性の非A非B型肝炎のなかにも殆ど存在しないことが明らかになった。 本共同研究はE型肝炎の解明に関して、この病気は存在しないが十分な研究能力を持った日本と、この肝炎は存在するが十分な研究能力を持たないインドが共同で研究を行い大きな成果を治めたもので、日本人の海外旅行、駐在にさいしてはこの肝炎に感染する機会があり、日本の人々へもこの成果は還元されるものと考えている。
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