研究課題/領域番号 |
63044137
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
海野 福寿 明治大学, 文学部, 教授 (60061660)
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研究分担者 |
権 丙卓 嶺南大学校, 商経大学, 教授
金 敬泰 梨花女子大学校, 人文科学大学, 教授
安 乗直 ソウル大学校, 社会科学大学, 教授
村上 勝彦 東京経済大学, 経済学部, 教授 (60096451)
石井 寛治 東京大学, 経済学部, 教授 (20012122)
BYONG-JICK Ahn Department of Economics, Seoul National University
KYUNG-TAE Kim Department of History, Ewha Womans University
BOUNG-TAK Guong College of Commerce and Economics, Yeungham University
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
6,600千円 (直接経費: 6,600千円)
1990年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1989年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1988年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
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キーワード | 朝鮮総督妊 / 植民地政策 / 軍需工業 / 資本主義化 / 近代的プロレタリア-ト / 朝鮮人強制連行 / 資金循環 / 朝鮮財政 |
研究概要 |
本研究は韓国政府記録保存所所蔵の旧朝鮮総督府文書の分析を通じて、1930年から1945年に至る間の朝鮮植民地に対する経済政策およびそれに対応する経済構造の歴史的分析をこころみたものである。 対象期の政策は「農工併進政策」→「大陸前進兵站基地政策」期と通称されている。1930年世界恐怖の影響により遊休化した中小資本や満州事変で大陸進出を動機づけられた大資本による近代的工場の設立が朝鮮においても進行し、さらに日中戦争開始後は国策会社による軍需関連工業の建設が本格化した。他方、農業政策としては、恐怖回復後は農業開発と食糧徴発政策がとられ、日本帝国主義の食糧基地として収奪機能が強化された。 以上の過程は植民地における資本主義化政策であり、世界史的にも稀な例であるが、工業化と統制経済化は伝統社会としての前資本主義的社会構成の破壊をもたらす。われわれは植民地期朝鮮を「植民地・半封建社会」とし、解放後を「周辺部資本主義社会」と規定する所説を基本的に承認した上で、1930〜45年の朝鮮社会を前者から後者への過渡期(期民地資本主義社会)ととらえたい。 資本主義的工業移植過程については多くを先行研究にゆずり、権丙卓が韓国慶尚北道慶山郡に本社を置いた報国重石鉱業株式会社によるタングステン鉱業の経営実態の分析にとどめ、工業化が影響を与えた社会経済的変化の分析を中心に研究を進めた。その主な分析結果は以下のとおりである。 (1)工業政策および労働者の性格を雇用構造の面から分析した安乗直は、工業化に伴って急増した工場労働者が朝鮮全賃金労働者階級中の核心的部分に成長していったことを論証した。それは労働者の量者発展のみではなく、技術および熟練の向上という質本側面での成長を意味し、その到達水準について1941〜43年『朝鮮労働技術統計調査結果報告』に依拠して実態を明らかにし、植民地的歪曲性から免れえないとしながらも、朝鮮人労働者の近代的プロレタリア-トとしての民族主体的・自生的発展を跡づけた。 (2)海野福寿は1937年以降の労働力創出・再配置政策について分析した。日中戦争開始に伴う国家総動員体制下の労働力政策はいわゆる強制連行・強制労働として広く知られているが、旧朝鮮総督府文書によって、日本政府・朝鮮総督府の立法および動員計画策定過程を明らかにし、労働力政策が農村再編成計画と運動して行われたことを実証した。また、韓国政府が1957年に行った韓国人強制連行者名簿により、慶尚北道出身者約42.000人の実態分析を行った。 (3)農業政策の調査を分担した金敬泰は、労働力政策を契機とする原蓄の進行を生産力拡大、農地・農産物価格および流通統制政策などとの関連で考察した。とくに戦時統制政策の強力な施行は、地主・商人による旧来の収奪方式の改変を迫り、自作中堅農民を基軸とした農業開発と農村再編成計画が進行したことを指摘している。 (4)戦時期朝鮮の軍需物連産業育成に必要な資金がどこから、いかにして供給されたかを考察した石井寛治は、朝鮮総督府が必要な資金をできるだけ朝鮮内部で調達する方針を打ち出したことに着目し、資金循環構造の変容を追跡した。その結果、1943年度には全産業資金のほぼ半分が朝鮮内部で調達され、日本内地からの投資が軍需関連産業に集中しているのに対し朝鮮の投資が非計画産業に向けて傾いていく事実を明らかにした。 (5)朝鮮における生産力拡充計画、物資動員計画の財政的措置とその産業再編成への影響について分析した村上勝彦の研究は、地方財政資料が中心の旧朝鮮総督府文書からは朝鮮財政の全貌を展望することができないため、中央財政資料の収集調査を継続中である。 以上、1988〜90年度に行った研究の概要であるが、戦時期という特殊事情による資料的限界(作成資料の不足、資料の散逸、資料閲覧上の制約等)のため、なお広い範囲で補充調査を行う必要がある。しかし基本的作業を終了することができたので研究成果を刊行すべく準備している。
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