研究課題/領域番号 |
63044140
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
宮埼 瑞夫 (1989) 大阪医科大学, 薬理学教室, 教授 (10047186)
宮崎 瑞夫 大阪医科大, 医, 教授
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研究分担者 |
DZAU Victor ハーバード大学, 内科学教室, 教授
石井 権二 大阪医科大学, 薬理学教室, 助手 (50140132)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
1989年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 二腎性一クリップ型高血圧 / 血管壁レニンーアンジオテンシン系 / レニンmRNA / アンジオテンシノ-ゲンmRNA / 遺伝子発現 / Gene expression |
研究概要 |
生体の血圧調節には、交感神経系、レニンーアンジオテンシン系、心房性利尿ホルモン、バゾプレッシン、エンドセリン等の神経系や内分泌系に由来する様々な内因性の活性物質が関与している。なかでも、レニンーアンジオテンシン系は高血圧の発症維持の機序に関連してその重要性が広く認められてきた。ところが近年、この系に対しては更に新しい知見と血圧調節における新しい役割が加えられつつある。その一つは、これまでの全身循環を介しての内分泌系としてのレニンーアンジオテンシン系の他に、組織レニンーアンジオテンシン系が存在する可能性である。特に遺伝子レベルからのアプロ-チは、これまで以上に広範囲の組織にレニンーアンジオテンシン系の各種構成要素の遺伝子が発現することを明らかにした。局所レニンーアンジオテンシン系については、我々もこれまでの実験的高血圧モデル動物を用いた独自の研究から、高血圧の慢性期には血管壁のアンジオテンシン変換酵素(ACE)活性の上昇にとそれに伴う局所アンジオテンシンII産生の増加が認められ、血漿レニン(PRA)の低い高血圧にもACE阻害薬が降圧作用を示す機序として、血管壁のレニンーアンジオテンシン系が機能している可能性を唱えてきた。本研究では、レニンーアンジオテンシン系を更に明らかにする目的で、血管壁を含めた組織におけるその動態を遺伝子レベルで追跡する試みを高血圧モデルにはじめて応用した。 昭和63年度の研究の経過 高血圧モデル動物として、ウイスタ-ラットの左腎動脈を内径0.2mmのクリップを用いて狭窄し、二腎性一クリップ型高血圧モデルを日本側で作製した。術後4週を急性群、術後16週を慢性群とした。測定用の血液サンプルを採取した後、肝臓、腎臟、大動脈を含む各種の臓器を、mRNAの測定に供した。mRNAの測定は、レニン、アンジオテンシノ-ゲン(ANGーN)のcーDNAの提供と、測定技術の指導をHarvard大学V.J.Dzauから受け、米国においての測定と同時に、日本側においての測定技術の確立に努めた。 平成元年度の研究の経過 実験動物の追加と、血管壁の微量のmRNAの測定に努めた結果、大動脈の微量のANG-Nの測定にも成功した。 結果と考察 二腎性一クリップ型高血圧モデルにおいて、血圧は腎動脈狭窄直後より上昇し、以後16週間にわたって高血圧が持続した。血漿レニン濃度は4週の急性期には対照の約3倍の増加を示し、術後16週の慢性期には対照と有意差の無い低値を示した。レニン遺伝子は、狭窄側の腎臟において急性期には対照の2.6倍、慢性期には2.2倍高い発現を示した。肝臓のANG-NのmRNA量は、肝臓では慢性期に増加が認められた。脳、並びに大動脈においては急性期、慢性期のいずれにおいても対照のmRNA量との間に差を認めなかった。 以上の結果は、二腎性一クリップ型高血圧モデルにおいては、血漿レニンが正常値に復した慢性期においても、レニン、並びにANG-Nの遺伝子発現の増加が持続することを示している。また、ANG-N遺伝子の発現には臓器差が存在し、高血圧においては肝臓のみで発現が確認された。このモデルにおいて、慢性期には血管壁のACE活性が高く、局所のANG-IIの局所産生が亢進していることをすでに報告してきたが、この場合のACEの基質となるANG-Iの由来が不明であったが、本研究において大動脈のANG-N遺伝子の発現に差を認めなかった事実より、血管が利用するANG-Iは血管局所で作られるものではなく、血行に由来することが示唆された。 レニンーアンジオテンシン系の各種構成要素のmRNAの測定技術の確立は容易ではなかった。血管の微量のレニンmRNAの測定が、今後に残された課題であるが、現在ポリメラ-ゼ連鎖反応(RCR)法を導入することにより高感度の定量化を検討中である。また、本研究を通じて習得した技術をもとに、ACE遺伝子測定に向けて準備中であり、各種高血圧モデルにおけるレニンーアンジオテンシン系の遺伝子の動態の全貌の把握が間もなく可能である。
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