研究課題/領域番号 |
63044152
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
小山 力 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 部長 (70072874)
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研究分担者 |
加茂 悦爾 巨摩共立病院, 院長
太田 伸生 岡山大学, 医学部, 助教授 (10143611)
薬袋 勝 山梨県立衛生公害研究所, 生物研究部, 専門研究員
川中 正憲 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 室長 (50109964)
保阪 幸男 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 室長 (60072873)
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研究期間 (年度) |
1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1988年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 日本住血吸虫症 / 洞庭湖 / 疫学 / 免疫病理学 / 肝癌 / 肝硬変 / 中間宿主の生物学的撲滅 |
研究概要 |
本共同研究の調査対象地である洞庭湖周辺の日本住血虫症流行地は、1950年以門本格的な撲滅対策が実施されてきたが、いまだに中間宿主貝の棲息地は約1,630Km^2の広大な面積であり、本症の脅威にさらされている人口は約516万人とされている。 今年度は今後の研究のために、主にはこの広大な流行地内にパイロット地区を選定し、免疫病理学的調査では、とくにヒト本症と肝癌および肝硬変の関連について検討した。また、中間宿主の調査とその撲滅のための研究にも着手した。 1.パイロット地区の選定:本症流行状態の異なる6カ所を候補地として詳細な現地調査を実施し、下記の3カ所をパイロット地区に選定した。(A)流行最盛地区としての泊羅市白水(Milo-City);1988年4月にはじめて本症患者が発見された新流行地で、人口は約1,800人であり、うち約400人の住民検査では、虫卵陽性者が約50%であった。急性期より末期的症状に至る各期患者が存在し、各期別の診断および免疫病理学的研究に適した地区といえる。中間宿主貝の分布地域は約10ヘクタールであり、棲息密度は平均19コ/0.11m^2、貝の感染率は約1.7%である。周辺地域より比較的隔離された地区であり、家系調査など免疫遺伝学的研究および撲滅対策の効果的な実施とその評価ができる地区と考えられた。(B)低流行地区として岳陽県麻塘(Mantang);古くからの流行地であるが、最近数年間のヒト本症感染は、虫卵陽性者が住民の約10%であり、1988年に児童の新感染者が3名検出された。中間宿主の分布は広く数万ヘクタールとされており、撲滅対策の実施は因難である。本症の潜在的慢性患者あるいは既往症的患者の存在が予想され、慢性症例研究およびその対策などのモデル地区になりうると考えられた。(C)流行終息途上地区として臨湘県白雲(Linxiang);1979年にはじめて患者が発見され流行地とされたが、その後の撲滅対策の精力的な実施により、最近5カ年間に新感染者が発見されていない。1988年の住民調査では、虫卵陽性者は検出されず、COP反応による血清検査で約10%の陽性者が現われている。中間宿主の分布は比較的広く、またその棲息密度も2.8〜29/0.11m^2と比較的高い。ELISAなどのような高感度の方法による血清疫学的研究、殺貝剤を主とする撲滅対策の応用研究などに適する地区と考えられた。 2.免疫病理学的研究:ヒトの本症と原発性肝癌との関連の有意性については、従来我が国の報告では賛否両論がある。今回の本研究による我が国の流行地調査では、本症と肝癌の間には有為の関連がなく、肝硬変との関連は明らかに有意であることが示唆された。一方、中国の流行地における調査では、本症と肝癌および肝硬変との間にそれぞれ有意の関連があるとする結果が得られた。ところが、同流行地における住民のB型肝炎流行は比較的高く、肝癌とB型肝炎の関連が注目されているところであり、日本住血吸虫症と肝癌との関連についての結論はさらに検討を要すると考えられる。 3.中間宿主貝に関する研究:中間宿主であるOncomelania属巻貝の生物学的撲滅法として従来はほとんど試みられなかった貝寄生性原虫の利用を考え、貝殺滅に有効な原虫類について日中双方で検討中である。貝に寄生する原虫類の発見には、簡便なコーン染色変法を応用し、短期間に多数の貝を検査している。現在繊毛虫の一種が検出され、それの貝に対する病原性などについて追究中である。また、貝に対する病原性の強化増強については、バイオテクノロジーの応用などを考え、今後の研究計画を検討している。 中間宿主の殺貝剤については、我が国の媒介貝における基礎研究で、すでに有効とされている数種薬剤を用い、中国の媒介貝に対する有効性の試験と応用に関する諸問題について検討している。すでに本共同研究の初期に、我が国で広く応用している殺貝剤Bー2についての効果試験を行ない、その効果が実証されている。 以上のほか、今後の研究計画の発展のため、治療効果判定における免疫血清学的な解析に用いる治療前後の患者血清を採取し保存すること、免疫遺伝学的解析のための家系調査の資料などを収集することを中国側研究グループが始めた。また、日本側研究グループは血清成分変化解析のための基礎研究として、実験動物モデルにおける検討、免疫遺伝学的解析のための血清蛋白および、リンパ球の検査などの基準化について検討している。なお、我が国における本症慢性型患者における免疫応答についても詳細な追究を実施している。
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