研究課題/領域番号 |
63044182
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京国立文化財研究所 |
研究代表者 |
増田 勝彦 東京国立文化財研究所, 修復技術部第二修復技術研究室・室 (40099924)
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研究分担者 |
江本 義理 東京国立文化財研究所, 名誉研究員 (40000442)
門倉 武夫 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (10000457)
石川 陸郎 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (30000459)
西浦 忠輝 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 主任研究官 (20099922)
新井 英夫 東京国立文化財研究所, 保存科学部生物研究室, 室長 (00000456)
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研究期間 (年度) |
1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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キーワード | 中国砂漠地帯 / 文化財保存 / 自然環境 / 敦煌莫高窟 |
研究概要 |
中国砂漠地帯の文化財として特に重要な敦煌莫高窟の保存状態、環境条件について計測を行った。自然環境については、温度、湿度、日照、飛砂量について継続測定を行っている。また、環境条件に関する資料の収集に努め、中国研究者との研究討議を行った。 自然環境の計測は、中国敦煌研究院の研究者と協力して、前年度第194窟内外に測定機器を設置することにより開始したが、本年度11月に第1回目のデータの読み出しを行った。また、本年度11月から機器計測システムの改良を行うと伴に、第53窟にも機器を設置し計測を開始した。 本年度、計測機器から読み出した測定データをコンピュータで解析した結果、次の知見が得られた。 洞内の気温は外気温に比べて低く、変動の幅も小さい。湿度は外気の方が逆に低く、洞内の湿度は、ほぼ外気の変化に追従して変化している。日較差(1日の最高値と最低値の差)を比較すると、4月の外気温度の平均日較差は12.9度、湿度は18%で、これに対して洞内の平均の日較差は前室で3.5度、9%、奥で0.4度、7%である。洞の奥ほど温度・湿度とも安定している。 温度と相対湿度から絶対湿度を計算して、洞内と外気とを比較した結果、絶対湿度は洞内の方が外気に比べていくらか高い傾向がみられる。その差はごくわずかであり、1カ月ほどの少ないデータで判断することは危険であるが、もしこれが事実であるとすれば次のような理由が考えられる。 (1)莫高窟の前を流れる大泉河の影響 (2)降雨の影響 (1)については、莫高窟から大泉河まで150mほどもあり、194洞は高さ約25mの段丘の最上層に掘られているので、河からの地下水の影響を受けているとは考えにくい。 (2)に関して以下少し考察する。今回得られたデータの中で、夜間著しい湿度の上昇がみられた日があった。約40%RHの急激な外気の相対湿度上昇があり、これにつれて洞内の相対湿度も10%程上昇している。この時の気温の変化を見ると、相対湿度が高くなったときに外気温は低くなっているものの、必ずしも温度の変動と相対湿度の変動は対応していない。また、194洞内の気温はほぼ一定で、洞内の相対湿度の上昇は気温の低下に原因するものではない。以上の考察から、この時の相対湿度上昇は温度低下によるものではなく、夜間の降雨によるものと判断した。 この時の降雨はごく短時間のもので、雨といってもわずかに空気を湿らせる程度のものであったと思われるが、4月以降のデータの中で、洞内の相対湿度が数日間にわたって上昇したものが6月に数回あった。 外気の相対湿度を測定していたセンサーが不調だったために、この時期の外気湿度を測定できていないが、この日の外気温を見ると他の日に比べてあまり上がっていないので、日照は少なかったと推定できる。また先の考察から、前日の夜から当日の日中にかけてある程度まとまった雨が降り、その時降った雨が地中にしみこんで洞内の湿度を数日間にわたって上昇させたと考えることが可能である。特に今回測定している194洞は段丘の最上部にあり、洞の天井から崖の上の地表面まで距離がないので、崖の上からしみこんだ水が194洞の奥の壁面を濡らしたと推定することに無理はない。 以上、今回得られたデータによれば、194洞は外気よりわずか湿った環境にあるが、それは降った雨が地面を通して壁面を湿らせるためではないかと考えられた。もしこの推察が正しいなら、莫高窟を形成する岩石はたいへん脆く、乾燥・湿潤の繰り返しによっても容易に破壊されるので、剥落など水分によって引き起こされる壁画の劣化が心配される。但しこの点についても今後、雨量計など利用した計測結果を基に詳しく検討する必要がある。 本年度新たに計測機器を設置した第53窟は、崖の最下にある洞窟であり、最上層の第194窟とはその環境条件がかなり異なるものと考えられる。第53窟における測定結果を、上記結果とあわせて解析、検討することにより、更に新たな知見が得られるものと期待される。
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