研究課題/領域番号 |
63045001
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山田 寿郎 (1989-1990) 北海道大学, 水産学部, 教授 (60001575)
佐藤 修 (1988) 北海道大, 水産, 教授
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研究分担者 |
EBBESSON Sve アラスカ大学, 海洋学部, 教授
MATHISEN Ole アラスカ大学, 水産海洋学部, 教授
安藤 清一 鹿児島大学, 水産学部, 助教授 (80131986)
清水 幹博 北海道大学, 水産学部, 講師 (80002088)
高橋 是太郎 北海道大学, 水産学部, 助教授 (90125328)
原 彰彦 北海道大学, 水産学部, 助教授 (40091483)
山内 晧平 北海道大学, 水産学部, 助教授 (10109514)
羽田野 六男 北海道大学, 水産学部, 教授 (80001600)
増田 紀義 北海道大学, 水産学部, 教授 (20001589)
佐藤 修 北海道大学, 水産学部, 名誉教授 (70001568)
EBBESSON Sven O. E. Professor, Institute of Marine Sciences, University of Alaska
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
7,400千円 (直接経費: 7,400千円)
1990年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1989年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1988年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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キーワード | サケ科魚類 / 産卵回遊 / 性成熟 / 性ホルモン / 甲状腺ホルモン / ビテロゲニン / 骨代謝 / トリグリイセリッド合成 |
研究概要 |
都木康彰研究補佐員は平成2年6月に北大練習船おしょろ丸に乗船し、増田紀義船長とともに、北部北太平洋に向けて出航した。羽田野六男教授は同年6月、空路でアラスカ州ダッチハ-バ-に到着し、両人と合流した後、アラスカ湾において、産卵のためアラスカへ回遊している魚群を追って試料を採集した。アラスカ湾での採集の後、アラスカ州セワ-ドに寄港した。同年7月、山内晧平助教授はアラスカ州アンカレッジに立ち寄り、アラスカ大学MATHISEN教授と会ったのち、セワ-ドで羽田野、都木の両人と合流した。また、そこで、4人はアラスカ大学SVEN O.E.EBBESSON教授とも会い、研究経過と今後の方針について話しあった。その後、羽田野、山内、都木、MATHISENの4人は、空路コルドバへ飛び、漁船をチャ-タ-して、COPPER RIVERの河口域において試料の採集を行った。次いで、COPPER RIVERを産卵遡上中のサケを追って、河川中流と産卵場において採集をおこなった。 採集した試料の分析結果及び途中経過は以下の通りである。 1)産卵回遊に伴う血中ホルモン量の変化 性ステロイド:産卵回遊開始時、血中性ステロイドであるエストラダイオ-ルとてテストステロンが僅かに増加した。それらの値は産卵回遊の進行に伴って増加した。その増加は河川中流域の個体のそれまで続き、産卵場のそれは急減した。他方、17、20ーダイハイドロキシー4ープレグネンー3ーオン (DHP)かそれに代って急増した。このことはエストラダイオ-ル卵黄形成に、またDHPが卵成熟に関与していることを強く示唆している。 ビテロゲニン:卵黄物質であるビテロゲニンはエストラダイオ-ルの上昇とともに増加を示し、DHPの増加時には低値であった。 甲状腺ホルモンと生殖腺への取り込み:血中のサイロキシン(T4)とトリヨ-ドサイロニン(T3)濃度は、雌雄とも生殖腺指数(GSI)に関係なく、0ー4ng/ml程度であった。卵巣中のT4濃度羽、GSIが2%程度まではGSIの増加とともに増加したが、それ以上GSI大きくなると10ng/mlで一定となった。T3濃度はGSIが2%程度の時に最高値(20ng/ml)を示し、以後減少して10ng/mlで一定となった。GSIが2%より大きな卵巣では、T4、T3濃度ともにGSIに関係なく一定であると考えられる。一方、精巣中のT4濃度はGSIに関わらず、1ng/g以下の値であった。T3濃度はGSIが1%程度までは15ng/gと高かったが、それ以上発達すると減少し5ng/g程度となった。雌雄ともGSIが1ー2%の成熟の初期の段階で、生殖腺中の濃度が高かったことから、甲状腺ホルモンが卵巣或は精巣の成熟に関与している可能性が強く示唆される 2)骨代謝活性の変化 アラスカ湾で採集された個体では、骨形成及び骨吸収とに活発に行われており、休止面は全骨表面の10%ほどに過ぎず、骨の盛んな成長がうかがわれた。河口域で採集された個体では骨形成、骨吸収とも活性が減少しており、産卵場で採集された個体ではいずれのの活性も殆ど停止し、休止面が骨表面の大半を占めていた。骨代謝に雌雄差は認められなっかた。以上のことから、海洋生活期のベニザケの骨代謝活性は非常に高く骨成長も盛んであるが、産卵回遊にともないその活性は減少し、産卵時には骨形成、骨吸収とも殆ど停止することが明かとなった。 3)脂質合成能と分解能 脂質合成能は、肝臓尼おいてトリグリセリドの合成能が産卵遡上にともなって著しく減少するのに対し、筋肉においてはその合成能は雌雄ともむしろ増大していた。これは絶食状態にある産卵遡上期には外部からの脂質の供給はなく、一方的に脂質が分解される特殊な脂質代謝の条件下にあることを考えあわせると、筋肉中の極端な脂質欠乏に対する恒常性の発現のためと考えられる。 リバ-ゼ活性を指標とした脂質分解能は、肝臓においては雌雄とも産卵期に増加を示めし、筋肉においては雄は産卵期に増加を示すものの、雌では産卵期にかけてむしろその比活性は低下した。産卵期の筋肉では脂質合成能が上昇、脂質分解能は雄では増大、雌では低下しているが、筋肉脂質量は大幅に低下していることから、筋肉脂質量の変動はやはり脂質分解能の変化が主因であると考えられる。すなわち、産卵期における脂質の総量に及ぼす影響は、合成能より分解能の方が大きいと考えられる。一方、肝臓においては脂質合成能の低下と脂質分解能の増大があいまって脂質量が低下することが示唆された。 平成2年11月、アラスカ大学のSVEN O.E.EBBESSON教授が来日し、プロジェクトメンバ-と会い、情報交換を行った。また、今後の共同研究の継続の可能性について論議を行い、共同研究の継続を確認した。
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