経済的、産業的及び経営的日米協調ー比較分析と包括的提案

• 研究課題/領域番号: 63045005
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 阿部 清司 千葉大学, 法経学部, 教授 (60159423)
• 研究分担者: ABDEL Ghany アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; SEE Harold F アラバマ大学, 法学部, 教授 ; CASHMAN Jame アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; BAIN Trevor アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; FOSTER L.W. アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; CHENG David アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; HOOKS Donald アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; HILTON Chad アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; FORMBY John アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; LEATHERS C.G アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; GUNTHER W.D. アラバマ大学, 経済学部, 教授 ; 武蔵 武彦 千葉大学, 法経学部, 助教授 (40054514) ; 島 久代 千葉大学, 教育学部, 教授 (00009523) ; 中原 秀登 千葉大学, 法経学部, 助教授 (60189016) ; 野村 芳正 千葉大学, 法経学部, 助教授 (00218372) ; 唯是 康彦 千葉大学, 法経学部, 教授 学部長 (90143255) ; 村山 元英 千葉大学, 法経学部, 教授 (60009511) ; 小松 憲治 千葉大学, 法経学部, 教授 (20008957) ; 秋元 英一 千葉大学, 法経学部, 教授 (00064113) ; GHANY M. Abdel Faculty of Economics, Alabama University
• 研究期間 (年度): 1988 – 1990
• 研究課題ステータス: 完了 (1990年度)
• 配分額: 7,400千円 (直接経費: 7,400千円); 1990年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円); 1989年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円); 1988年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
• キーワード: 貿易と直接投資 / 産業の空洞化 / ヴェブレン / 日米の金融政策協調 / 規制緩和 / 牛肉輸入の自由化 / 自動車産業の再構築 / CI戦略

研究概要

1.1988年10月アラバマ大学(タスカル-サ)、1989年10〜11月千葉大学、および静岡県伊豆、そして1990年7〜8月ホノルル(ハワイ)、ハワイ大学東西センタ-と3度の研究交流を通じて、千葉大学とアラバマ大学の共同研究者によって得られた成果は大きい。
まず全体としての成果の点では、各研究分担者がそれぞれアラバマ大学の側とパ-トナ-を組んで参加することで、共同研究でありながら個人の責任分担を明確にすることができた。むろん、パ-トナ-同志の関系は、共同論文の作成から、個別論文作成のための学問的情報交換に至るまでばらつきがあったのは事実であるが、通常の交流以上の成果を挙げることができ、個々の参加者の問題関心も、年を経るごとに深まっていった。それらは4冊に及ぶ出版物の中に詳細に現われている。1988年の議事録(proceedings)はアラバマ大学が作成し、1989年の議事録及びその補遺は千葉大学が作成した(いずれも英語)。本年度は文部省への報告のための科研費報告書(冊子、62ペ-ジ、日本語)を作成した。
現在、両大学が中心となって英国マクミラン社より、1991年に成果の出版を行う計画が進行中であり、これが実現すれば、今回のプロジェクトの成果を凝集したものになるであろう。
2.(1)貿易と直接投資の面での近年の発展が、日米それぞれの国内に与えたインパクトについては、相互のデ-タ交換、回帰分析などにより、以下の結論を得た。アメリカの海外直接投資は、製造業の雇用比重減退(いわゆる脱工業化)を惹起したが、日本の対米、対アジア直接投資は、輸出代替効果が大きい半面、多角化による雇用増もあり、国内産業の空洞化を招いていない。日本とアジアNIES4か国の間には、アメリカの工業製品市場において強い代替関係がある。またアメリカの実質賃金が生産性を上回って増加すると、輸入浸透度が上昇する傾向がある。今後の日米協調はこれらの環境を考慮して行われるべきである。(2)歴史的には、アメリカ型の高度大衆消費社会は、ニュ-ディ-ルによる社会統合を経て実現したが、70年代以降のインフレ-ションの進展が、「レ-ガン連合」の形の保守化を生み出した。日本の戦後改革は、アメリカの強い影響の下に始まったが、当時の経済学者たちは、生産から輸出立国、そして消費の拡大と日本の進むべき道を良く認識していた。20世紀初頭のヴェブレンの予言からすると、日本の特別利潤も消費の拡大によって次第に欧米諸国並みになると考えられる。(3)日米の貯蓄率の差異については、とりあえず貯蓄に関する意識の差異(日本では貯蓄、アメリカでは少額投資)、アメリカの住宅利子優遇措置、アメリカの退職金加入の影響などが要因としてあげられる、(4)日米の金融政策協調に関しては、指標として、名目GNPを用いるべきか、複数の指標を立てるべきかでなお意見の一致を見ていない。(5)旅客航空輸送産業での規制緩和により期待通りの費用関数の下方シフトが生じ、また太平洋間国際電信電話産業の規制緩和後の自由参入後の市場でも、消費外部性の存在が淘汰に勝ち残る産業の数を退定する。(6)コンピュ-タ・ソフトウェアに適用される法の輪郭は日本ともほぼ同じだが、日本の特許権が先願主義によるが、アメリカの特許権は先発明主義であるといった相違点以外に、6点の差異が認められる。(7)計量経済モデルによるシミュレ-ションによると、牛肉輸入の自由化は、牛肉全体の供給を増やし、価格を少し下げるが、和牛生産経営はさほど影響を受けないであろう。(8)日米鉄鋼業や、自動車産業の再構築については、工場の無人化による労働コスト削減や人的資源管理の重要性について主として日本からアメリカが学ぶ形が勧められる。(9)日本の会社文化の海外への移転は東南アジア地域に具体例を見出せるが、CI戦略(Corporate Identity Strategy)により、文化を含めた相互作用が注目される。日米の経営の差異には文化的特質の違いが投影し、日本的経営の移植にさいしても社会経済的差異を考慮した戦略が必要である。
以上のように本研究によって得られた知見は広範囲に及び、かつ今後の一層高い次元での共同研究の必要性を研究分担者たちは痛感している。

研究成果

• [文献書誌] 阿部 清司: "Regional Deindustrialization,Revitalization and forein Direct Investment" Proceedings of the Midwest Economics Association April. (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 唯是 康彦: "食料経済論入門" 千葉大学経済研究. 5. 1-43 (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 秋元 英一: "1980年代アメリカ経済の構造変化と地域" 千葉大学経済研究. 5. 23-70 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 秋元 英一: "アメリカの中産階級の形成と分解" 小川晃一・片山厚編 階級意識とアメリカ社会(木鐸社). 227-243 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Eiich Akimoto: "The New Deal and the Postwar Economic Reforms of Japan:A Supplementary Note" Paper at the Third Joint Conference between Chiba Uni & the Uni of Alabama. 21 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 秋元 英一: "アメリカにおける経済発展と地域ー1980年代までの構造変動ー" 遠藤輝明編『地域と国家ーフランスレジョナリズムの研究』(日本洋倫社). (1991)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Kiyoshi Abe: "Regional Deindustrialization, Revitalization and Foreign Direct Investment Proceedings of the Midwest Economics Association" (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kenji komatsu: "Monetary and fiscal Policy Coordination between Japan and the United States Paper at the Third Joint Conference between Chiba Univ. & the Univ. of Alabama" (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Eiich Akimoto: "The New Deal and the Postwar Economic Reforms of Japan Paper at the Third Joint Conference between Chiba Univ. & the Univ. of Alabama" 21 (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Motofusa Murayama: "The Overseas Transfer of Japanese Corporate Culture Paper at the Third Joint Conference between Chiba Univ. & the Univ. of Alabama" (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Yoshimasa Nomura: "Costs Under Regulation and Deregulation Paper at the Third Joint Conference between Chiba Univ. & the Univ. of Alabama" (1990)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Hisayo Shima: "Explaining the saving rate between Japan and the U. S. Paper at the Third Joint Conference between Chiba Univ. & the Univ. of Alabama" 1990
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より