研究分担者 |
WASSERMANN E ドイツ, デュイスブルグ大学・物理学部, 教授
KEUNE W. ドイツ, デュイスブルグ大学・物理学部, 教授
細糸 信好 京都大学, 化学研究所, 助教授 (30165550)
中山 則昭 京都大学, 理学部, 助教授 (00164369)
KEUNE Werner Fachbereich Angewandte physik, University Duisburg
WASSERMANN Eberhardt Fachbereich Angewandte Physik, University Duisburg
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1990年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1989年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1988年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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研究概要 |
新圧(京都大学)とKeune(デュイスブルグ大学)は15年にわたって共同研究を行っているが、新圧とKeuneの協力関係を中心として昭和59年より京都大学化研究所とデュイスブルグ大学物理学部門の協力契約が結ばれた。以後数年はドイツ側からの援助のみで、日本側からの実質的財政援助はえられなかったが、昭和63年より3年間新圧ーKeuneの共同研究に対し科学研究費大学間協力研究としての予算が認められた。第1、2年度には若手研究者の交換による実験研究の推進を行った。第3年度はその成果の討議を行うと共に更に広く関連分野の研究を発展させるためのワ-クショップミ-ティングが開催された。 原子レベルで膜厚を制御しつつ多種類の金属層を積み重ねた人工格子は京大が世界に先駆けて着手した技術であるが、この研究手段をデュイスブルグ大学で取り入れてFe/Zr人工格子を作成し界面の構造とその磁性の解喫が研究課題となっていた。この問題には京大における超低温メスバウア-測定が大変有益な結果を提供した。 Feと希土類からなる人工格子については京大でFe/Nb、デュイスブルグ大学でFe/Tb系をとりあげて垂直異方性の解明を中心に研究を進めている。この課題に対してはデュイスブルグ大学におけるガンマ線と垂直方向の磁場中での温度変化測定が有効であった。これらに関する研究成果は1990年4月のヨ-ロッパMRS会議(ストラスブ-ル)において発表され、共著論文としてJ.Magn.Materに掲載されている(現在印刷中)、本研究費によって1、2年度には若手研究者との交換が実現され、研究成界は勿論であるが研究者の養成なしは国際化の観点からも非常に有意議であった。 これらの結果をふまえ、更に薄模、多層模の磁性について討論し、今後の研究方向を探るワ-クショップが第3年度に計画された。本研究費による援助は日本系3名の参加を可能にしたが、ドイツ側でも援助がえられることになったため、ディスブルグ大学参加者以外にこの分野における代表的な研究者が極めてレベルの高い研究会を行うことになった。その内訳は次の通りである。日本3・ドイツ12・フランス7・オランダ2・イギリス1・アメリカ2が参加し、京大からは新庄が「Magnetoresistance of Multilayers with Two Magnetic Components」、細糸が「Neutron Diffraction Study of the Magnetic Structures in Fe/Cr Multilayers」、中山が「Xーray and TEM Characterization of the Stracture of Multilayers」デュイスブルグ大学からはKeuneが「Structure and Magnetic Properties of Ultrathin Epitakial fcc Fe Films on Cu(001)by CEMS」、Brandが「Magnetic Properties of Ultrathin Fe/Tb Multilayers from Mossbauer Spectroscopy」のタイトルの発表をそれぞれ行った。その他の代表的出席者はBader,Marinero(米)、Beauvillain,Fert,Ferre,Piecuch、Sanchez(仏)、Baberschke,Bayreuther,Dederichs,Dumpich,Ebert,Givord,Grunberg,Guntherodt,Kirschner,Lugert,Pescia,Sauer,Weller,Zabel(独)、Gyorffy(英)などである。 約15年前に新庄とKeuneの協力によって始められたFe金属表面の磁性のメスバウア-分光法による研究は、その後多層薄膜研究に発展し、人工格子の名のもとに新物質として広く注目されるに至っている。本研究費の援助は極めてタイムリ-であり、国際的協力の推進を容易にし、国内では人工格子研究が重点領域として採用されることにも側面の寄与をもたらした。又、重点領域最終年度にあたる平成4年度末には人工格子について更に規模の大きい国際会議が予定されるに至った。 昭和59年に研究所ー学部間で協力関係が結ばれ以後毎年数名が相互に訪問し、1ないし2名は一定期間滞在して実験を行ってきた。しかしこれらの援助はすべてドイツ側によるものであり、相互協力の意味からバランスの良い関係とは言えなかった。この点で本研究費の援助はまことに適切であり、ドイツ側が今後援助を続けていく上でも極めて有効に作用することが見込まれている。
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