配分額 *注記 |
14,900千円 (直接経費: 14,900千円)
1990年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1989年度: 4,700千円 (直接経費: 4,700千円)
1988年度: 7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
|
研究概要 |
筋収縮の初期におけるミオシンとアクチンの反応機構を検討するために,ニワトリ遅筋(anterior latissimus dorsi,ALD)と速筋(posterior latissimus dorsi,PLD)におけるクロスブリッジ形成の時間経過を,X線赤道反射の強度変化から計算される太いフィラメント周辺から細いフィラメント周辺への質量の移動を指標として測定し,張力と比較した。 遅筋,速筋いずれにおいても,筋収縮初期においてはクロスブリッジの形成量は張力に先行して増加した。その時間経過の違いはクロスブリッジ形成と張力発生が遅いほど顕著であり,20℃におけるALDに収縮においては,質量移動は張力に140ミリ秒も先行した。X線回折法によるフィラメント格子間隔の測定から,この遅れが収縮初期の筋の内部短縮に起因するものではないことも明らかとなった。 以上の実験結果は,収縮初期のクロスブリッジとアクチンの結合状態に「弱い結合」と「強い結合」の二種類があり,「弱い結合」においては張力発生が少ないと仮定すると,定量的に説明することが可能である。モデル計算の結果は,遅筋と速筋の張力発生の速度の違いは,主としてクロスブリッジの「弱い結合」から「強い結合」への移行の速度の違いであることを示唆する。温度を変化した場合には,「弱い結合」の形成速度も「弱い結合」から「強い結合」への移行の速度も,共に影響を受けて変化する。 収縮初期に急速凍結したALDとPLDの電子顕微鏡を用いた観察では,クロスブリッジ等の微細構造が認められ,凍結方法の更なる改良によって「弱い結合」と「強い結合」を電子顕微鏡を用いて識別できると考えられる。
|