研究概要 |
本年度は,先年度までに行なわれた研究の成果にもとづいて,各種レジンを実際の口腔内に充填し,その経時的変化をレプリカ法を応用してSEMにより検討し,併せて輪郭形状測定機を用いて咬合接触部位と非接触部位の磨耗の状態を検討した。これらの臨床的な成績と,従来より教室において行なわれている磨耗試験機を用いた場合の人工磨耗の成績の相関性についても検討した。その結果約1ケ年に亘る口中試験の結果と人工磨耗の結果に高い相関のあることが明らかとなった。従って長期の口内試験を行なわなくとも,人工磨耗試験を行ない,長期のin vivoの予測を行なえることが示された。またレジンの分類によれば,セミハイブリッドに属するものが、高い耐磨耗性を示し,この方向でより口内耐久性の高いレジンを開発すれば良いことが示唆された。さて化学的劣化については,これも約1ケ年に亘る口内試験と実験還境における劣化についてSEMを用いて詳細に比較したところ、口内試験による結果と、0.1NNaOH60℃溶液中での劣化がほぼ相以した像を示した。これにより口腔内でおこるレジンの化学的劣化を容易に実験還境で再現出来ることが明らかになった.また実際の口腔内で劣化や磨耗によって減少した部分の補修には、酸エッチング、シラン処理材及びボンディング材併用後,セミハイブリッドに属するレジンを追加修復すれば,良好な予後が得られることが示唆され,臨床上大変有意義な知見が得られた。これらの知見はレジンの新しい分類法と併せて,内外の学術雑誌に掲載され注目をあびている。最後にFTIRを用いた実験では,炭素のダナルボンドを指標としてレジンの重合率に検討を加えたところ,主に光線重合のものは,重合後しばらくは重合率が上昇するものの,口腔内や実績環境での条件のもと重合が停止し,重合体が逆に切断されてゆくことが明らかとなった。
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