研究概要 |
本研究の目的の一つは,哺乳動物の発生初期における中枢ならび末梢神経系の形成に関与する蛋白性因子(神経栄養因子を含む神経作動因子)を哺乳動物の組織を素材として検索することである。当初,新生ラットと成熟ラットの脳と消化管の希酢酸抽出物の差に着目し,その画分のうちラットのクロム親和性細胞腫の株細胞である。PC12h(Pheochromocytoma 12h)の突起伸長を指標に新生ラット側に多く存在する活性画分の精製を行った。しかし,新生ラットの抽出で得られる粗精製物の量が期待したほど多くなかったことから,成熟ラット腸管の分画に焦点を絞り,突起伸長活性を見ながら鋭意画分の捕集を行い,高速ゲル濾過・イオン交換クロマトグラフ・逆相高速液体クロマトグラフを行うことより活性分画を数十μgのオ-ダ-で得ることができた。このものは,ゲル電気泳動の結果分子量が約9,000と思われ,このペプチドについてアミノ酸分析を行い,さらにN末端分析やトリプシン,サ-モライシンならびにV8による酸素消化,BrCN開裂などをも試みた。現在酸素消化物ならびにBrCN開裂ペプチドの分取を行い適当量が集まったら,可能なものからアミノ酸配列の分析を行う。またその結果をもとに,DNAのプロ-ブを作成しこのペプチドの生合成をコ-ドする遺伝子の検索を行う。さらに,我々が発見したニュ-ロキニン群神経ペプチドのうち,遺伝子の構造からニュ-ロキニンBの前駆体と考えられる42残基のアミノ酸からなるproneurokinin Bの存在を実証するために,このペプチドを化学合成し,その抗体を作成して免疫組織化学的に臓器抽出画分中におけるこのペプチドの存在ならびに生体内分布の検討を行った。 また,ヒト上皮細胞成長因子(hーEGF)のアナロ-グを化学合成し,構造活性相関を検討するとともに,EGFーファミリーの検索に応用するための検討を行った。
|