研究概要 |
活動,なかでも高齢者当人が意味あるとみなす活動の頻度は,そのWELL BEINGに強く貢献するという。頻度といった活動のOBJECTIVITYよりそのSUBJECTIVITYを重視する研究も,その活動が高齢者本人の重視する行為である限り,その頻度がWELLーBEINGを規定することを認めている。 ところが本調査によると,有料老人ホ-ム入居者においては,友人との交流頻度はそのWELLーBEINGを高めてはいるが,親子交流の頻度はそれと無関係であった。一方,その重要性意識を見ると,これらは共に重要であるとされ,しかも親子交流の方が大切だとみなされていた。いいかえれば,たとえ心理的に重要な活動であっても,その頻度がWELLーBEINGに無関係なものもあるのである。 この知見に関する第一の解釈は,心理的に重要な活動には,実際に行動が起こされてWELLーBEINGに機能するものとそうでないものとがあるということである。活動の心理的次元には活動が伴われてはじめてその心理的価値が生じる側面と行動が起こされなくてもそれ自体で価値をもつ側面があるということであろう。さらにいえば,心理的にいって非常に高い意味をもつ活動は,頻度の多少によってWELLーBEINGに関連するのではなく,そのこと自体が生活適応を高めると思われる。 第二の解釈は,有料老人ホ-ム入居者の家族関係は,夫婦家族制度持有の性格をもち,拡大家族的な関係ではないということである。つまり,彼らのように経済的かつ介護の面でも子供から完全に自立している場合は,親が子供から積極的に否定されることさえなければ,積極的に支持(このケ-スでは親子交流が頻繁であること)されなくても,親の生活適応を減ずることはないと想定されるのである。まさに親子中心ではなく夫婦中心の家族関係の出現であろう。こうして,夫婦の伴侶性,さらには友人とのはきあいが,ますます重要な意味を帯びてくるといえよう。
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