研究概要 |
本研究は二つが分かれる。(1)分的住宅の管理専門職能の実態と課題を明らかにする部分。(2)木造住宅の木部管理および住宅の耐用年数と管理について明らかにする部分である。(1)では,主として大阪府営住宅,東京都営住宅および奈良県営住宅を事例として取り上げ,管理専門職能の実態と課題について,当該部局への資料収集および聞き取り調査,現地への観察旅行をして居住者・自治会役員等への聞き取り調査を行った。併せて住居管理先進国であるイギリスの公営住宅管理に関する研究文献の一部翻訳を行い参考とした。これらの結果概要は,1)住居管理職能は必ずしも専門的に把えられておらず,その担い手の地位や社会的専門意識は必ずしも高くない,2)居住者の基礎的自治組織の自治会は,住居管理の面でも実質的役割を果さざるをえない,3)住居管理を組織的,専門的に進めることには,イギリスの経験も考慮し,「資格」を持った「居住地管理士」といった専門職能人を日本でも養成活用が望ましい。研究の(2)では二つの調査を行い分析している。住宅の木部保存法の今昔についての調査からは,べにがらを塗る方法は京都を中心に,漆を塗る方法は日本海側地方で行われていた等若干の地域性が明らかとなった。現在は,どの地域も化学薬品処理が主で,住宅内部の手入れでは昔は地域性なく米ぬか等で磨いていたことも判った。住宅の耐用年数と管理についての意識調査では,日常管理以外の「木部鉄部の塗装」,「排水管の清掃」については専門業者の手を必要とすることが判った。又,専門家による家屋の点検を18%の人が有料でも利用すると回答している。さらに,望ましい住宅の耐用年数を50年とする人が多い,という結果となった。
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