研究概要 |
1.高電流密度低エネルギ-型電子銃の製作と調整を行ない,充分に実用に耐える性能を持っている事を確認した。特性としては10eV〜20eVの電子エネルギ-に対して1〜2HAの試料電流を供給でき,逆光電子スペクトル測定の超高真空下(10^<-10>Torr)においても作動可能である。この電子銃は電子陳にBaOカソ-ドを使用し,4段の電子レンズ系で電子を平行に引き出す構成となっている。 2.上記電子銃を用いて,いくつかの興味ある物質について,固定エネルギ-光検出型の逆光電子スペクトルを測定した。 (1).銅酸化物高温超伝導体の焼結体および単結晶について,角度積分および角度分解型逆光電子スペクトルを測定し,フェル三準位近傍の電子状態がキャリヤのド-ピングにより電荷移動ギャップ内に新らたに形成されたギャップ内状態である事,およびそれが2本のフェル三準位を切る分散的バンドから構成されている事を見い出した。 (2).C_<60>アルカリ金属化合物超伝導体について,角度積分型の逆光電子スペクトルを測定し,C_<60>にアルカリ金属をド-プするに従い,LUMOバンドに徐々に電子が埋められていく過程を観測した。 3.分散型逆光電子分光用高効率XUV分光システムを設計し,製作した。分光システムは,非ロ-ランド条件の斜入射型で,20〜100eVに最適となるようにレイトレ-スを行ない条件を決定した。X射光は,一度トロイダルミラ-で集光されて1/1200本の回析格子に入り,分光され,チャンネルトロンとCsIを用いた光子検出器に入り検出される。HeI共陽線を用いて,分光システムのチェックを行ない,分光システムを検討した結果,設計どおりの性能が得られている事を確認した。現在,より高いSN比を得るため,より高密度電流を与える電子銃を設計・製作している。
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