研究概要 |
前年度に判明した圧力セルの磁場変化に対する偽信号の除去を行った後高密度のbcc固体ヘリウム3について定積圧力および、NMRの測定を本格的に開始した。1つのモル体積についてのrunが数カ月にも及ぶ為、現在いくつかの試料についての測定が済んだところである。しかし当初の目的である高磁場秩序相(HFP相)と常磁性相(PARA相)の間の相転移線が超低温、強磁場において観測され、HFP相がPARA相で囲まれていることが実験的に初めて確かめられた。得られた相転移線は分子場近似の予測と大きく異っており、ヘリウム3核スピンのゆらぎが大きいことを示している。この転移磁場の温度依存性はグリ-ン関数を用いた計算から得られる表式とよく合っており、この外捜から絶対零度における上部臨界磁場(B_<C2>)を決めることができた。またこのB_<C2>のモル体積(Vm)依存性がVm^<21>とこれまで求められたどの物理量のモル体積依存性よりも大きいことが判明した。一方HFP相と低磁場秩序相(UUDD相)の境界磁場(B_<C1>)についても、そのモル体積依存性が実験的に明らかになりつつある。こちらの方はVm^<14>と小さな依存性が得られている。以上B_<C1>,B_<C2>のモル体積依存性は個体ヘリウム3の核磁性に関与する幾つかの交換相互作用がまったく同じVm依存性を持っていないことを強く示唆している。この他、低温,強磁場極限での定積圧力(Pex^0)や、高温展開での温度と磁場に関する最初の係数であるe_2,θも得られつつある。これらBc_2,Pex^0,e_2、θは4個の交換相互作用(Jnn,Jt,Kp,Kf)を用いて近似によらず書けるので、本実験の結果から異なる交換相互作用の大きさが従来より正確に決めることが可能になる。現在、さらに広いモル体積にわたり実験を続けており、最終的には4パラメ-タ-モデルでの各交換相互作用のモル体積依存性やそのモデル自身の妥当性なども議論できるものと考えている。
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