研究概要 |
1.昭和63年および平成元年夏までに、本研究費によって名古屋大学に導入した高感度ガンマ線測定装置の整備と調整を終え、理研リングサイクロトロンのE3コ-スに設置した落送球照射装置の実際の入射粒子による試験も完了した。また測定結果の自動解析システムの開発とデ-タベ-スの整備も順調に進んだ。 2.リングサイクロトロンからの^<14>N(35および135MeV/u)および^<40>Ar(26MeVおよび95MeV/u)によってAl,V,Cu,Nb,Ho,Auの単体の箔を照射した。生成核の同定と定量は全てガンマ線の測定によった。 (1)銅は全ての入射粒子によって照射され、^7Beから^<72>Asにいたる生成核が定量できたが、質量数が65より大きい核種の生成は^<40>Ar照射(26MeV/u)の場合にのみ顕著であり、融合反応は必ずしも起りやすくないことを示した。また薄いアルミ箔をキャッチャ-とした生成物の平均飛程の測定では、入射エネルギ-が高いほど飛程が短く、^<40>Ar照射の方が^<14>N照射よりも飛程が長くなる傾向が示された。これは重イオン核反応の反応機構の考察の際に重要な知見である。 (2)金の重イオン照射は常に複雑なガンマ線スペクトルを与える。結果の解析は遅れているが、長期間にわたるスペクトルの変化の解析からよい結果が得られる予定である。現在のところ^7Beから^<199>Auにいたる50種類以上の核種が同定されている。(3)その他の標的物質についての放射能測定も順調に進み、よい結果が得られつつある。 3.予備的な結果は日本化学会春季年会において発表し、さらに詳細な報告は放射化学討論会(10月、於東京)でおこない、近い内に学術雑誌への投稿論文もまとめる予定である。
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