研究概要 |
本研究では、ラジカル受容体として硫黄官能基置換オレフィンに着目し、そのラジカル受容能を検討、このものへの炭素ラジカル付加による炭素-炭素結合形成反応を開発し、硫黄部分の官能基変換反応と併せて高効率精密合成反応の確立を目指している。 これまでにケテンジチオアセタ-ルS,S-ジオキシドおよびビニルスルホン誘導体のラジカル受容能を研究し、この受容能の有機合成への利用についても検討を加え、以下の成果を挙げることができた。 1.ケテンジチオアセタ-ルS,S-オキシドは、アルキルラジカルに対して高効率受容体であることを明らかにした。相当するビニルスルホンに較べて、1-ヒドロギシアルキルラジカルに対して2.4倍、ヘキシルラジカルに対しては4倍の活性を示した。これは、ラジカル付加の遷移状態がスルホニル基とチオ基によるCapto dative効果による安定化を受けることによるものと考えられる。 2.ケテンジチオアセタ-ルS,S-ジオキシドの分子内ラジカル付加で極めて高い立体選択的環化が生起する。特に四員環生成という興味ある事実を見い出すとともに、立体制御因子の一つも解明した。 3.ビニルスルホンへのラジカル付加によって生成するラジカル種は、活性であることに着目し、連鎖機構によるラジカル付加を研究した。その結果、アルコ-ル中ラジカル開始剤(AIBN)存在下加熱または光照射で達成できることを見い出した。 4.ケテンジチオアセタ-ルS,S-ジオキシドへのラジカル付加によって得えられる付加体の有機合成化学的利用も研究した。付加体のジチオアセタ-ルS,S-ジオキシド部位のメチン炭素をアルキル化したのち酸化水分解することによって種々のケトンへ誘導できることを明らかにした。
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